『只要我長大』(2016年台湾) | 今天有空嗎?

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9月に台湾で買ったDVDのうち、今日は2016年の原住民子供映画『只要我長大』を鑑賞。今更ながらですが。

 

まずは予告編。

 

 

山間部に暮らす、いたずら盛りなタイヤル族の男の子たちの物語。

瓦旦は父母を亡くし、祖母と暮らしているが、ある日高校をドロップアウトした兄が出戻ってくる。

晨皓は父母が離婚し、父と二人暮らし。母親が時折台北から服を送ってきてくれるのがうれしくて仕方ない。

父母と妹たちと暮らす林山だが、売れないミュージシャンの父は酒を飲み始めると手が付けられなくなる。

それぞれの家庭に何かしらの問題を抱え、貧しい暮らしを送っているが、農家の手伝いをしたり、狩猟の成果を売って小遣い稼ぎをしたりと、快活な日々を送っている。そんな子供たちにとって、ひとつの心のよりどころとなっているのが、拉娃先生が教会で開いている放課後教室だ。拉娃先生は歌手を目指していたが、事故で下半身不随となってしまい、村に戻って子供たちの面倒を見ているのだった。

ある時、学校の宿泊行事で台北へ。瓦旦、晨皓、林山の3人にはそれぞれに台北で果たしたいことがあったのだが…。

 

タイヤル族出身の女性監督による子ども映画。子供たちが経験する、さまざまなエピソードが盛り込まれていて胸を打つ。ひとつひとつは決してドラマチックというわけではないし、「よかったね」と胸をなでおろす結末ばかりでは決してなかった。山間部に暮らす原住民の置かれた状況を描いていて、いろいろと切ない。それでも活き活きとした子供たちの姿や、素晴らしい自然、周りの大人たちとのかかわりあいの描き方が素晴らしく、もっと早く見ればよかった、と思った。(台湾での公開時期は、ちょうど自分が『太陽的孩子(太陽の子)』の日本上映に関わっていた頃だ。)

 

2016年の台北映画祭で百萬元大賞、最優秀長編作品賞、最優秀監督賞、最優秀新人賞(子供たち!)、最優秀編集賞を獲得している。この年はちょうど蔡英文さんが総統に就任し、原住民を取り巻くあらゆる問題について社会が動き出した時期で、話題的にタイムリーだったということもあるのかもしれないけど、それを差し引いてもやはり台湾の観客は、この作品に心打たれただろうなあ。

 

ちなみに、監督にとって本作は2本目の長編作品で、1本目もやはり原住民がテーマの作品『不一様的月光』。

 

日本統治時代の「サヨンの鐘」がストーリーのカギになっているようで、こちらも面白そう。機会があったら見てみたい。