どう話していいか思案している沙希に、覚悟を決めた僕はとりあえず一番気になっている事を聞いてみた。
「どうして・・・美希ちゃんの姿なの?」
言いようのない緊張感に包まれていた事と、しばらく黙っていた事で僕の声は絞り出したようなかすれた声になっていた。
「宗助ももちろん解っていると思うけど、私は一度死んだわ。
どうしてこうなったかって言う経緯は私にも解らないけど、今は美希の体を借りている状態なの。
あの日・・・宗助のメールが私に繋がった日の少し前に、気づいたら意識が美希の中にあったわ。
しばらくしたら私の意志で美希の体を借りれる事に気付いた。
その気になればいつでも美希の体を使うことができたみたいだけど、美希の生活を壊したくなかったから出来る限り美希が眠っている時だけ体を借りる事にしたの。」
「そうか・・・だからメールの返信はほとんど夜だったんだね。」
「そう。美希は私が自分の中に居るなんてこと夢にも思っていないから・・・。
何か変だなんて思わせたくなかったの。
死んでから1年経ってこの世に私の存在がまた現れた事にも、美希の体に入りこんだ事にも私は全く困惑しなかったわ。
意識が現れた瞬間から、理屈とか常識とか関係なく全てを理解していた・・・何を成す為に再び舞い戻ってきたのかも・・・。」
沙希の瞳は僕の目をじっと見つめて離さなかった。
「それが・・・僕の時間を進める事・・・?
どうして・・・沙希を失った僕に生きる意味はない。
君の後を追おうと思った。
君の存在しない世界は色がないんだ。
全てが灰色の世界で生きるくらいならって、本気で君を追いかけようと思ったんだ。
・・・結局そんな勇気も気力もなかったから1年間死んでるのと同じような生活を送ってきたんだけどね・・・。」
「うん・・・解るわ。
私も逆の立場だったらきっとそう思ってた。」
「そんなことない!
沙希は僕なんかより強い。
きっと一時の悲しみを越えた後、また歩み始める。
僕が舞い戻ってくる必要なんてないくらい強く生きる。」
僕は声を荒げ、汚い自分を晒していく。
彼女は僕の全てを見て、理解してくれていたのに、僕は彼女の事を本当の意味で何も理解してあげられていなかった。
彼女の綺麗な生き方を見て勝手に沙希に強さを押し付けていた。
そんな僕を彼女は変わらず優しさと憂いを帯びた瞳で見つめていた。
「それでも宗助はきっと・・・私が打ちひしがれていたら、戻ってきてくれたと思うな。」
「っ!」
いつのまにか目には涙が溜まっていた。
ふいっと後ろを向き涙を大雑把に拭う。
子供のような拗ねた物言いをしたが、逆の立場だったら確かに間違いなくどんな手段を使ってでも彼女の前に戻るだろう。
もちろんこの話自体が非現実的すぎる話なので、そういう気持ちだというだけの話なのだが。
「・・・逝ってしまう者と、残される者・・・本当に辛いのはどっちなんだろうね・・・。」
僕の涙を見ないように気を使ってくれたのか、僕から視線を外した彼女の瞳は、風に吹かれひらひらと舞う紅い葉をぼんやりと見つめていた。
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