貧血・鉄欠乏症の女性が多すぎる!〜フェリチン基準値の罠〜 | まぶたを治す道 〜眼瞼下垂はあとかたも無くすぐ治る〜

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瞼の手術治療に関するブログ
現状治らない疾患の治療法発見に興味があります。その為には古い慣習や常識にはとらわれません。未来の医療の構想のようなものが混じっております。読者に何かをもたらすことができればと思います。

くどくど長くなってしまったので先に言いたい要点を書いておきます。

●生理のある年代の女性に鉄欠乏状態の人が多い。これが慢性的なだるさ頭痛、不安発作などの真の原因であるケースがある。
●体内に貯蔵された鉄の多寡は血液検査でフェリチンという項目をみるべき。(血清鉄よりも重視!)
●フェリチンの正常値の下限がやたら低く設定されているので、異常低値を認識しづらくなっている(医師患者ともに)
●鉄分の体内での役割多岐にわたり、鉄欠乏の悪影響は貧血だけではない。よって貧血になってないからフェリチン異常低値でもOKとはならない。

私の勤める医療機関とはあまりに科目が違う話なので、書く事がややはばかられますが。滝汗
眼瞼の手術を行う前に(全員に対してではないですが)一般的な血液検査を行っております。その際に病気が見つかる事があるのですが、鉄欠乏性貧血または貧血の伴わない鉄欠乏症が見つかる事がこれまで考えていた以上に多いです。ポーンポーンポーン

眼瞼疾患の外来を受診される患者さんの女性比率が圧倒的に多い事も、女性に頻度が高い疾患が見つかる理由でしょう。

 

貧血で起きる症状について、他の論文から引用して列挙します。

"初期症状は倦怠感や易疲労感で,進行すると動悸,息切れ,めまい,頭痛,下肢の浮腫,間歇性跛行,狭心症発作などが現れる."

"口角炎も生じやすくなる.鉄欠乏性貧血ではさじ状爪"

"頭痛,めまい,耳鳴り,意識消失,集中力の 欠如,傾眠,不穏や筋力低下は重篤な貧血に共通して生じる."

"食欲不振,上腹部の不快感,下痢や便秘を訴える例も多く"

〔成田美和子:貧血の分類と診断の進め方.日本内科学会誌 104:1375~1382,2015〕より引用

症状が多岐にわたりますが、ほとんどは致死的なものではなく、長期に漫然と放置されている可能性が高いです。また、貧血や鉄欠乏症は、長期に続くと様々な症状を自覚しにくくなるようです。悪い意味で慣れてしまって、これくらいのコンディションゲッソリ自分にとっては普通なのだと思ってしまいガーン、異常な体調の悪さなのだとは認識しない感覚になります。

こういう鉄欠乏状態の方に「ご自分でお好きな内科を受診なさってくださいね」と伝えて内科受診してもらっても、もっとも重要な(貯蔵鉄量を反映する)フェリチン値を基準に治療が行われず、なんら症状改善ないまま投薬終了とされてしまう場合が多いです。ショボーン

なのでフェリチン値を重視して鉄分補給をしてくれるような内科を県内ではいくつか知っているので、そちらをお勧めしています。そちらへ行かれたかたは頭痛ふらつきが無くなったり爆  笑、鉄分低下の原因が判明したりと改善していく様子を当方へも伝えてくださいます。

そもそもフェリチンを基準として正常か異常かを判定する際には、どでかい壁が存在します。検査会社が設定した正常範囲が、低めにズレているためかなりの低値でも「基準値内」に(見かけ上)入ってしまうのです。ゲローゲローゲロー

それを知らない医師が検査結果を見ても「ほらね、フェリチンは正常範囲内だよウインク♪」となってしまいます。

そのあたりの事、私がうすうす感じていた違和感は
一般臨床医が診るおもな貧血 潜在性鉄欠乏症の診断と治療(解説/特集)
岡田 定(聖路加国際病院 人間ドック科・血液内科) .診断と治療 107巻5号 Page569-571(2019.05)

の論文によくまとまっており、これさえ読んでいただければ何も私が書く必要無いです。しかし入手できないかたも多いと思いますので、上記文献を参考に書かせていただきます。上記論文では鉄欠乏性貧血は

"月経のある女性では約2割といわれている"
そうで、そして貧血出現にまで至らない潜在性鉄欠乏症さらにその2倍居ると見込まれるそうです。ガーンそれは多いわけですよ。ウチの術前検査でもしばしば見つかるのもうなづけます。

岡田医師の論文中にも触れられていますが、生命と鉄に関する研究に特化した日本鉄バイオサイエンス学会という学会があり、そこが無料公開している診療指針p11(https://jbis.bio/all/pdf/tetu-ketubou.pdf)によれば

 "・ 血清フェリチンの正常域は,およそ25~250 ng/mlである."
 "・ 血清フェリチン12 ng/ml未満は鉄欠乏で,鉄が枯渇している状態.鉄欠乏性貧血あるいは貧血のない鉄欠乏であり,治療または予防対策が必要となる."(p11)
"鉄欠乏は生体貯蔵鉄が減少または枯渇した状態で,「貧血のない鉄欠乏」と「鉄欠乏性貧血」に大別されます. 一般的に貯蔵鉄の指標として血清フェリチンの測定が有用で,その値が12 ng/ml以下では間違いなく鉄欠乏状態にあります."(p65)

と明記され、12ng/mlを一応の境界値とされているのです

 

こちらの論文においても日本鉄バイオサイエンス学会の基準値を引用し、12ng/mLを基準とされており、なお

"鉄欠乏状態が続くと,

まず貯蔵鉄が減少し,

次に血清鉄

最終的にヘモグロビン鉄が減少し貧血が明らかとなる.

従って,貯蔵鉄量の指標である血清フェリチン値はもっとも鋭敏な鉄欠乏のマーカーであり,血清フェリチン値が低下している場合は鉄欠乏状態を示している."

(張替秀郎:貧血の鑑別診断と専門医へ紹介すべき貧血 日本内科学会雑誌101巻7号 p.1913-1918より引用)

 

という記載もあり、鉄欠乏には三段階あり、もっとも最初に減るのは貯蔵鉄である事が書かれています。その順序で言えば早期発見(あるいは貧血の無い鉄欠乏症の発見)のためには、貯蔵鉄の、つまり血清フェリチン値の減少があるかどうかをみなければわかりません。

 

それを知った患者さんからの主張によって、ようやくフェリチン値測定にこぎつけたとしても、メジャーな検査会社での女性の血清フェリチン値の基準値は
SRL 3.6~ (ng/mL)
BML 5.0~ (ng/mL)
LSIメディエンス 4.0~ (ng/mL)

と、25どころか12にも満たないような低値ガーンであっても低値↓とは表示しないため「フェリチン 8ng/mL正常範囲内じゃん!鉄に関する項目は大丈夫だね♪ウインクウインクウチじゃ他の患者さんでも10ng/mLくらいの人よく居るし♪」という誤解をとくのに苦労します。基準値作成の際に症状無自覚の鉄欠乏状態の方が混じっていたのではないかと思われます。

もし、このブログにいらした医師のかたで「あんたは貧血については素人でしょうが。内科が正常と言ったら正常なんだ」というご指摘がありましたら、全く返す言葉もありませんが、患者さんたちが自ら得る情報は、その間にも進んでいくでしょう。上記の概念はこれから徐々に広まっていく疾患概念なので、まだご存知ないドクターがおられるのも仕方ないです。


長くなってしまいました。まぶたの治療の話で無いのが残念ですが、一部の(いや数百万人の単位でおられるお悩みの)方々にとっては、地味にインパクトのあるエントリが書けたような気がします。

 

※鉄に関するサプリは市販もされていますが、鉄欠乏でない人が飲むのは無益であり副作用のリスクもあります。何らかの症状があって、ご自分の症状に鉄欠乏症が似ていると思われた場合は、まず先にフェリチン値の測定を医療機関で受けてから鉄分補給を検討されてください。

医療機関でフェリチンを測定し、結果が低値であり、そしてなおかつ鉄分補給の治療を始めるにようやく至ったとしても、それですぐ症状がよくなってめでたしめでたしとは、ならないかもしれません。なぜなら鉄分を飲んでも鉄が吸収・運搬・貯蔵されないような病態もあるからです。その時に原因が何か、どういった可能性と対処があるのかは、より専門性の高い医師にご相談下さい

 

参考文献

1) 一般臨床医が診るおもな貧血 潜在性鉄欠乏症の診断と治療(解説/特集)
岡田 定(聖路加国際病院 人間ドック科・血液内科):診断と治療 107巻5号 Page569-571(2019.05)

2) 貧血のない鉄欠乏を伴うパニック障害が鉄剤補充のみで改善した1例
今村 幸:総合病院国保旭中央病院神経精神科 精神医学 60巻9号 Page1037-1040(2018.09)

3) TVで見た症状と「同じ」です (デイジークリニック)

武元 良整 鹿児島医報(鹿児島市医師会) 657号 (2016.11)

低フェリチン患者のうち貧血のない者・ある者の割合を実測した報告(ページ最下部)