ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の特殊上映、未体験ゾーンの映画たち2020にて、ビビアン・スー主演の台湾ホラー映画『人面魚』を鑑賞。まずは予告編。
2007年台湾。山の中で数人の中年男性が釣りを楽しんでいた。釣った魚をその場で焼いて食べた洪が、一家惨殺事件を起こす。一方、中学生の家豪は、親友の胖迪とともに廟を訪れ、ビデオコンテストに応募するための映像を撮っていた。賞品の海外旅行を獲得して、別居中の夫との離婚問題で精神的に追い詰められている母・雅惠を慰めようとしていたのだ。廟では何かに憑りつかれた洪に対し、霊媒師の志成が除霊を行っていた。廟での撮影を終えた家豪は、帰り道で一匹の小さな魚を拾い、自宅の水槽で飼い始めるが、奇妙な出来事起き始め…というストーリー。
離婚問題を抱えた母・雅惠をビビアン・スーが演じていたのですが、やつれ切ってもなお美しい!何かに憑りつかれ、どんどん豹変していく中年女性を怪演していました。これだけで、ブラックビスケッツ時代からのビビアン・スーファンとしては一見の価値アリです。
タイトルにある「人面魚」ですが・・・はて、どこかに人面魚なんか出てきたっけ?
「人面魚」=人間の顔のような模様の錦鯉を思い描いていて、何となくシーマンみたいなのがそのうちでてくのか?と思っていたのですが、さにあらず。この「人面魚」、後で調べてわかったのですが、実は台湾の有名な都市伝説の一つだそう。諸説あるそうですが、おおよそのストーリーは以下のとおり。
あるグループが山の中に釣りに訪れる→その中の一人が大きなテラピアを釣り上げる→皆でバーベキューにして食べる→どこからともなく老婆の声で「その魚は美味いか?」というささやき声が聞こえる→数人がその場で嘔吐、釣り上げた本人は原因不明の死を遂げる→あとから焼いた魚の写真を見てみたら、箸でほじったあたりに老婆の顔が浮かび上がっていた・・・
つまり、映画冒頭の釣りのシーンが、この都市伝説だったようでした。
さて、霊媒師の志成を演じたのが、鄭人碩。『酔・生夢死』等の濃いキャラクターばかりを見ていたので、なんというかこざっぱりしている鄭人碩の姿に最初は戸惑ってしまったのですが(なんだかしっくりこない)、見慣れてくると、なかなかいい感じでした。この霊媒師、「虎爺」を祭る廟の道士なのだと思うのですが、「虎爺」は中華圏の民間信仰のひとつで、山の神なのだそう。風水の話がでてきたりと、なかなか興味深いものがありました。
『紅衣小女孩』シリーズは見ていなかったのですが、本作単体でも十分楽しめました。
本作はホラーですが、ファンタジー要素も多い。
さらに親子愛が描かれているのですが、描き方にそれほど深みがないので、おそらく大人が見て楽しむというよりは、家豪と同年代くらい~の10・20代の若い子たち向けなのかなあという気もしました。
最後の最後、エンドクレジットで、前2作との関連が少しだけ描かれてました。さらに、霊媒師の志成の父・阿龍師と、息子・俊凱が『紅衣小女孩2』に重要人物として登場するようで、この『人面魚』は『紅衣小女孩』1と2の前日談にあたるようでした。そんなの見せられたら、『紅衣小女孩』1と2も見たくなってしまう!