「お伽草子」:太宰治の意地悪なおとぎ話 | lideli-rev

lideli-rev

ライデリの制作チームが、マニアックなことをつらつら書いていきます。

お伽草紙 (新潮文庫)/太宰 治
¥540
Amazon.co.jp



瘤取りじいさん、浦島太郎、カチカチ山など、誰もが知っている昔話を太宰治が再構築した小説集。

カチカチ山の物語に於ける兎は少女、そうしてあの惨めな敗北を喫する狸は、その兎の少女を恋している醜男。
これはもう疑いを容れぬ厳然たる事実のように私には思われる。
太宰治「お伽草子」より

泥臭く、小心で計算高くて、どうしようもなく愚かな人間がなんとなく可愛く思えてくる作品。
太宰治は「人間失格」しか読んだ事がない、という人におすすめ。


太宰治というと、どうしようもなく自虐的で暗いイメージしかなかったのですが、意外と面白いんだな、と思った作品。
暗くて自虐的ななかにもユーモアがあるというか、自虐的なウィットに富んでいて、面白い。
特に「カチカチ山」の狸のみじめさといったら、しばらく夢に出てきそうな勢いです。兎がまた小憎らしくて可愛いんですよ。