小説『流』を読みながら、いろんな映画を思い出した | 今天有空嗎?

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ようやく『流』を読了。

ブックレビューやら何やらを読んで、なんとなくとっつきにくそうだと思い読まずにいたのだけれど、ふと思い立って読み始めたら、まあこれがどうして、こんなに面白い小説をよくもここまで読まずにいたもんだ、というくらい・・・一気に読み終えてしまった。

 

 

1970年代頃の台湾が舞台なのだけれど、小説の中に登場する台湾は想像していた以上に混沌としていて興味をひかれた。頭の片隅にある国共内戦だったり、台湾の戦後史だったりについてを思い出しつつ、読み進めた。

 

読みながら、思い浮かんだ映画が複数。

主人公たちを取り巻く環境として、エドワード・ヤン監督の『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991年)、そしてニウ・チェンザー監督の『モンガに散る』(2010年)。あとはホウ・シャオシェンの『童年往時 時の流れ』(1985年)も。『牯』に描かれる、喧嘩に明け暮れる外省人少年グループの日常は、そのまま時代背景ごとこの小説に重なるのだと思う。そして主人公たちの生活圏である萬華~迪化街の猥雑な様は、そのまま『モンガ』の世界観だろう。逆に兄弟分の絆の強さについては、小説から学ぶところが大きく、今『モンガ』を見たら、悲劇に突っ走る少年たちの生き様がより味わい深く感じられそうだ。

 

物語のキーパーソンである、主人公のおじいさんやその兄弟分の、社会的背景や立ち位置として、ドキュメンタリー映画の『河北台北』(2015年)と『老兵挽歌~異郷に生きる~』(2016年)。この二作品は本当に見ておいてよかった、というくらい、小説を読み進める上で参考になった。国共内戦の凄惨さ、政治の大きなうねりに巻き込まれた市井の人たちの悲劇やしたたかさなんかは、『河北』に登場するお父さんの半生を思い出させてくれたし、老兵たちの台湾での日々は、『老兵』に登場する人々を思い出した。

 

実は『流』の直前に、同じ東山彰良さんの本をもう一冊読了していたりする。

こちらは現代の大学生の恋愛模様が描かれたラブコメ短編集。
ニヤニヤしながらあっという間に読み終えてしまった。こちらもおススメ。