天官賜福には何度か読んで初めて気がつく細かい伏線がたくさん隠れています。ネタバレを含むので、まだ最後まで視聴していない方はご注意ください。

 

①謝憐が3回目に飛昇した時、霊文が’’風信はよく人間界に行っている’’と言っています。それは800年の間、風信がずっと人間界で謝憐を探していたことを示している可能性があります。

 

②扶搖が初めて登場した時に「你是人间正道,你是世界中心(人の世の正道であり、世界の中心です)」と謝憐に言いますが、謝憐が初めて天庭から追放されて悲惨な生活を送っている時に、慕情から同じことを皮肉として言われています。

 

なので扶搖が初めて登場したこの時から、謝憐は扶搖の正体に気づいた可能性があります。

③謝憐が最後君吾を打ち負かしたのが「胸口碎大石」という技ですが、君吾は謝憐の技を熟知しているにも関わらず、この技で負けたのには以下の理由があります。

 

・人間界での800年にわたる経験。かつて太子だった人が最もしなさそうな、大道芸の技の一つであるため、謝憐には思いつき、プライドの高い君吾には決して思いつかない。

 

・かつて同じように太子として崇められた後、国の滅亡の責任を問われて民に矛先を向けられるという同じような境遇にあった君吾と謝憐ですが、謝憐は800年もの間、自分の失敗を認め受け入れ、自分の罪を贖罪して生きてきました。しかし君吾は自分の失敗を受け入れることができませんでした。

 

・「胸口碎大石」には、謝憐が人間界にいた時の商売敵(養う家族がいるにも関わらず、自分が死ぬとしても謝憐に剣を向けることができなかった)人間の善意が込められているように思います。君吾にとっては人間の善意は誤算であり、得ることができなかったものでした。

 

こうして考えると、謝憐が君吾に勝てたのはこの技しかないし、この技で勝てたことで話が綺麗にまとまる気がします。墨香銅臭さん、さすがです。

 

④ 謝憐が鬼火の姿の花城を助けた時に、鬼火を売っていた道士に「こういう特殊な商売は特殊な場所でした方がいいと思うよ」と言ったので、後に花城が「鬼市」を築いたのはここから来ていると思います。殿下の言葉を全て覚えているんですね。

 

⑤ 花城が謝憐に牛車で初めて会った際に、謝憐に「どうしてここへ来たの?」と聞かれた時に、「家で喧嘩してて、追い出された。たくさん歩いたけど、行くあてがなくて」と答えたが、これは800年前に城から落ちた花城を救った後に謝憐に聞かれて答えたことと全く同じ答えでした。

⑥戚容は悪役ですが、後に「谷子(穀子)」という子供を庇います。“容”という字はもともと“谷”を庇う漢字になっているので、ここにも作者さんの名前の付け方のセンスを感じます。