HIVの多剤療法は効果をあげ、「HIVは慢性疾患になった」「ほぼ健常者と同じ寿命まで生きられるようになった」このほぼという言葉は何故かHIVにおいてよく使われます。

初回治療での現在の治療の成功率も医師は「ほぼ薬が効きますから」と言います。

しかし実際は90%程度です。何故かHIVについてはこの「ほぼ」という言葉がよく使われあまりリスクの意識を広げようという流れがありません。

おそらく80年代のエイズへの恐怖、偏見や差別、そういったものを払拭しないと多くの人が気軽に検査を受けてくれない、だからこそもし陽性だったとしても心配しなくても良いですよという面が強調されるのだと思います。


確かにHIV関連疾患での死亡というのは減っていますが他の記事にも書いたように非HIV関連疾患での死亡(悪性腫瘍など)を含めると、健常者と全く同じとは言えません。

ましてや多剤療法が開始された1996年からまだ23年です。当時20歳で服薬を始めた人は43歳、その方がこれから50年後、60年後どのようになるか実際にはデータがありません。



偶然先日、某SNSでも治療開始時のCD4の値とその後の上昇について話題が上っていました。


僕が感染が発覚した時にも見た資料の1つで、

毎年「HIV感染症治療薬共同使用成績調査」

というものが公開されています。もちろん1つのデータに過ぎませんが、1つ1つを見ていった時に「ほぼ」この言葉で片付けて安心してしまっていいのだろうかと疑問を持ってしまいます。興味のある方は是非検索すればでできますのでご覧ください。

生存率1つをとっても健常者と同じとは行きません。

現実的に治療開始時のCD4の数値が低かったり、既にエイズ発症の状態から治療を始めた場合にCD4の回復が悪いことは世界的に分かっています。(もちろん個人差が大きいです)

そしてCD4の値が回復したとしても、比較的高いCD4の値のHIV患者であっても、非エイズ疾患の発症率や治療に対する反応は健常者に比べて悪いことが問題になっています。

HIVウィルスを検出限界未満に抑えてもHIVウィルスは体内に存在しています。
血管は常に炎症状態にさらされている事、CD4の値が回復に向かっても免疫反応全てが元どおりになるとは限らない事、色々な問題を抱え日々研究がなされています。

僕は長生きしたいと思っていましたし、長生きすると思っていました。僕が好きになるのは一回り以上も歳下だったりします。
相手の介護まで終え最後まで看取った後に自分も相手の元へ行きたい。それが昔から僕の理想です。

でも今は現状、僕がそこまで長生きできる可能性は低い、それが事実だと認識しています。不可能というわけではありませんが、確実にHIVに感染した事により、僕が100歳を超えて生存している可能性は低くなったのです。

そしてHIVが発覚した以上、生命保険は緩和型しか加入できません、仮にパートナーができ僕に万が一の事があっても相手に保険での安心を与える事は難しいです。保険会社にとってはHIV感染者の現状のデータから通常の保険で請負うことはリスクが大きすぎるのですから当たり前ですね。

そういったことは客観的に事実として認識していた方が人生設計は建てやすいと思うのです。

「ほぼ」この言葉に僕は疑問を感じてしまいます。事実や数値の方がしっくりくるのは性格でしょうか。

でも現時点でのリスクは把握していた方が知る事による安心感があるんですよね。


朝から暗い話のようになってしまいましたが、決して暗くなろうと言っているわけではありません。

このブログの闘病ジャンルには生存率で言えば一年後や半年後の生存率も僅か、その僅かに向かって闘病を続けていらっしゃる方もいます。

ただHIVは慢性疾患だ、普通と同じだという事はなく、大きなリスク、健常者とは違う事は認識しておくべきだと思っています。