先日職場で、
「lotさんってさぁ……」
「何ですか?」
「結婚してるの?」
「独身ですけど?」
「彼女は?」
「いたら週末飲み会の参加用紙、毎回一番に出すと思います?」
「よし!」
「?」
「いや、事務の人たちと賭けてたんだよね。相手がいるか」
「……勝ったんですね」
「いるワケ無いもん♪」
なんて、間違いなく名誉毀損……というか、夜道に金属バットで殴り倒しても情状酌量の余地くらいは認めてもらえるんじゃないかと思うような心温まる会話を繰り広げ、
「ど~せ、男性からも女性からもアンパイに見られますから」
と、タマには反論とまではいかないまでも少しは言い返してやろうと発言したら、
「永遠の親友だよ、うんうん♪」
笑顔で切り返して去っていったあの人とは、死んでも職場の同僚以上の人間関係は築くまいと堅く心に誓ったlotです、ごきげんよう。
世の中には、昔からよく言われてきた言葉というものが結構ありますが、その一つに、
「夫婦ゲンカは犬も食わない」
なんて言葉があります。
実家の犬も、両親がケンカしていると妹のところに避難しているくらいですし、昔の人はよく言ったものです。
そんな夫婦ゲンカですが、犬も逃げ出すほどの不味さにもかかわらず、はた迷惑なことにそれを自分たち以外のところに飛び火させるという困った方もいます。やられる方は、事前予告なしに領海内にテ○ドン撃ち込まれるようなもので、直撃しようと外れようと関係なく、察知したときの恐怖というのは結構なものがあります。
「もしもし?」
「もしもし、の前に、寝てる人間起こしたことに対する一言が先だと思うんですけど?」
「あとでな」
少しはムッとした声で言った僕の言葉に、さらにムッとしそうな返事を返してくれたのは、初めて入った会社で同期だったアラタ君。どうしてこう、僕の周りの人はいろんな意味で配慮に欠ける人が多いんでしょう?
「そっちにアスカ行ってないか?」
アラタ君の奥さん、アスカちゃん。当時結婚三年目でしたが、同棲時代からとにかく衝突の多い夫婦でした。ケンカするほど仲がいい、とも言いますが、そのたびにかなりの高確率でどちらかが家を出てしまうのがさらに困りものです。
でもって……
「ZZZzzz……」
かなりの高確率で行き先が僕の家だというのが、輪をかけて困りものです……![]()
「わかってるんだったら、早く連れて帰ってくださいよ……」
空いている部屋で眠りこけているアスカちゃんを横目に見つつ、携帯片手にベランダで一服(喫煙者の一人暮らしなのに、我が家は室内禁煙です)。
~2時間ほど前~
(ヤクザ はヤクザ でいいんだけど、時代劇 ってのもこれはこれでなかなか……)
なんて思いつつ祇園の町を走り回っていた夜。
ピンポ~ン♪
日中はウンともスンとも言わないくせに、タマに鳴るときは決まって非常識な時間……そんなインターホンにちょっと理不尽なものを感じつつ、でもインターホンは悪くはないわけで……
「ごめんね、遅くに……」
悪いのはカメラに写っている人の方です。そろそろ日付も変わろうかという時間に、何を考えているのやら![]()
「こんな時間に外をウロついていても危ないし、泊めるのは構いませんけど……」
「ごめんね……」
謝ればいいというものではないと思います![]()
「……で? なんで揉めたんです?」
「元カノのこと……」
「はぁ?」
元カノ、って……結婚三年目で、同棲期間も含めたら四年半だというのに……
「そんなの、今さら……」
「だよね……」
? 何でしょう? 結構冷静ですね。
「あたしもそう思う」
?? それで、どうしてケンカになるんでしょう?
「連絡取り合ってたとか?」
「そういうわけじゃないけど……」
??? ますますワケがわかりません。
「あの……何で、それでケンカになるんです?」
「写真……」
写真?
「元カノとの……Hなヤツ……」
![]()
![]()
危険です! 危険な展開です!!
「それはまあ……確かにショックですね」
一応、冷静に答えてはいるものの、脳内はパニック寸前です!![]()
「そうだよね……あたしもショックだったよ」
「ええ」
「あんなの残ってて、見られちゃうなんてさぁ……」
見ら……れ、ちゃう?
「お酒が入っていたせいもあるけどさぁ……あんなの撮らなければ良かったよ」
撮らなければ……
……よか…った?
「…元カノ、なんですよね?」
「そう」
「その……しちゃってるんですよね?」
「そう」
「アラタ君と?」
「あたしと」
……え?
「あの、元カノって……」
「だから、あたしの」
え?
「はああぁぁぁっ!?」
めったなことでは驚かないし、むしろ物事には冷静に対処できる方だと思いますが……
「やっぱ驚くよね、普通……」
いや、これはさすがに驚かない方がどうかしてます……![]()
「当然、アラタ君は、その……そういう人だとは知らなかったわけですよね?」
「私だって隠すよ」
でしょうね。僕もあなたが結婚する前からの友人付き合いですけど、そんな素振りは微塵も感じませんでしたから。
「だから、ショックだったんじゃないですか? こう言っては悪いけど、やっぱり理解されにくいことだろうし……」
「だからって、
『そんなヤツだったのかよ!』
とか言われると……やっぱキツイよ。自分勝手だけど、あれはどうかと思う」
僕からしてみれば、そんなことでここまで来ることのほうが、どうかと思います……![]()
「やっぱり、イヤなのかな……気持ち悪い、とか思う?」
「理解されにくいことだとは思いますけど、過去がどうあれ今は結婚もしてるわけだし……」
「うん……別に、旦那のこと拒否もしてないよ。好きで抱かれてもいるし……」
「その辺がわかっているなら、今は単にパニックになっているだけなんじゃ?」
「そうかな?」
「まあ、アラタ君は男だし……恋愛感情的にはともかく、事実として他の男と何かあったワケじゃないし……」
「そんなのあり得ないわよ」
そうでしょうそうでしょう。
「私が関係持った男、旦那だけだもん」
……はい?
「だけ?」
「旦那に会うまで、肉体関係持つまで付き合ってたの女の子だけだよ?」
サラッとスゴイこと言いますね、あなた……
……その後、とにかくアラタ君が落ち着いてから改めて話してみればいいのではないかと言い聞かせ、時間も遅かったので来客用の部屋で休んでもらっていました。
さて、時間を元に戻しましょう。
「別に浮気していたわけでもないし、過去のことだし……誰だって相手が知らない一面の一つくらい持ってはいますよ」
……まあ、その一言で済ませるには大きすぎることだとは思いますし、同じ男として妻のそういう性癖を知ったアラタ君のショックは計りしれませんが![]()
「……かもな」
少し時間をかけて話したので、アラタ君もだいぶ落ち着いてきた様子。結局、車で迎えに来るということになって待っていたのですが、帰り際……
「ごめんね、遅くに迷惑かけちゃって……」
「いいですよ、丸く収まったんだし」
(そう思ってるなら、これで最後にしてくださいね……)
「今度、飯でも奢るよ」
そんな会話がありました。僕からすれば友人同士が結婚して夫婦になったわけだし、ケンカ無しとは言わないけど、仲良くいてくれればいいです。
でも、そう言ってくれたのなら……
回る中華か、回らないお寿司くらいは要求してもバチは当たりませんよね?![]()
