彼女が魔女になった理由(イドへ至る森へ至るイド)の考察 | これだけで全て分かるSound horizonの考察

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こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

 

この曲も光と闇の童話と同様、曲の中でストーリーが飛び飛びになっています。

 

なので、「光と闇の童話」も一緒に参照すると、内容が追いやすくなります。

 

でもメインは、メルの母親・テレーゼの話です。

 

このアルバム全体のストーリーに関しては、

イドへ至る森へ至るイドの考察まとめ」を見てみてください。

 

それでは、この曲の歌詞とセリフを見ていきましょう。

(歌詞とセリフは、「Sound horizon歌詞集」(http://75.xmbs.jp/ca-12456-n2.php?guid=on&no=106479&view=1&page=0)より引用しています)

 

 

 

「なぜです、なぜこの子を侯伯家の世継ぎとして認めてくださらないのです!」
 

「その話なら終わったはずだ」
 

「妾腹(めかけばら)だから……いえ、この子の体が不自由だか…」
 

「くどいぞ!」
 

「ああ、これは全て……全部母が、
この子をそんな風に生んだこの母が悪いので…」 

 

「くどいと言っている!」

 

「ああああぁ……」

 

という男と女のセリフで始まりますが、これはルードヴィング家の主人と、その愛人のアンネリーゼの会話です。

 

二人の間に生まれた子供は体が不自由で、この子はルードヴィング家の跡継ぎにはしないということです。

 

 

 

続いて、

 

アンネリーゼ、あなたの気持は痛いほど分かる


それでも私は、あなたを、許さない

 

これはルードヴィング家の娘、テレーゼの言葉です。

 

アンネリーゼの気持ちが分かるというのは、おそらく自分も障害児の親だからでしょう。

 

テレーゼの子、メルも目が不自由だからです。

 

ただ、アンネリーゼの何を許さないかは全く不明です。

 

 

 

坊や(メル) 光を知らないアナタは


視力という その概念自体 解らなかった

坊や(メル) 背中に抱きつきアナタは

 

「おかあさん(ムッティ)。ひかり、あったかいね」と
 

無邪気に笑った

 

この歌詞から、メルは目が見えないことが分かります。

 

他の歌詞は、普通の親子の会話です。

 

 

 

嗚呼 ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい


アナタを産んだのは 私です 私です 罪深い《私》です……

 

これは、テレーゼが息子のメルに謝っている言葉です。

 

なぜ罪深いかというと、メルは自分の父親との子だからです。

(この後のセリフ参照)

 

その罪によって、テレーゼとメルはルードヴィング家を出ることになりました。

 

 

 

「くしゅん!」


「寒くない?メル」
 

「うん……」

母にして姉であり、断罪者にして贖罪者であった。

 

Therese von Ludowing(テレーゼ フォン ルードヴィング)の知られざる物語……。

 

「母にして姉であり」というセリフから、テレーゼはメルの母であり、メルの姉であることが分かります。

 

つまり、自分の父親との子だということです。

 

姉というのは、アンネリーゼの姉というのを指していることも考えられますが、

この部分でアンネリーゼのことを話すのは、つながりが薄く、不自然です。

 

なので、やはりメルは、テレーゼと、自分の父親の子だと考えられます。

 

そして自分の父親との子だというのは、どう考えても世間的には受け入れられないことです。

 

なので、テレーゼは断罪者なのでしょう。

 

そして、森の中で贖罪をしていきます。

 

 

 

森に移り住み 贖罪の日々を


薬草を集めて 煎じてみたり

神に祈っても 届きはしないし


罪を抱きしめて 祈れやしない

せめてあの子の為に 出来うる限りの全てを

 

遣りもしないで 唯 嘆いて等いられないわ

 

テレーゼはルードヴィング家を出て森へ移り住み、薬草を使って病を治すことで、贖罪します。

 

そして罪を抱きしめて 祈れやしないということから、罪を強く感じていることが分かります。

 

 

 

──傷を癒し、病を治し、


時には冬に傾きかけた赤子をも取り上げた、森に住む賢い女の噂は、
 

何刻しか千里を駈け廻り、皮肉な運命を導く事となる……。

 

テレーゼは賢女となり、医者になります。

冬に傾きかけた赤子とは、死にそうな赤子のことです。

 

(「冬に傾く」という表現は、第五の地平線、Romanで出てきます)

 

それを取り上げたというのは、時には死なせたということです。

 

皮肉な運命とは、この後エリーザベトを生き返らせたことで、魔女として認定され、

火あぶりにされることです。

 

 

 

其の夜 駆け込んで来たのは お忍びの候妃で


月の無い闇の中を 希望の灯りを信じ
 

髪を振り乱す 母を奔らせたのは 訳ありの候女で
 

抱きしめた腕の中で もう息をしていなかった

「近い内強く美人になるはずの子です!私の娘ですもの!
 

帝国中の殿方が放っておきませんわ!困りましたわ…ああ…」

その幼子を託して 妃は泣き崩れた……

「いえ!そんなことどうでも良いのです!
 

生きてさえ、生きてくれればぁ!」
 

「ゾフィ様!気を強くお持ちください
 

賢女殿を信じましょう!」

救われる命があれば、奪われる命がある。


それを因果応報と切り捨てても良いのだろうか……。

 

ここは、エリーザベトの母親、お忍びの侯妃ゾフィが、もう息をしていない幼少期のエリーザベトを連れて来ました。

 

家来のヴァルターも一緒です。

 

賢女はエリーザベトを生き返らせることができましたが、

この後、エリーザベトは死んだはずが生き返ったことで、世間から隔離されてしまいます。

 

その内容は、「この狭い鳥籠の中で」で話されています。

 

救われる命と奪われる命。

これは、エリーザベトの命は助かりましたが、

それによってゾフィーは身分を偽ることになり、ゾフィーは奪われた命だということでしょう。

(磔刑の聖女参照)

 

それでも幼いエリーザベトの命を助けたのは、因果応報なのか。

 

 

 

(Hörst du mich・・・→Hörst du mich, du stehent?)

(ホルスト ドゥ ミヒ ドゥ シュテーエント)
(そこにいる君、私の声が聞こえるか?)


dann kann mir du glauben....grab mich aus...!

(ダン カン ミア ドゥ グラオベン グラーブ ミヒ アウス)
(ならば私を信じて大丈夫…私を掘り出してくれ…!)

 

とても不思議な出来事によって 息子は光を手に入れたけど


それが果たして幸福なことだったのか 今となっては善く判らない……

 

これは、井戸の中にいたイドルフリート・エーレンベルクの声です。

 

メルは最初に井戸に落ちた時、この男の衝動(イド)によってメルは視力を得ます。

 

(メルはこの後詐欺師によって再び井戸に落とされ死にますが、詐欺師に落とされるのは2回目に井戸に落ちた時です)

 

この男は船乗りだということが分かっていて、過去、井戸に落ちて死にました。

(Märchen:硝子の棺で眠る姫君、生と死を別つ境界の古井戸より)

 

イドルフリート・エーレンベルクの頭文字のイド、井戸、衝動のイド、3つのイドが関わりを持たないはずはありません。

 

サンホラのライブ映像を見ても、この男とメルは関わりが強いことは明らかです。

 

 

 

「テューリンゲンの魔女だって、怖いね、兄ちゃん」


「ああ、いい子にしてないと……魔女に食べられちゃうぞ!」
 

「ひいっ!……もう!」
 

「あはは!」

 

一度は冬に抱かれた 愛しい可愛い私の坊や


生きて春の陽射しの中で 笑って欲しいと願った母の

 

「信仰を重んじれば恩情を!
 

異端には、業火をもって報いねばならん! さあ諸君!【魔女】へ鉄槌を!」
 

「鉄槌を!」

 

ここで、テレーゼは魔女だと認定されます。

 

「一度は冬に抱かれた」なので、メルは一度死んでいますが、村人はテレーゼが生き返らせたと思い込み、

そんなことができるのは魔女だと思い込みます。

 

そしてテレーゼは、火あぶりにされます。

 

 

 

想いも今や 唯 虚しく 束の間の陽光さえ


戯れに 奪われてしまった
 

観よ 嗚呼 この喜劇を ならば私は 世界を呪う本物の《魔女》に……

 

テレーゼが火あぶりにされるのは、メルが詐欺師に殺された後です。

 

そしてテレーゼは、本物の魔女になってやろうと決意します。

 

 

 

──そして、【第七の喜劇】は繰り返され続けるだろう……
(und die siebte Kömedie wird sich wiederholen)

(ウント ディー ズィープテ コメーディエ ヴィルト ズィッヒ ヴィーダーホーレン )

 

こうして物語は、第七の地平線に引き継がれていきます。

 

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!