天官賜福にははっきりと書かれていなくて「謎」とされている部分がいくつかあります。今日は万神窟の最後の絵について考察していきます。割と大事な場面のネタバレを含むので、まだ最後まで読んでいない方はお気をつけください。

万神窟の神像の素顔が明らかになった後、慕情と風信は壁の絵を見て、花城が当時謝憐が救った子供だと気付きます。謝憐が最後の絵を見る前に、慕情と風信に止められて、見ることができていません。二人の反応や前後の文章から、以下の条件を満たすことがわかります。

 

①花城は謝憐との思い出を絵にしている

②風信と慕情が過激な嫌悪感を示す

③花城は謝憐に見せる勇気がない

最初の絵から順に見ていきます。同時に、二人の反応も見ていきます。

 

最初の絵は、高い城の壁が描かれていて、城の下にはたくさんの人が海のように集まっていて、みんな一つの華麗な台を見ています。絵の中は二人の人物に色付けがされていて、下にいる人が白色で、全身から光を放っているようで、その人は天に向かって手を伸ばし、城から落ちてきた子供を受け止めようとしていました。子供は赤色です。この時の慕情の反応は、「・・・あいつなのか?あいつは祭天遊の時に落ちてきた子供なのか?どうしてだ?血雨探花はあいつなのか?!」と驚きます。

 

二つ目の絵は、ボロボロの道観の神台に神像が祀られていて、その神像の片手には剣、もう片手には赤い傘を持っていて、下に向かって差し出していました。下には醜い赤い子供がいて、小さい花を抱えて彼に渡している絵でした。その次の絵は戦場です。たくさんの兵士達がいて、天空には白い小人が手に剣を持っていました。下には一面の兵士がいて、その中にいる赤い小人が彼を見上げていました。

 

風信は信じられないような様子で言います。「この赤いのは全部同じ人だよな?全部あいつか?・・あいつずっとついてきてるのか?」慕情も「ついてきてるだけじゃない。ずっと見てる。どこにでもいる。街中、不幽林、背子坡・・。もしかしてあの神像は全部あいつが彫ったのか?!」風信は鳥肌が立ち、「どんな奴だよ。この八百年、あいつはずっと見ていたのか?今日この後に及んでもまだついてきているのか?怖すぎるだろ。何がしたいんだ?普通の信徒ならこんなところまでできない。何がしたいんだ!」と動揺を隠せません。

 

最後の絵を見た時、二人は大声を上げます。謝憐は「どうしたの?」と尋ねますが、二人は何か大変なものを見たような反応で、こちらに向かってくる謝憐を止めます。風信「見るな!」慕情も顔が暗くなり、「・・見るな。逃げろ」と言います。そして、風信と慕情は謝憐を引っ張って走りながら、風信は「見なくていい!あんなもの見れない!こんな奴初めて見た。あいつに近づくな。あいつはおかしい、狂ってる!」と言います。

 

風信はその後の会話の中でも、「殿下、故意に隠したいわけじゃないんだ。でも、あいつは殿下に対して・・あまりにも見苦しくて、口にできない!」と表現していて、慕情も「あの時軍から追い出して良かった。でなきゃ、太子に徐々に近づいて、毎日どんな汚らわしいことを考えているか分からない。気持ち悪すぎる。」という表現をしています。その後の花城との対話の中で、「殿下に対してどんな思い・・・なのか、理解した。もう太子殿下に近づかないでくれ」と言っています。この時花城は、緊張して枯れた声で静かに「殿下も見たのか?」と尋ねています。


風信と慕情の過激な反応から、この絵は、花城が謝憐に対して友達以上の思い(二人の視点から見れば、良からぬ思い)を持っている絵だということが分かります。おそらく昔、洞窟で温柔郷(媚薬)を盛られた謝憐の姿を描いたのではないかと思います。この時、謝憐はあまりの苦しさに自分でもがいて服が乱れて上半身はほぼ裸、暗闇の中で花城は謝憐を座らせようと手を貸した時に思わず謝憐の肌に触れる描写があります。

その後謝憐に言われて、髪を一束切るために謝憐に向かって手を伸ばしますが、暗くて見えず謝憐の胸元に触れてしまいます。胸元から喉までつたりながら触れてやっと髪に辿りついているのです。この時、謝憐は温柔郷(媚薬)を盛られているので、思わず低い呻き声をあげてしまいます。花城はその時の謝憐を思い返しながら、絵にしたのではないかと思います。当時は暗闇で何も見えなかったので、絵に描き起こす上で、もしかしたら謝憐の姿や表情に、少しばかり花城の''想像''や''妄想''も加味されているかもしれません。

 

花城にとっては、謝憐との思い出深い場面を絵にしているわけですが、風信と慕情はその洞窟にいなかったので、二人の間にそんなことがあったのも知りません。そんなことを知らない二人が突然そんな絵(上半身ほぼ裸の謝憐と花城が一緒に描かれている絵?横たわっている上半身ほぼ裸の謝憐を起こそうとしている絵?それだとパッと見、押し倒そうとしているように見えるかも?艶かしい表情の謝憐の絵?)を見ると、きっと花城が謝憐に対して良からぬ思いを抱いていると考えるに違いありません。

 

二人が絵を見たと言った時、花城は謝憐も見たのかどうかを真っ先に気にしています。花城にとって謝憐は唯一の神なのですが、花城は謝憐がその絵を見て冒涜だと思わないかと、謝憐の反応が不安で、すごく気にしている様子が分かります。

 

花城の謝憐に対する思いって、他の二人から見たら狂気ですよね。花城の愛は偉大すぎて、狂気すぎて、だけど臆病すぎて、もう本当に大好きです。花城が銅炉山から出られない期間、謝憐のことを思うあまりに神像を彫刻し始め、どの彫刻も生き生きと丹念に彫られていて、あの数を一人で彫るなんて、どれだけ恋しさを募らせたんだろうとを考えると、胸が詰まります。

 

-------

話は変わりますが、普段作業用に聴いているお気に入りの曲です。アニメで使われている曲達と合わせてよく聴いています。どんなにやる気がない時でも、天官賜福の曲をイヤホンで聴きながら作業すると幸せな気持ちになるし、はかどります。

 

 
②これほんと好き。女性の歌声で、柔らかくて、優しくて、心に染みます。映像も綺麗すぎます。歌詞も沁みます。歌詞の日本語訳がコメント欄にありました。

 

③BGM用なので作業しやすいです。いくつかすごく癒される旋律が入っています。