前回媒婆の番外編でしたが、いかがだったでしょうか?小屋の奥で何があったのか...妄想するだけでもワクワクします照れ今回も甘い番外編ですラブ題して「本日閉店」。

 

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「はは...今回の絵は上出来だ!」師青玄は独り言を呟きながら顔には笑顔が溢れていました。寝床の下に絵を隠そうと、机から立ち上がって、絵を眺めながら寝室に向かって歩きます。絵には、賀玄の本来の姿が描いてありました。あの日、二人で気持ちを通い合わせた時の、あたり一面の黄金色の葉の絨毯、そして賀玄が樹の下で振り向く姿、その顔はいつもの冷たい表情ではなく、暖かく愛情に満ちた眼差しで、少し笑みを浮かべています。

 

「ずっとお前のことを考えていた。」賀玄は低い声で言いました。「お..俺も。明儀姿の君も、黒子姿の君も、どれも君で、・・・君で良かった」師青玄は賀玄の胸に顔を埋めがら言います。そして樹の上で二人は何度も、何度も口付けしました。

 

手に持っている絵を見ながら、その時のことを詳細に思い出していました。そして突然、あることに気が付きます。「ここはどこだ?」振り返って先ほど通った扉を見ると、そこは寝室ではなく、今にも壊れそうな空き家の戸でした。師青玄は絵を夢中に見るあまり、寝室の扉に縮地千里の陣が張られていたことに気が付かず、通ってしまったのです。通り抜けた先は、お店から数里離れた場所でした。師青玄は、お店をまだ開けていて、お客さんが来ても誰もいないことを思い出します。でも、この距離だと歩いて帰るには少し時間がかかるし・・賀玄が外出から帰ってきて師青玄がいないことに気が付くまで待つのか・・・

 

悩みながらも、師青玄は自分で歩くことを選びます。今手に持っている絵を見られたらまずいと思ったのです。不自由な脚を引きずって、一柱香の時間歩くと、前から黒子姿の賀玄が緊張した顔で向かってくるのが見え、顔が綻びます。安心したのも束の間、手にはまだ絵を持ったままだと気が付き、咄嗟に身体の後に隠しながら言いました。「はははは黒兄、ここだよ!」黒子はため息をつきながら言います。「帰ったら、店は開けてるのに誰もいないから、心配したよ」そう言うや否や、師青玄を背中に乗せて歩き始めました。

 

「背負う前に声かけてよ!心準備がいるだろ。」師青玄は手に持っている絵が擦れて、壊れてしまうのが惜しかったのです。それが今では、黒子の肩に手を回しているので、丸められているその絵が、黒子のすぐ目の前でゆらゆらしている思うと、顔が真っ赤になりました。

 

間違って縮地千里の陣が張ってある扉を抜けてしまって・・・。縮地千里の陣を張ると扉は光ってるのに、どうしたら間違って通ることができるんだ?そんな会話をしながらも、賀玄はさっき師青玄が後ろに隠した絵のせいなんだろうなと察します。売り物の絵なら、いつも表の店舗の方に置いておくから、寝室の扉を通ったということは、きっと自分の絵を描いたんだと考えました。

 

「はははは・・ほら、集中しすぎて・・気がついたら、つい・・ははは...」師青玄はどう言い訳したら良いかわからなくて、つい’’ははは’’で誤魔化そうとします。「そうなると、集中しすぎて描きながら机を離れて、小屋の奥まで行って、光ってる扉を開けて通ったのか。聞いてると、その絵はお前を骨抜きにするほど上出来だったようだな。」「あ・・ほら、上の空だっただけだよ!ははは・・」絶対絵のことについて尋ねられると師青玄は覚悟しました。

 

別に隠すつもりはないのですが、好きな人の絵を頻繁にこっそり描いてるなんて、相手にどれほど夢中なんだ・・まるで女の子みたいじゃないか・・と自分自身、気恥ずかしくなるのでした。「もういいよ、冗談だよ。お遣いで外に出る時のために作った陣なんだ。まさかお前が昼間そんなところを通るなんて思わなかったから。俺のせいだ、ごめん」「はは!大丈夫、大丈夫!見てなかった俺が悪いんだ!ははは!」

 

二人が小屋に着くや否や、賀玄は師青玄の手に持っている絵を奪って見始めました。師青玄はついに見られてしまった・・と下を向いて、賀玄が何か話すのを待っていました。賀玄がしばらく何も言わないので、師青玄はこっそり顔を上げて、賀玄の反応を見ました。賀玄は、絵の中の自分の姿を見ながら、柔らかい眼差しになっていました。

 

「・・どう?好き?」師青玄は尋ねます。「もちろん!」賀玄はすぐに答え笑顔を見せます。顔がだんだん赤く染まりながら師青玄は尋ねます。「・・おかしくない?」「何がおかしいんだ?・・これは、好きだから俺を描いたのか...?」笑顔で賀玄が尋ねます。「うん・・・」師青玄は恥ずかしくて、下を向きながら答えます。こんな時に顔から耳まで真っ赤になる自分が本当に嫌になります。

 

「青玄?」賀玄が名前を呼びます。師青玄は恥ずかしさを堪えながら、賀玄の黒い瞳を見つめます。もう耳まで赤く染まっていました。こんな姿の師青玄がどれだけ魅力的か・・・。賀玄は師青玄の眼差しの微かな変化に気が付きます。そして、少し屈んで師青玄に口付けしました。口付けはだんだん激しさを増し、師青玄も焚き付けられます。師青玄はやっとのことで言いました。「ちょっと待って、離して!まだお店開いてるから!」賀玄は面倒臭そうに「チッ」と言ったかと思うと、手を一振りして、窓も戸も全て締め切り、門の前の看板がひっくり返る音と、鍵をかける音が聞こえました。「閉めた」もう何も言わせまいとするような言い方です。

 

 

そうしてしばらく二人で盛り上がっていると・・

 

年老いた女性の声で「誰かいますか?」と尋ねながら、戸を叩く音が聞こえてきます。一瞬師青玄に緊張が走りますが、その緊張が賀玄を刺激することになり、二人はとても出られる状況ではありません。戸を叩く音は止まりません。「まだ早い時間なのに、どうして閉まっているのかしら?中から物音もするのに、誰も出てこないわね。」と独り言を呟きながら去っていきます。

 

去っていくと、二人とも安心して笑いました。「危なかった。次はないからね!」師青玄は責めるような口調ですが、目には笑みを浮かべながら言います。「次は門の前に巨漢を立たせようかな」賀玄は、なぜ看板に閉店と書いているのに邪魔しに来るんだろう、と迷惑そうな顔をしながら言います。「ははは!お客さんを怖がらせたらだめだよ。その人たちのおかげで食べていくのに!ははは」師青玄は笑いながら答えます。

 

何も言わずに、ただ無言で師青玄を見つめ続ける賀玄を見て、師青玄は察します。

「あ・・・、あと一回ね!一回だよ。」師青玄は焦りながら言います。

「五回」

「・・俺雌豚じゃないんだから...一回!」

「四回」賀玄は顔を近づけながら、低い声で誘惑します。

「もうその手には乗らない」師青玄は賀玄を押しのけます。

賀玄は笑いながら、師青玄を抱き上げて寝室に向かいます。

 

師青玄は力では勝てないので諦めます。「じゃあ!じゃあせめて途中、ご飯食べて体力補充させて!」「わかった」賀玄は満面の笑みで渋々同意しました。

 

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番外編「本日閉店」、いかがでしたか?名残惜しいですが、これが最後の番外編になります🥺当初この番外編のあらすじを書くかどうか迷ったのは、濃厚なラブシーンが挟まってて(二人で盛り上がったところ)、それが書きにくいなぁと思ったからなのです。(ここのニ次元ではガイドラインなる結界が張られているのです...チーン本当はとっても書きたかった...。)本編は少し悲しかったので、''番外編で喪失感を少し埋めてもらえると...''みたいなことを、この物語の作者さんも後書きでおっしゃってました。

 

全十二回(+番外編三回)に渡ってご紹介しましたが、あらすじとしてまとめ直す上で削った部分はやはりたくさんあります。もっと読みたいという方がいれば、原文にはなりますが、天官赐福 同人文『双玄旅』作者:Freecia などで検索してもらえたら、無料で読めるようになっています。

 

「二人のその後」については、いろんな解釈があり、いろんな同人文があります。これはそのうちの一つだと思ってもらえると嬉しいです。他の同人文では、師青玄が凡人になってから、謝憐のところで賀玄とばったり会った時に、賀玄がなんだかんだ言いながらも手脚をさっと治してあげて、その後、師青玄が師匠に化けた賀玄の下で、次は武神として再飛昇を目指して修行する、みたいな物語もありました。その物語での師青玄は、もっと楽観的で、罪悪感に苛まれながら生きる姿ではありません。本当に色々な物語があります。それだけ''この二人''に''その後''を期待する人がいるということですね。

 

天官賜福の記事たくさん書いたような気がしますが、実はまだまだ書き足りてませんおねだり随時更新していくので、お楽しみにおやすみ

MAU SAC