天官賜福の情景描写がとても好きです。

 

まるで字が光り輝いているかのような、ため息が出るほどの美しい情景描写。色とりどりの色彩が浮かび、活字から香りすら感じ取れて、頭の中の世界に奥行きをもたらす秀逸な描写だと思うのです。

「通りの両側は大勢の人で溢れかえり、王侯貴族たちは特等席である楼閣の上で談笑していた。威風堂々と鎧を纏った皇室の衛兵が先導し、少女たちがひらひらと舞を披露しながら雪のように白い手で空一面に花の雨を降らせている様子は、まるで人と花が美しさを競っているかのようだった。黄金の車では音楽が奏でられ、その音色は上空まで届き皇城全体を包み込んでいる。」

 

「儀仗隊の最後尾では、金色の轡を食んだ十六頭の白馬が煌びやかな舞台を牽引しながら進んでいた。この美しく装飾された舞台の上で皆の注目を集めているのは悦神武者だった。」

 

「大通りの傍らには小さな茶屋が一軒ある。店構えは大きくなく雇人も少ないが、何より景色が良かった。山水があり、人がいて町もある。すべて揃っているが、多すぎないのがちょうどいい。この景色の中に身を置くと、もしもここで出会いがあったならきっと素晴らしい思い出になるだろうと感じる。」

 

「店にいた茶博士は暇そうにのんびりしていた。客がいない時は腰掛けを持ってきて入り口に座り、山を眺め、川を眺め、人を眺め、町を眺める。」

 

「銀の蝶は、透き通るようにきらきらと輝きながら空中を飛び、煌めく痕跡を残していく。」「輝く両の羽は非常に美しく幽玄で、日差しに照らされていると、触れればすぐに消えてしまう夢幻泡影のようだ。」

 

「黒々とした山と鬱蒼とした森。遠くに連なる山々の奥深くからは、狼の群れが月に向かって遠吠えする声が聞こえる。先ほどの山の中で殺し合いをしたせいなのか、冷たい山の中で殺し合いをしたせいなのか、冷たい空気の中にはまだうっすらと血生臭いにおいが混じっていた。

 

今のこの状況は、得も言われぬほど怪しく奇異で、魅惑的だった。少年が片方の手で謝憐の手を引き、もう片方の手で傘を差してゆっくり歩を進めていく様子は、なぜだか妖艶で風光無辺、心の奥に切々と訴えかけてくるような深い愛惜を感じさせる。」

 

「少年は粉々に砕けて千もの銀蝶となり、その銀色の光は星のようにきらきらと輝く風となって散ったのだ。」「美しすぎて夢幻のような光景だと驚嘆した。」「空いっぱいに広がる銀の光の一部と化したそれは、羽ばたきながら夜空に向かって飛んでいった。」

 

「山村とはいうものの、そこは小さな丘のような所だった。青々とした山と川、綿々と連なる水田、これらの麗しい風景を見た謝憐は、今回はいい場所に落ちてきたな、と心の中で呟いた。」

 

「各方面の神仙の神殿は全て仙京に集中し、神殿が集まって町を形成していて、その中で各々の個性を発揮している。こちらには装飾の美を極めた建物が見え、あちらには流れる小川に橋を架けた風情ある光景が見える。辺りを清らかな風が吹き渡り、足元には流れる薄い雲が一面に広がっている。」

 

「壁画の正面に描かれているのは、雲海の中にそびえ立つ金殿から白い光が辺り一面に輝いている絵で、裏面はというと、万里の山河を描いた地図だった。」「その巨大な地図の上には明るく光る真珠が細かく無数に埋め込まれていて、まるで空に浮かぶ星のようだ。」「今この地図の上できらきらと光る真珠の輝きは、ほとんどくまなく視界を覆い尽くしており、非常に美しく見事で人の心を揺り動かす。」

 

「谷間の奥深くからは微かに赤い光が漏れ出しており、曖昧模糊として掴みどころのない夜色の中からは何やら歌声が聞こえてくるようだ。」

 

「果てが見えないほど長いその大通りの両側には、様々な店と行商人がひしめいていて、ひらひらと風になびく色とりどりの流れ旗と真っ赤な提灯が高く低く入り乱れている。」

 

「その建物はひときわ立派だった。柱、屋根、外壁が何も荘厳で華麗な真っ赤な色に塗られ、分厚い煌びやかな絨毯が敷かれている。」「天界の宮殿と比べても遜色なく、荘重さでは劣るものの、逆に艶やかな美しさは三割勝っていた。」

 

「紗の仕切り幕がひらひらと揺れ、赤い人影がぼんやりと見える。」「幾重にも重なった幕をかき分けて差し出された手が、謝憐の手に重なるようにして壺皿をしっかりと支える。」「赤い雲のような紗の仕切り幕の後ろに、十八、九歳くらいの少年が押し黙ったまま立っている。」

 

「二つの賽がコロコロと壺の中で転がり、絡みついてぶつかり合い、軽快な心地よい音を立てる。」

 

「水面ではたくさんのほの暗い鬼火が戯れている。そのほとりに、極彩色に輝く華麗な楼閣が一つ佇んでいた。」「その中から不思議な歌声が聴こえてきた。ふわりと柔らかで麗しく、まるで大勢の女たちが軽やかな音楽に合わせて笑いながら歌い、あでやかに踊っているかのようだ。」

 

「珠簾を上げると、香りを纏った暖かな風がふわりと顔に当たり、そのみだりがわしい香りを避けるようにわずかに顔を背ける。」

 

「大殿には分厚い絨毯が敷かれていて、いったい何の妖獣の毛皮なのか、なんとそれは一枚ものだった。雪のような白い素足のままで、紗の衣を纏った大勢の美女たちが妖艶に体を躍動させ、自由に歌い踊っている。」

 

「思うままにくるくる回る女たちは、真夜中に咲く毒々しい棘のある薔薇を彷彿させた。」

 

「小さな炎が辺りを明るく照らし始めると、それに呼応するように、そう遠くないところから光暈が淡く光りだした。それはまるで一粒の真珠が深い眠りから目覚め、澄んだ美しい瞳を開いたかのようだ。」

 

「しばらくすると、さらに多くの真珠が光り始め、それが繋がって周囲がますます明るくなっていくと、ここが広々とした地下宮殿の大殿であることがわかる。大殿の天井には、無数の星辰が嵌め込まれていた。」

 

「煌めく星辰は天井に嵌め込まれた夜明珠と金剛石で、夜明珠は光を受けて明るく輝き、金剛石はその光彩を反射し、夢幻の如く互いを照らし合っている。それはまるで小さな銀河を地底に閉じ込めているかのようだった。」

 

「兵士が先頭を担うのは、この世の茨の道を切り開くことを象徴している。その後ろに、一万人に一人と言われるほどの純潔の少女たちが続く。淑やかで美しく、真っ白な手に籠を携えて天女の如く花を降らせる。散り落ちた花は泥にまみれ、踏みつけられて香しい塵となっても、清々しい香りを漂わせていた。楽師たちは黄金で作られた金車の中で端座している。」

 

「大殿の外では、線香立ての鼎からゆらゆらと煙雲が立ち上がり、神武殿全体を幻想の世界のように染め上げている。鼎の両側には何列もの長明灯が宙に浮かび、整然と灯火の壁を成していた。」

 

「どれだけ歩いても辺りは緑豊かな田畑ばかりで、その田畑で牛がモーモーと鳴き、水車がくるくる回っていて、農夫たちは田植えに勤しんでいる。田畑のそばには不格好に歪んだ藁葺きの小屋がある」

 

「観に入ってすぐのところには清水の池もあり、底一面に投げ入れられた硬貨が煌めく水面の下で青く光り輝いている。」

 

「宮観の高くて大きな赤い塀の内側には梅の花が一面に咲き誇り、その枝には幸福を祈る平らで細長い赤色の布が無数に結ばれていた。咲き乱れる梅の花の中でその赤い紐がひらひらと風になびく様子は、錦のように美しい。」

 

「宴席は露天の月の前に設けられていて、美酒の香りが辺りに広がり、瑞雲が現れて花吹雪が舞っている。存分に酒を飲み宴を楽しみながら、月を愛で夜景を眺められるのだ。」

 

「仙京で見る月は皓々と純白に輝き、そう遠くない所に建てられた巨大な玉の幕のようで、もう少しで近づけば手が届くのではないかと思うような、人界では目にすることのできない美景なのだ。」

 

「まるで千万の魚が川や海を泳いで行くように、無数の長明灯がゆっくり昇ってくる。それらは闇夜の中できらきらと光り輝いて、まるで宙に浮かぶ霊魂や美しい夢のような壮麗さで、漆黒の人界を明るく照らしていた。」

 

「霊光が流れる一宇の宮観が静かに謝憐の前に現れた。」「周囲は漆黒と赤紅が交じった鬼界の風景だが、それに包み込まれるように佇むこの絢爛豪華な宮観は千の灯が明るく煌めいていて、さながら仙境のようだ。」

 

「漂う芳香とゆらゆら立ち上る煙、灯火が明るく輝く中で謝憐は真剣に語り、花城も集中して耳を傾けている。大殿の中でゆったりと言葉が紡がれ、その光景も声も、全てが穏やかで優しさに満ちていた。」

 

「その輦輿は極めて美しく、金色の屋形からは精巧な房飾りが垂れ下がり、紗の仕切り幕がひらひらと揺れている。もし誰かがそこに座っていたら、その優美な赤い仕切り幕に映し出された影に、きっと人はただ思いを馳せるだろう。」

 

「もがいている間に、謝憐の手が供物台の上にあった皿の辰砂を擦り、紙の上に黒みを帯びた赤い跡を数本残す。〈離思〉の「除卻巫山不是雲」の部分の「巫山」という二文字が瑞々しい赤に染められ、何とも言えない艶かしさを醸し出していた。」

 

 

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情景描写、美しすぎませんかおねがい

 

妖艶な描写もあれば、清らかな風が吹き抜けるような心地の良い風景描写もあり、どれも燦々と煌めいていて、怪しく奇異で魅惑的な物語を照らす灯のようなのです。

 

お気に入りの飲み物を淹れたら、この情景描写だけで何時間でも楽しめそうです。

 

小説を読みながら、この美しい情景描写達をどこか一箇所に集めて、繰り返し繰り返し愛でたいと思っていたので、記事として一箇所に集められてもう感無量ですおやすみラブラブ