二人が雪山の上で叫んだことは「謎」とされていて、いろんな考察がされています。ネタバレを含むのでご注意ください。

 

経緯

慕情に''胎霊を作った犯人''という嫌疑がかけられて、慕情はその嫌疑を晴らすために雪山まで胎霊を探しに来たら、胎霊を追ってきた風信とばったり会って喧嘩が始まります。

 

雪山で慕情が「あの子(胎霊)は俺が殺したんじゃないって言ってるじゃないか、俺も探してるんだよ!」と風信に叫び、少し離れた場所でそれを聞いた謝憐と花城が、雪山で大声を出すと雪崩が起きるからやめるように伝えようと銀蝶を遣わすと、銀蝶を通して二人の会話が花城に聞こえ、花城の表情が曇ります。

 

あまりの表情の変化に謝憐が「二人はなんて言ってたの?」と聞きますが、その直後雪崩が起き、謝憐も読者も二人がどんな会話をしたのかがわからずじまいになります。

 

その後、謝憐は花城の表情が気になり、何度か二人に直接聞いたり、花城に聞いたりするけれど、結局みんな言いたがらず、話を逸らしたり誤魔化したりでわからずじまいなのです。(何度も出てくるので読者も興味をかき立てられます笑い泣き

 

別のタイミングで「福地」のことを花城が口にした時に、慕情がどうして花城が「福地」のことを知ってるんだ?みたいなことを言い、花城が「福地のことを自分で叫んでただろ?」と言うシーンがあるので、謝憐は「福地」のことと納得して、それ以上は詮索しなくなります。そのため、「福地」を取り合ったことを叫んでいたのではないかという考察が一番多いけれど、多分そんなに単純ではないと思っています。

 

*「福地」の事件とは、謝憐が人界に追放された時に、修行に向いている土地「福地」を見つけた際に、三十三名の神官と衝突し横取りされた事件のこと。この時、慕情はすでに謝憐のそばを離れており、悪気はないものの結果的に三十三名の神官側についています。

推測

なぜなら、謝憐が三十三名の神官と慕情と福地を取り合った際に鬼火として花城はその場にいたので、今更知って驚くことでもないし、三十三人の神官と決闘して勝って、神廟もすでに燃やしたわけで、今更怒る内容ではないと思うのです。

 

花城が何度謝憐に聞かれても言葉を濁して言わなかったのに、ここでは聞かれてもないのにわざと謝憐に聞かせるように言っていることから、多分本当の内容は謝憐が聞いたら悲しくなったり、自分を責めたりするようなことだと推測できます。それに、謝憐が慕情と風信に直接聞いた際に、二人とも謝憐の前ではもう一回言えなかったのです

 

銀蝶を遣わした瞬間に二人が話していたことなので、短い会話で、直前に胎霊のことを話していたことを考えると、あまりそこから遠い話題である可能性は低いので、例えばこんな会話があったのではないか?

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慕情:「あの子(胎霊)は俺が殺したんじゃないって言ったじゃないか、俺も探してるんだよ!」

風信:「太子の福地を横取りした奴が言うことなんて信じられるか!」

慕情:「今、福地の話は関係ないだろ。俺はそばにいなかったし、そもそも胎霊の母子の死はお前と殿下のせいだろ

風信:「!!!!!」

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喧嘩がヒートアップして、心にもないことを、つい謝憐を巻き込む形で、胎霊母子の死は殿下にも責任がある、と言ってしまったのではないかと思います。

背景

当時は謝憐が人間界に落とされて、風信は頑張ってお金を稼いで、謝憐がいつの日にかまた飛昇できることを目標にしていました。でも謝憐は色々あってお酒を飲んで酔い潰れるわ、そのまま二日ぐらい行方をくらますわ、白無相に追い詰められて精神崩壊の手前までいくわで、結構大変な状態でした。

 

(風信や謝憐の両親から見ると、白無相に追い詰められているのも謝憐自身の幻覚ではないか、と思っていました。)

 

風信はこのタイミングで(水商売をしていた)蘭菖と交際していて、彼女の身受けのためのお金を謝憐に打診しているが、謝憐もお金に困っているのを見て諦めています。

 

そしてある日、謝憐が出かけたら帰ってこなくなります。(実はこの二ヶ月間、謝憐は万剣に刺されて寝込んでいたのです。)もしかしたら今だに風信と慕情は謝憐が失踪していた2ヶ月の間に万剣に刺されていたことを知らないのかもしれません笑い泣き

 

この2ヶ月の間に蘭菖はイライラする風信を見かねて自分から別れを切り出します。(そりゃあイライラするよね。仕えている殿下は失踪するし、お金には常に困ってるし、いつ帰ってくるか分からなくて先は見えないし。)実際、二ヶ月後に帰ってきた時に謝憐が(白無相から押し付けられた)この剣を売ってお金にしなさい、と風信に言うと「もう必要ないんだ」と断っています。

 

この後、汚い言葉が口から出る謝憐、お金持ちの家に盗みに入る謝憐を見て、風信は失望しすぎてそばを離れることになります。風信にとって謝憐は「完璧な太子」だったので、こんな有様の謝憐を受け入れることができなかったのです。

結論

つまり、慕情が風信に言った「胎霊の母子の死はそもそもお前と殿下のせいだろ」という言葉は、謝憐が荒れていなかったら風信はそばを離れることもなかったし、そばを離れることがなかったら蘭菖と別れることもなかったし、別れなければ誰かに殺されて「胎霊」にされることもなかった、という意味になります。

 

売り文句に買い文句で出てきた言葉なので、慕情も本心はそう思っていなくて、口をついて出てきただけだと思いますが、謝憐が知るときっと自責の念にかられるので、花城は謝憐に本当のことを言えないし、謝憐が気になって何度も聞くので「福地」のことだと言ったのではないかと思います。