日台合作映画『ホテルアイリス』(2021年) | 今天有空嗎?

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日中合作『黒四角』の奥原浩志監督が、小川洋子による禁断のエロス小説を映画化!しかも日台合作!!・・・ということで、昨年のOAFF上映時から一般公開を待ちに待っていた『ホテルアイリス』が、先週末より公開されました。

公開に先立ち試写で見せていただく機会がありましたので、先日、台湾映画同好会FBにて紹介させていただきました。
 

【今週末公開!】 ------------------------ 日台合作映画『ホテルアイリス』 2月18日(金)よりロードショー 新宿ピカデリー|ヒューマントラストシネマ渋谷|シネ・リーブル池袋...

台湾映画同好会(台灣電影同好會)さんの投稿 2022年2月16日水曜日

 

【今週末公開!】

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日台合作映画『ホテルアイリス』

2月18日(金)よりロードショー

新宿ピカデリー|ヒューマントラストシネマ渋谷|シネ・リーブル池袋 他

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 日中合作映画『黒四角』(12)の奥原浩志監督が芥川賞作家の小川洋子による小説を映像化した日台合作映画『ホテルアイリス』が、いよいよ今週末公開!

公式サイト➡ http://hoteliris.reallylikefilms.com/

 

 海沿いの寂れた町にひっそりと建つ「ホテルアイリス」。母親が経営するその旅館を手伝う娘のマリは、ある嵐の夜、上階で悲鳴を上げあられもない姿で逃げまわる女と、彼女に罵声を浴びせ暴力を振るう中年男を目撃する。マリはやがてその男が海岸から小舟で渡ったところにある離れ小島に住んでいること、ロシア文学の翻訳家であること、さらに数年前に起きた殺人事件の真犯人ではないかと噂されていることを知る。旅館での出来事にショックを受けつつも、なぜか男の振る舞いに強く惹かれるマリ。娘に過干渉で身勝手な母親のもとで、息の詰まるような日々を送るマリだったが、引き寄せられるように男と言葉を交わすようになり、やがて男の導きによりふたりだけの禁断の世界へと溺れていくが…。

 

 

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 台湾・金門島を「どこかの架空の島」に見立てた本作。実在する古い民宿や迷路のような小路が続く老街、寂寥とした海岸風景や干潮時に現れる砂州により歩いて渡ることのできる島を物語の舞台にすることで、原作小説に漂う何とも言えない異国情緒、つまり「どこでもないどこか」な雰囲気が見事なまでにスクリーンに映し出される。さらに、日本語と中国語を自由に行き来することで、登場人物たちは場所や国籍からも解放されているような印象を受けた。この作品のために用意された世界観。死と生(性)、あるいは日常と非日常が境なく入り組んだかのような、心象風景ともとれるシーンとも相まって、原作小説がもつ、読み手に想像の余地を与え様々に解釈をゆだねる、ふんだんな余白をも存分に感じ取ることができるだろう。

 

 翻訳家を演じるのは永瀬正敏。老人という原作の設定よりずいぶん若く感じられる。そしてヒロイン・マリ役は本作が映画初出演にして主役となる台湾のモデル・陸夏(ルシア)。彼女が大胆かつ繊細に演じるマリは、原作で描かれる”少女”よりは、もうちょっとだけ大人っぽい雰囲気だ。日常と非日常の境をつなぐキーパーソンでもある売店の男(船頭)を、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督作品の主演俳優・李康生(リー・カンション)が存在感たっぷりに演じる。そして多くは語られないが、マリに大きな影を落とす亡父を馬志翔(マー・ジーシャン)(『KANO』『セデック・バレ』ほか)が演じているのも、台湾映画ファンにとって嬉しい見どころだろう。(ちなみに旅館で働くおばさんを演じるベテラン歌手で女優の鮑正芳(パオ・ジョンファン)(『台北暮色』『無聲』)は、70年代後半にマーガレット・ポーの名で日本でアイドルデビューを果たしているそうだ)。

 

 エンドロールにも注目したい。スタッフの多くを台湾人が占める本作。撮影監督の余靜萍(ユー・ジンピン)は、林書宇(トム・リン)監督作品(『九月に振る風』『百日告別』)や香港の曾國祥(デレク・ツァン)監督作品(『ソールメイト/七月と安生』『少年の君』)など台湾内外作品の撮影で知られる。音響のチョウ・チェン(周震)は2000年ころから様々な話題作で活躍する台湾のサウンドデザイナー。ミディー・ジー監督の『ニーナ・ウー』で金馬奨最優秀音響効果賞を受賞している。ヒロインを演じた陸夏(ルシア)の演技指導には台湾で活躍する日本人俳優の蔭山征彦がクレジットされる。奥原監督と『台北セブン・ラブ』の陳宏一(チェン・ホンイー)監督とは長年の知り合いとのことで、本作のプロデューサーと編集に名を連ねている。

 

『ホテルアイリス』

(2021年|日本・台湾合作|100分|日本語・中国語)

監督・脚本:奥原浩志

出演:永瀬正敏、陸夏(ルシア)、菜葉菜、寛一郎、馬志翔(マー・ジーシャン)、鮑正芳(パオ・ジョンファン)、大島葉子、李康生(リー・カンション)

製作:北京谷天傳媒有限公司/長谷工作室/紅色製作有限公司

プロデューサー:李鋭 / 奥原浩志 / 陳宏一(チェン・ホンイー) / 浅野博貴 / 山口誠 / 小畑真登

攝影:余靜萍(ユー・ジンピン)

音響:周震(チョウ・チェン)

美術:金勝浩一

衣装・メイク:KUMI/花井麻衣

音楽:スワペック・コバレフスキ

編集:陳宏一 / 奥原浩志

原作:小川洋子(「ホテル・アイリス」幻冬舎文庫)

配給:リアリーライクフィルムズ+長谷工作室

©HASE STUDIO

 

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奥原監督『黒四角』についてはこちらに感想をアップしてます。

『黒四角』を支配する独特な時間の流れや雰囲気といったものは、今回の『ホテルアイリス』にも通じるものがあるような気がします。