それから僕は他に何も手がつかなくなるほど、ひたすら悩み考えた。
沙希をこの世に繋ぎとめておく方法はないのか。
逝かなければならないとして、僕の心を押し殺してでも沙希を安心させて送ってあげるべきなのか。
沙希に辛い思いをさせたとしても、沙希と離れたくないという想いを貫き通すべきなのか。
僕自身本当の意味で最愛の人との別れから立ち直れるのか。
だとしたら立ち直るということは、沙希との思い出や沙希への想いを断ち切るということのなのか。
いや、そんな事は僕にできるはずがないのだから、沙希の存在が消えてしまったらまたあの死んでいるのと変わらないような生活に戻ってしまうのか。
沙希を救う方法も僕自身を救う方法さえも一向に見出すことができなかった。
(どうしたら・・・どうしたらいいんだよっ!)
焦りと苛立ちだけが募り、眠れない日が続いた。
<前に進むってどういうことなんだろうね。>
夜になると僕は少しでも沙希との繋がりを実感していたくてメールを送り続けていた。
<難しいことよね。
はっきりとした答えは無いかも知れないけど、宗助には私に縛られて生きていって欲しくないの。
でもそんな気持ちとは反対に、宗助が今でもこんなに私の事を想ってくれてるって実感できて嬉しいとも思ってしまうの。>
<そんなの当たり前なんだよ。
僕にとって沙希は生きる意味そのものだったんだから。
それはやっぱりこれからも変わらないって思うんだ。
だからこんなにも辛い。
前に進むっていうことが、君を忘れる事だって言うならどう頑張ったって到底無理だって実感した。>
そんなやりとりをしている最中、ふと思った。
無理に忘れたり断ち切ったりすることが本当に前に進むということだろうか。
これ程までに大きな彼女への想いや、胸一杯に詰まった溢れる程の彼女との思い出・・・こんなにも大切なものを記憶の片隅に追いやって生きていく事がはたして前向きだというのだろうか。
違う。
彼女の死を悲しむ気持ちや彼女と離れたくないと思う気持ち、それらと僕が死んだような生活をするのとは別の問題なのかもしれない。
自分がかわいそう?自分が辛い?そんな風に考えて逃げていただけじゃないだろうか。
彼女の死を理由にして弱い自分を正当化しようとしていただけじゃないだろうか。
僕の中で何かが繋がった気がした。
沙希に伝えなければ。彼女に会って伝えたい新たな気持ちが芽生え始めていた。
<沙希、会おう。会って話しがしたい。
解った気がするんだ。
美希ちゃんの体になるべく差し支えない日に会おう。>
<うん。たぶんもう私の時間も残りわずか・・・。
美希には申し訳ないけど、最後の我儘を聞いてもらうわ。>
そうして僕は、はやる気持ちを抑え沙希と会う約束をした。
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