人生を変える旅路② 鳶 職
鳶職って何をするのか…実は何も知らなかった。
とりあえず「肉体労働をしよう」ということしか はっきり決めていなかった。
ガテンを買ってみて、いろいろな職種があることを知った。土工、はつり工、解体工、型枠工、などなど。どれもあんまりピンとこなかった中、「鳶」という文字だけ何故か惹かれるものがあった。
とにかく電話して、面接にいってみることにした。
「○○組」なんていう文字を見ただけで、この世界に無知な自分にとっては、ちょっとおっかない世界に入る感じがした。
面接に行くと、そこの社長(組長とは呼ばないだけでも少しほっとする)は、値踏みをするように、私の身体つきを眺めた上で、履歴書を見て、「建設現場で働いた経験はないの?」と聞いた。
「建設現場は、兄が設備屋をしているので、バイトをさせてもらった経験は多少あります。自衛隊に4年いた経験があるので、体力的には自信があります」
(本当は、それ以降、あまり身体を使っていなかったので、自分の身体がどれだけ動くか、そんなに自信があったわけではないが、とにかく採用してもらう為に、元気に言ってみた。
すると、社長はこんなことを話してくれた。
「鳶職ってどんな仕事か知っているかい?
工事現場には、様々な職種の人が入り乱れて仕事をしているけど、どの業者よりも先に工事現場に乗り込み、仮囲い(工事現場の柵)を組む。
そして建物の骨となる鉄骨を建てるためのクレーンを組み、それで鉄骨を組んでいく。
また、命を落とす危険がある場所へも真っ先に乗り込み、他業者の為の足場も組む。
このように、常に鳶が工事を先行していくんだ。鳶がいないと工事が進まないわけだ。」
そう聞いて、これは、自分にとって必要な学びをする上でぴったりの仕事だと確信した。
建設現場にたとえてみるならば、自分は今まで設計屋さんのようなものだったと思う。机上で図面をひいて、ビルの設計図を描いただけで、ビルを建てた気分になっていただけなのかもしれない。
これからは、実際に現場に出て、どの業者よりも先に、危険を冒して足場を組んでいく、率先して自ら動くという行動が必要なんだ! そう思って鳶職を始めることを決めた。
<つづく>