オーケストラがやって来た/山本 直純
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山本直純さんは、見かけと派手な指揮で、私は、あまり評価していなかったのだけれど、この本を読んで一変した。
とてもまっとうな、そして心が暖かく広い方だ。

音楽をいかに愛しているかがわかるし、両親が音楽家という家庭に生まれたにもかかわらず、そういうことに謙虚である。
家庭が音楽をやっていない環境だったほうが、本人の情熱が強く、大成する可能性があると書いてある。

それは音楽にかかわらずいえることだ。

斉藤秀雄氏という音楽界では、知らない人のいないくらい有名な人のレッスンについて書いてあるところが正直驚いた。
レッスン方法はむちゃくちゃといっていい。
今の音楽教室なら、さっそくお母様がやってきて、クレームをつけるだろう。
しかし、レッスン料は無料というのもさらにすざましい。
そして、もっとおどろいたことには、新日フィルの定期演奏会に指揮をお願いしたら、教育優先ということで、断られたということだ。
そして、指揮から遠ざかっていた山本さんを指揮者に指名した。

こういう逸話を嫌味なく、暖かい筆致で書けるのは、きっと斉藤氏を山本さんが敬愛していたからなのだろう。

おそらくその時代、師も弟子も真摯だったのだろうと思う。

私はオーケストラファンというものではないけれど、
ここに書かれていることにはうなづけることも多い。
コンサートの席のことなど、おもわず、そうなのか、そうそう、など一人で相槌をうってしまう。

山本直純氏は2002年6月に69歳で亡くなられた。

若すぎる死である。

そして、この本の奥付きをみると2002年11月11日とある。
奇しくも亡くなってから10年目の11月に私はこれを読んでいるのだった。

合掌