花城と言えば、きらきらと美しく光り輝く死霊蝶ですよね。
謝憐にとっては可憐に舞う可愛らしい銀の蝶ですが、他の神官達からすると「残虐の限りを尽くす狂気じみた銀の蝶」(第一巻p141)なのです。
花城が絶になる前に、長年棲み家にした万神窟(洞窟)でも、繭が登場します。
なぜ蝶なのか、なぜ繭なのか。
以前、 なぜ蝶なのかについて、「蝶恋花」つまり、「蝶は花(殿下)が大好きだから」みたいな感じで薄〜く浅〜く解釈していたのですが、新しい説を発見したので、書いてみたいと思います。(正解はないので、あくまで一つの説です)
中国語で「情丝万缕,化茧成蝶」という言葉があり、時々使われているのを見かけます。
「情丝」とは、「愛の糸、恋愛の感情」という意味で、「万缕」は「(一本一本のものが集まって)数えきれないほどある」という意味で、「化茧」は「繭に変わる」、「成蝶」は「蝶に成る」という意味です。
つまり、「情丝万缕,化茧成蝶」とは、「愛の糸が数えきれないほど集まり、それが繭と化し、蝶になる」という意味になります。
イメージで言うと、
花城が殿下のことを恋しく想う度に、一本の糸ができ、八百年の間に殿下のことを考えすぎて、その糸が数えきれないほどになってしまって、それが繭になり、最終的に繭から蝶が誕生してしまった、みたいな感じです。
つまり、銀蝶は花城が謝憐を恋しく想う気持ちから生まれ、花城は銅炉山の長い年月を謝憐への想いで耐え抜き、その想いは繭となり、ついに蝶に成ったのではないか。
そして、花城は銀蝶に法力を注ぎ込むことで、自由に操ることができるようになり、死霊蝶はそうして生まれたのではないか。
そうなると、銀蝶は花城の武器であるだけではなく、その存在自体が謝憐への愛で溢れているのです。
花城はどんな殿下も見てきたからこそ、殿下の善良さ、聡明さ、勇敢さ、愚かさ、その全てを愛しているのです。八百年にわたる想いを抱えながらも、神明への冒涜となってしまうことを恐れるあまり、殿下が不意に触れてしまった時にはすぐに避けます。
彼は神明を愛すると同時に、それだけとても敬っているのです。敬うがゆえに抱える愛のもどかしさ、八百年分の愛を口に出せない苦しさはきっと想像を絶するものだと思うのです。
口にはできなくても、彼がどれだけ気持ちを抑圧しようとしても、何か別の物を通して、その愛は漏れ出てくるものだと思うのです。(死霊蝶とか厄命とか...)
そこに思い至ると、銀蝶の描写がより特別に感じられます。
初めて銀の蝶が現れた時の描写がこちらです。
「顔を上げると、銀色の蝶が一匹、謝憐の目の前を飛んでいた。その銀の蝶は、透き通るようにきらきら輝きながら空中を飛び、煌めく痕跡を残していく。謝憐は思わずそれに向かって手を伸ばした。銀の蝶は人の気持ちがわかるのか、非常に利口で、驚かないどころか逆に謝憐の指先に止まった。輝く両の羽は非常に美しく幽玄で、日差しに照らされていると、触れればすぐに消えてしまう夢幻泡影のようだ。それはしばらくすると飛んでいってしまった。(第一巻 P35)」
以前紹介したのですが、新版ではここは「指先にしばらく絡み合い、名残惜しそうに飛んでいった」と改編されています。より銀蝶を通して、花城の謝憐への恋しさやそばを離れる名残惜しさが伝わってきます。
鬼娶太子の時は、「一匹の蝶がひらひらと謝憐の前に飛んできた。じっくり眺める間もなく、その銀の蝶は彼の周りを二周回り、そのまま蝶の風の中へと紛れ込む。空いっぱいに広がる銀の光の一部と化したそれは、羽ばたきながら夜空に向かって飛んでいった。(p79)」
謝憐の周りを二周回る描写に、恋しさや名残惜しさが伝わってきます。
花城が殿下に想いを伝える前に、殿下の指先に留まったり、殿下の周りを周ったりするその仕草は、まるで殿下に気持ちを伝えようとするかのようです。
死霊蝶が、花城が殿下を恋しく想う気持ちから生まれたものだと思うと、より一層(いや、何倍も)ロマンチックに思えませんか?
そう思うと、一匹一匹の死霊蝶のきらきら舞う描写も、殿下のそばを名残惜しく去る描写も、全部が愛おしく感じられます。
(無駄に死霊蝶に関する描写だけ抜き出したくなってしまいました...)
あくまで死霊蝶の誕生に関する一つの説ですが、個人的には全力で推したい説だと思いました
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余談です。
天官賜福、第四巻の発売日が発表されましたね。来年の3月26日頃だそうです。
思っていたよりは早くて嬉しかったです。
情報が出たのも12月24日だったので、最高のクリスマスプレゼントになりました
現在はAmazonでも楽天でも予約できるようです。
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気になる第四巻の内容についての予測を少しだけ書いてみたいと思います。
原作の章構成を紹介するので、直接小説で読みたい方はここまででお願いします🙇
日本語訳の第三巻は「铜炉山重開万鬼躁」の章で終わるのですが、原作ではこの後まだ現在軸の章が以下の分、続きます。
「痴心子血化锦衣仙1,2」「两分颜色大开染坊1,2」「九十九鬼衣险中藏」「知鬼王偏爱戏鬼王1,2」「我菩荠观为之绝倒1,2」「荒山岭大闹黑心店1,2,3」「尖牙利齿吞风碎箭」「路与我孰为定夺者1,2」「铜炉开山万鬼来朝1,2,3」「明将军可悔折恨剑1,2,3」(将軍折剣のエピソード)「左右慌不择东西路1,2,3」「四天王暗黑墙中藏」「何不须黎何不敬文1,2」(霊文のエピソード)「山高路远狭路不通1,2,3」「生同穴入土不为安」「本玉质哪甘作抛砖1,2,3,4」(引玉殿下のエピソード)「迷国师迷语迷人心1,2」「荧惑守心圣人出世1,2」「醋鬼王三问何所依」「鬼火罩顶锁命口令1,2」「怨女鬼妒火烧情心」「末公主自刎宫门前」(公主自刎のエピソード)「骑黑牛飞蹄登铜炉」(後日追記:日本語訳第四巻はここまででした)「万神窟万神真容藏1,2」「万神窟万神真容现1,2,3,4,5」(殿下と三郎の想いが通じ合う箇所)「合铜炉必有一绝出」(この後に過去軸の章が始まります)
意外と多くないですか?
これだけの章、まだ現在軸が続きます。
なので、今度発売の第四巻は、現在軸の話がほとんどの部分を占めるのではないかと思います。
将軍折剣や、霊文、引玉殿下、公主自刎などのエピソードが多分入ってくるので、見応えたっぷりだと思います。以前、この辺りの個々の人物についての考察もしましたが、どの登場人物も物語が深くて、考えさせられるので大好きです。
そして現在軸なので、所々甘いと思います。(以前紹介した傀儡人形の「私は彼のもの」の会話など)
これだけの章があると、全てが第四巻に収まらない可能性が高いと思うので、思いが通じ合う箇所は第五巻になるかも?
(台湾版小説と日本語版小説の表紙は今まで全て同じで、台湾版の小説の第五巻の表紙が思いが通じ合う場面なので、思いが通じ合うのは日本語版小説でも第五巻になるんじゃないかと思います。台湾版の小説は全六巻なので、日本語訳も多分全六巻までになるのかなぁ...と)
発売日が楽しみですね。
四巻が手に入ったら、四巻以降の新版の改編箇所の詳しめの紹介もしようと思っています。
(先ほどの死霊蝶の描写もそうですが、細かい考察をしたいと思った時は地味に改変箇所が参考になる気がします)
今年は皆様のおかげでとても充実した一年を過ごせました
皆様、良いお年を