HIV陽性で下記の23の指標疾患が認められた場合にAIDS発症となります。


HIVの感染発覚時にすでにAIDSを発症していたときに「いきなりAIDS」なんて俗に呼んだりします。



「HIVに感染してエイズ発症したら死んじゃうの?」

そんな事はありません。まず指標疾患です。
よく語呂合わせで覚えたりしますね。


指標疾患(Indicator Disease)



A.真菌症


 1.カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)

 2.クリプトコッカス症(肺以外)

 3.コクシジオイデス症

(1)全身に播種したもの

(2)肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの

 4.ヒストプラズマ症

(1)全身に播種したもの

(2)肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの

 5.ニューモシスティス肺炎

(注)P. cariniiの分類名がP. jiroveciに変更になった



B.原虫症


 6.トキソプラズマ脳症(生後1か月以後)

 7.クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)

 8.イソスポラ症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)



C.細菌感染症


 9.化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に、2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの)

(1)敗血症

(2)肺炎

(3)髄膜炎

(4)骨関節炎

(5)中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍

 10.サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く)

 11.活動性結核(肺結核又は肺外結核)(※)

 12.非結核性抗酸菌症

(1)全身に播種したもの

(2)肺、皮膚、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの



D.ウイルス感染症


 13.サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以後で、肝、脾、リンパ節以外)

 14.単純ヘルペスウイルス感染症

(1)1か月以上持続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの

(2)生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの

 15.進行性多巣性白質脳症



E.腫瘍

 16.カポジ肉腫

 17.原発性脳リンパ腫

 18.非ホジキンリンパ腫

 19.浸潤性子宮頚癌(※)



F.その他

 20.反復性肺炎

 21.リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)

 22.HIV脳症(認知症又は亜急性脳炎)

 23.HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)


(※)C11活動性結核のうち肺結核及びE19浸潤性子宮頚癌については、HIVによる免疫不全を示唆する所見がみられる者に限る。


「エイズ発症=死」ではないです。ただしエイズ指標疾患の種類や発見時の進行度合いによっては重篤な状態に陥る事もあります。



基本的に指標疾患は免疫の低下と深い関係のある疾患ばかりです。身体の免疫力が低下しこのような日和見感染症と呼ばれる健常者ではあまり起きない疾患を起こします。




A.ニューモシスチス肺炎やカンジタ症などは真菌が原因です。通常空気中やいろんな場所に存在する真菌は通常の人は身体の中に入っても何も引き起こしませんが免疫力の低下により発症します。



以前の記事でも書きましたが、面白いのはニューモシスチス肺炎は健常者が発症した場合の方が命に関わる点です。


非HIVの人の場合は真菌の繁殖は少なくても強い炎症反応(免疫反応)が起きる事で進行も早く死亡率も高いです。



HIV陽性では大量に真菌が繁殖するものの炎症反応は弱く(免疫機能が弱い)進行もゆっくりで致死率は低くなっています。



もちろんいきなりエイズの方でも定期的なX線撮影などもしておらず、ニューモシスチス肺炎に全く気づかず進行してしまう。


酸素飽和度が下がり倒れて救急搬送して気付くことになれば命に関わる事もありますから早期発見が大事ですね。





どの日和見感染症も発見が遅れれば重篤な症状を示します。ただ日和見感染症自体はHIVがわかる前でも何かしらの症状に合わせて病院の各科で検査を受けていれば発見できます。


日和見感染症からHIVの検査を勧められ発覚するパターンもあります。




B、C.原虫症や細菌感染症も同じですね。


結核はHIV感染者に多いですし治療の際にまず結核の治療が先になりますから少しめんどくさいことになりますし、敗血症や髄膜炎も命に関わります。



D、ウィルス感染症、サイトメガロウィルス(CMV)でエイズ発症する方も非常に多く、割合はニューモシスチス肺炎についで多くなっています。サイトメガロウィルス網膜炎や腸炎などで発症している方も周りにもたくさんいます。


サイトメガロウィルスも健常な方では症状を引き起こさないウィルスですが免疫力の低下により症状を引き起こします。



やはり定期的な検査が大切ですし初期に発見できて治療を行えば治療できます。



E、F、エイズ発症の中でも腫瘍や脳症などはやはり怖いですね。


昔から有名なカポジ肉腫やリンパ腫は発症すれば命に関わる事もあります。治療も基本は抗HIV療法を行い免疫力の回復をしながらになります。


HIV脳症も命を落としたり後遺症が残る事もあり注意が必要です。


ここら辺は比較的命に関わる可能性も高い疾患ですのであるのは確かですが、それでも抗HIV療法との併用で改善する方もいるので決して絶望する必要はありません。




「エイズ=死」ではなく発症した日和見感染症の種類や治療開始時の進行度合いがとても大切だという事になります。



「エイズ発症したらどうなるんだろう?」って声を聞くことはありますが、発症すればその日和見感染症の治療とHIVに対しては抗HIV療法を行なっていくことが基本になります。




日和見感染症が完治すれば、その後は過去にエイズ既往歴がある人も無い人も抗HIV療法を行なっていくことになります。




死に至る場合、日和見感染症自体も重篤化して気づいた場合、治療への反応が悪いケースや抗HIV療法に対しても反応が遅いケースなどあります。



確かに一つエイズ指標疾患を発症すると短い期間に次から次へと色々な病気を発症する方もいます。


身体自体の免疫機能が低下しているためです。

カンジタでも血症につながる事もありますし、ニューモシスチス肺炎でも重篤化して死に至るケースも中にはある。


定期的な検査や何かしらの症状を示せば病院にかかることが大切です。


「HIV=死」でも「エイズ=死」となるわけではない



過度に怖がる必要はない。ただ注意は十分に必要だという事です。