私でなければならないこと
人生の中で、”私じゃなければならないこと” ”私にしかできないこと” ということがあります。
例えば、アスランの妻だったり、ヒカルの母だったりする私。
代わりはいません。
父と母の娘だったり、兄の妹だったり。
その代わりもいません。
その他に、”私でなければならないこと” ”私にしかできないこと” ということに直面する機会はそれほど多くないかもしれません。
例えば、仕事にしても、もちろん私にしかできないこともありますが、代わりをできる人がいるのも事実です。
どんな大きなミュージカルの主役にしても代役がいるように、何か物事に対して、代わりをできる人はいます。
絶対的に私じゃなくてはならないことというのは、少ないです。
それは誰でも同じだと思います。
大企業の社長にしたって、その代わりはいくらでもいるのですから。。
それでも、 ”私でなければならないこと” に直面することはあります。
私は今、その私でなければできないことに直面しています。
それは、オランダに住む友達の結婚式に出ることです。
もちろん、私が行っても、行かなくても、式は予定通り行われます。
そして、彼女は幸せになるでしょう。。
そして、その日は彼女にとって、とても幸せな一日になるでしょう。。
でも、私が行くのと、行かないのでは、彼女の一日に違いが出ることを、私は知っています。
南アフリカ人の友達です。
南アフリカ人の旦那さんと結婚して、オランダに引っ越してきました。
私がオランダに暮らし始めたのと、ほぼ同時期でした。
私がオランダ語を勉強するために、オランダ語学校にいったら、彼女は同じクラスでもう勉強を始めていました。
私たちはすぐ仲良くなりました。
年は、彼女のほうが下でしたが、アフリカーンス(彼女の母国語)とオランダ語はとてもよく似ていることがあって、言葉が一番よくわかる彼女がみんなの中心でした。
ポーランド人、タイ人、スペイン人、イタリア人、モロッコ人、いろんな国籍の人がいました。
私と彼女は全く違った人生や環境の中で生きてきたけれど、私たちはどこかよく似ていました。
彼女は私とアスランの結婚式の時に、私のウエディングドレスを作ってくれました。
クリスマス、お誕生会、ショッピング、ボート遊び。。。。いつも一緒でした。
彼女は悩み事をいう人ではなく、人の悩みを解決する人でした。
誰かが悩んでいる時には、いつも彼女はそこにいました。
そして、彼女にはたくさんの友達や知り合いがいました。
彼女に一度かかわったひとは、みんな彼女のことを好きになりました。
それは彼女の人間性だったり、面倒見のよさだったり、やさしさだったり。。。
それでいて、自分の意見をはっきり言える強さも持った人の上に、とてもきれいで背が高く、
内面、外面ともに、いうことない人というのは、彼女のような人のことを言うんだと思います。
その彼女が、ある時、大きな問題にぶち当たりました。
一緒にオランダにやってきた南アフリカ人の旦那さんと別れることになったのです。
それは彼女の大きな決断であり、試練でした。
その離婚がスムーズに成立するまでの道のりは、容易なものではなく、彼女は彼女の身を守るため、新しい人生を探すため、私やアスランとしばらく一緒に暮らしていました。
その頃、ヒカルはまだ生まれてなく、彼女には飼い犬のクナッキ~がいました。
姉妹のようだった私たちの関係は、家族に近いものになりました。
この大きな問題に直面した時に、
彼女の中には、私以外の友達の顔は浮かんでいませんでした。
私は、彼女が本当に苦しい時に、私のことを思い出してくれたことが、とてもうれしかったです。
私たちはたくさん話して、たくさん泣いて、本当の意味で大事な友達となりました。
お互いになくてはならない存在になったんだと思います。
そして多分私の中で、完璧だと思ってた彼女も、いろんな悩みをかかえて生きているんだっていうことを改めて知り、彼女がすごく身近になりました。
そして彼女もきっと、そういう性格だから、人を頼るということをしてこなかった人生の中で、
初めて人に頼ったのが、私やアスランで、それをきっかけに、自分の心の中にあることを話すという簡単なことの大事さをわかったんだと思います。
もともと友達だった私と彼女の関係に、距離がなくなった瞬間でした。
それからしばらくして、彼女は前向きに生きはじめて、恋に落ちました。
でも彼女はとまどっていました。
前の旦那さんとは彼女が13歳の時に出会ってから、ずっと一緒。
それ以来のはじめての恋でした。
私はその過程の中、ずっと一緒にいました。
私は、右も左もわからず、どこを歩いていいかもわからなかった彼女が、少しずつ自分の足で立ち、幸せになっていくのが、本当に本当にうれしかったのを覚えています。
そしてヒカルが生まれて、しばらくして、素敵なニュースが飛び込んできました。
彼女が妊娠したのです。
彼女が一番苦しかった時を一緒に過ごした私にとって、それは本当にすばらしいニュースでした。
それから彼女と恋人の関係は確実なものになり、
二人は一緒に暮らし始めました。
それから彼女は子供を産みました。
バレンタインデーに生まれたかわいい男の子。
もし彼女が恋人と出会わなかったり、子供が生まれたりしなければ、私とアスランは、彼女のためだけにまだオランダにいたかもしれません。
彼女が新しい人生を確実に歩き始めて、安定した幸せが手に入ったことは、私達にとって、大きな安心でもありました。
それから順調に時はたち、来月半ばに、二人は結婚式をあげることになったのです。
私たちはオーストラリアにいることもあり、7月の結婚式に出席するのは困難です。
今アスランがヨーロッパにいるのは、ずいぶん前から決まっていた出張だったので、彼女たちに、6月の結婚式なら、参加も可能だけど、7月になると厳しいというのは伝えていました。
アスランはもう休暇が少なすぎて、7月の出席は無理です。
なので、もし行くとしたら、私とヒカルのみの出席になります。
彼女たちに結婚の証人になれるのは、私しかいないと言われました。
人生の中で、とても濃く、深く生きている瞬間があります。
苦しかったり、乗り越えたり、泣いたり、笑ったり、前を向いたり、。。。。いろんな気持ちが交錯して、それでも強く生きていこうとする瞬間があります。
私たちは多分、その時間を共有しました。
私が結婚式に行かなくても、前にも書いたように、彼女はとても幸せになるでしょう。
たくさんの愛情が彼らをとりまいて、最高の一日になるでしょう。
でも、もしそこに私がいたら、多分その一日が、きっと完璧なものになると思うのです。
それはうぬぼれではなく、確信です。
でも、この結婚式に出席するために、
かかる飛行機代は、私とヒカルをあわせて、60万近くかかります。
日帰りというわけにはいかないし、オランダにしばらく滞在すれば、その費用もかかります。
もちろんお金じゃないのはわかっています。
そしてもしこの結婚式にいかなければ、彼女の大事な一日を一緒に過ごせないだけではなく、私自身の一生の後悔になるでしょう。
それもわかっています。
アスランは、”どうしても行きたければ、行けばいい”といいます。
彼は、私の決断にNOとは言わないでしょう。
でも、今の私たちは、オランダでまだ売れていないお家の支払いがあり、それプラス、オーストラリアのお家の支払い、そして生活費があります。
それプラス、私はもう少ししたら、学校に通おうと思っていて、今日、その試験の結果が出て、合格していました。
学校は来月から始まります。
半年間のコースです。(週3回)
2月から同じコースに行くこともできますが、1年かかります。(週1回)
でも2月からは、ヒカルの幼稚園が始まって、学校に通うのが難しくなります。
そして1年週1回通うのは、半年間のコースよりもタフです。
私が仕事につくのも、その分遅れてしまいます。
でも不可能ではありません。
そう、お金にしても、学校にしても、別のチョイスがあります。
結婚式に参加するのは、無理をすれば、無理ではないのです。
そして結婚式はたった一回なのです。
そして、人生の中で、”私がいなければ。””私ではければならない”ことに、
直面することが、どれだけあるでしょう?
彼女の結婚式は、私の人生の中に、きっとすばらしい記憶として残っていくのは出席する前からわかっています。
でもその一週間のためにする無理は、かなりの負担です。
でもその負担を超えても、彼女の大事な一日を一緒に過ごしたい。その時間を共有したいと思う私がいます。
数年前に、一度同じ様な状況で、大事な友達の結婚式に参加できませんでした。
それは大きな後悔として今でも私の心の中に残っています。
同じ後悔はしたくありません。
でも、自分自身の負担、ヒカルへの負担、アスランへの負担。。。
それを越える、喜びや幸せな時間の共有。。。
そして、そのほかの友達に会えるというメリットもあります。
心の中が揺れています。
答えはでません。
時間だけが過ぎていきます。
人生はどれだけ先の計画が必要なのでしょう?
もし私の人生が、来月終わるなら、間違いなく彼女の結婚式にでるでしょう。
将来を見るから、ヒカルのルーティーンをこわせない。
将来を考えるから、学校を遅らせたくない。
将来を見据えるから、今金銭的に厳しい。
もっと遠い将来を見れば、やっぱりこの結婚式に出席したい。
”私じゃなければダメ”と言ってくれる人に、人生のなかで、どれだけ出会えるでしょう?
私は、彼女に何も言わずにオランダにこっそりいって、
結婚式の当日に、”ティアニ!!”といって驚かせたい。。。。
そのときの彼女の顔が目に浮かんできます。
それは夢になってしまうのかな?
それとも現実になるのかな?
答えはまだ出ません。