二十数年前、
君はフランス・パリ市第16区にある私立病院で生まれた。
出産は、無痛分娩だったけど、
生まれるまで少々難儀したんだ。
フランス人の主治医曰く、
へその緒が首に絡まって、
回旋異常だと。
主治医は妻にもっと息めと言うが、
無痛分娩が仇となって、
妻はなかなか力が入らず、依然として君は出てこれない。
結局、主治医は鉗子で君の頭を挟んで、
引っ張り出して、漸く産まれてきた。
おかげで、君の顔には、鉗子の痕が赤くついていて、
ちょっと可哀そうだったなぁ。
また、フランスでは女子と分かるように、
産まれて直ぐに耳に穴を空けピアスすることから、
君もすぐにピアスがつけられたね。
その後、君はスクスクと育ち、
そんな君の成長を見守りながら、
君が大きくなったら、デートすることを秘かに楽しみにしていた。
しかしながら、私は君を厳しく育てたこと、
また、君は私の性格に似たのか、とにかくお互いに反発しあったね。
その結果、お互いの関係は良くなく、
あまり口を聞くということもなく、月日が流れていった。
そして、君は、とうとう母親になり、
育児に追われる日々が続いたね。
そんな君が、私の今年の誕生日に、
誕生祝として、二人でフレンチの食事をしようと言う。
ちょっと驚いたけど、とても嬉しかった。
何故なら、こういう日が来るのをずっと待っていたからね。
二十数年越しの君との初のデート。
君が選んでくれたフレンチ・レストラン、
私好みで、とても美味しかったよ。
最初は、君と何を話せばいいのか、少々戸惑ったけど、
美味しい料理が自然と会話を弾ませてくれた。
とても楽しい一時をありがとう。