ポスト資本主義社会―21世紀の組織と人間はどう変わるか/P.F. ドラッカー

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 はじめてこの本を読んだのは、私がまだ大学一年生の頃、もう八年も前のことです。大学に入りたての19歳のひよっこにカルチャーショックを与えた一冊です。

 そのときは、本の内容に、というよりも、それを説明する教授にです。たしか「グローバル経済入門」という専門基礎の授業だったと思います。

 身振り手振りを交えながら多少興奮気味に「知識社会」「グローバリゼーション」について熱弁している先生の熱意と知性、背後にある底知れぬバックボーンに完全に圧倒されました。

 頭のいい、かっこいい大人が目の前にいました。あんな人になりたいと憧れました。

 行き帰りの電車の中で、本を一生懸命読みました。はっきり言ってちんぷんかんぶんでした。読んではいるが、まだまだ概念装置のかけらも持ち合わせていないひよっこの脳みそでは何も生まれませんでした。

 それでも、言葉を覚えるほど読んだ後で授業を受けてみると、その言葉たちにどれだけの意味と信念が込められているかを、教授が熱意と信念を持って教えてくれました。授業を受けていると、自分の世界が音を立てて広がっているのを実感しました。

 最近『ポスト資本主義社会』を読み直して愕然としました。俺は何もわかっちゃいなかったと。あのとき、教授が言っていたのはこういうことだったのかと、8年ぶりに気づくこともたくさんありました。

 「生産関係」「生産力」「生産手段の所有」という鍵となる概念を理解しているのといないとでは、『ポスト資本主義社会』という本は、ゴールドクロスとブロンズクロスぐらいの違いがあったのです。

 あのとき、なぜ教授が「『ポスト資本主義社会』とドラッガーがタイトルをつけた意味を考えんとアカン!」と叫んだ理由が少しわかった気がします。それでも、発見できずにまだまだ持ち腐れている宝がこの本の中にはたくさんあるのだと思います。

 あの時点でこの本をもっと読めたらな、という人生の反省が、高校の公民の教員を志す動悸にもなっていますし、そういった意味では自分の人生に最も影響を与えた一冊でもあります。人生の恩師に出会うきっかけとなった一冊でもありますし。

 全く本の紹介になっていませんが、一人の人間の人生に多大な影響を与えた一冊であることが伝われば幸いです。

 内容については近いうちに読み直したときにでも。