78番目の図書館~人知れぬ物語たちの棚~ -11ページ目
館長 那耶のひとこと…
三題噺とは、関係のなさそうなもの三つをお題として選び、その三つのお題を使って作ったお話のことです。
なかなか難しそうですが、ここの棚にも変わったお題を使ったお話が入ったので、皆さんにも読んでいただけたらと思います。






某日。大学のサークル仲間の美沙都(みさと)の誕生日に、彼女の友人たち三人は美沙都の部屋で誕生日パーティーの準備をしていた。
料理全般を担当している彩(あや)は、最後の料理であるシチューを大きななべでぐつぐつと煮込んでいた。
残りの二人の香笑(かえ)結実(ゆいみ)は折り紙をはさみでチョキチョキと切り、飾り付けの輪っかなどを作っていた。
「美沙都、いつまでサークルにいるのかなぁ?」
結実がペタペタと壁に堂々と飾りをつけながら聞く。
「ちょっ!さすがにじかに張り付けるのはダメだよ!!…まぁ、料理の出来次第じゃない?」
慌てて結実を止めながらも、香笑はちらっとキッチンの方を見る。
「ん~?こっちはもう準備終わるってメールしたから、もうすぐ来るよ?」
準備OK、と嬉しそうに言いながら料理を運んできた彩は、事も無げにそう言った。
「ふーん、そっかーって、もう来るの!?まだこっちは終わってないのに!?」
一言くらい言ってよ!!と叫びながらも、香笑と結実は倍速で用意を始めた。
「二人の方が時間あったじゃん…」
彩はため息をつきながら、最後の梅酒を運び終え、片づけを始めた。
そんな時。
ピーンポーン。
「「ぎゃー!!」」
チャイムの音が香笑と結実の声が重なって響いた。
「美沙都、来たね」
にこにこの彩と対照的に、香笑と結実はこの世の終わりのような顔をしていた。
モニターに美沙都が映り、彼女の声が聞こえてくる。
『私だけど、もう上にあがって行くからね~』
「ん~。わかった~」
彩が楽しそうに答える。
『じゃあすぐ行くからね~』
ピッ、という音とともに彼女が玄関ゲートを越えていくのがモニターに映った。
「あわわわわ…」
香笑は慌てて片づけを始める。
それを真似て結実も片づけるためにのりやはさみを持った時。
「きゃー!!」
ズテーンと見事に転んだ。
そして。
ポチャン。
「「「ギャー!!!」」」
三重奏の叫びとともに、なべごとテーブルに移動されていたシチューに。
はさみが。
見事に飛び込んでくれた。
「いっやぁー!!」
叫んだのは彩で、残る二人は声すら出る状態ではなかった。
「どうしてこんなことになるのよ!!」
固まってしまった結実を彩はぐわんぐわんと揺らしながら叫ぶ。
「…あ…あの…それは…その…隠し味…?えへ」
「えへ、じゃないよー!!」
うわぁん、と泣き叫びながら彩は菜箸ではさみを取り出そうとする。
しかし、つるつるとすべって全く取れない。
「私がやるよ!」
香笑が彩に代わってはさみと格闘しようとした時。
ゴン。
起き上った結実に香笑がぶつかった。
そして。
ボチャン。
「「ギャー!!」」
香笑のメガネがシチューに飛び込んで行った。
「いやあー!!」
彩はもうダメ、と倒れてしまった。
「い、急いで取らなきゃ!」
メガネがなくなり放心状態になった香笑に代わり、結実が菜箸で戦いに挑む。
カチ、とまずはメガネを器用にとり、テーブルの上に置く。
「よっしゃ!次ははさみだ…!!」
そしてまたも器用にはさみを取り上げた時。
ガチャ。
「ただいま~。みんなお待たせ」
笑顔で部屋に入ってくる美沙都。
さすがの結実も固まった。
「あ…あ…あ…」
結実はむなしく笑う。
「え…なにこれ…」
床は折り紙や飾りが散乱、気を失った彩が床に倒れ、メガネを失っている香笑は放心状態。
きれいに料理が並んでいるテーブルの上には、なぜかシチューまみれのメガネが置かれ、結実の手には菜箸で器用になべから救いあげられたこれまたシチューまみれのはさみ。
やはり美沙都は混乱した。
「なんでこんなことになってんの?彩?なんで気絶してんの?香笑は放心状態だし…。シチューから…はさみ?メガネ?ちょっと、隠し味どころじゃなくなってるよ?」
最後の突っ込みはちょっとずれてるんじゃないかと思いながらも、彼女に結実はただただ平謝りするしかなかった。
「ごめんなさい!!」
かくかくしかじか、と事細かに説明し、結実は土下座する。
意識を取り戻した二人も謝った。
「私達がこの子の管理を徹底してなかったから!!」
「この子、暴走しちゃって…」
二人ひどい…と思いながらも、結実はペコペコと美沙都に謝った。
「しょうがないわ。結実がいる時点で普通じゃないと思ったもの」
にこにこと美沙都は言い切った。
それを聞いて彩と香笑はそうだよね!と喜び、結実はそんな、と落ち込んだ。
「みんなで頑張ってくれたんだからそんなのいいの。みんな、ありがとう」
女神様だ、と三人は感動の拍手をし始めたが、続いて聞こえてきた言葉を聞いて、拍手を一斉に止めた。
「梅酒、ちゃんと用意されてたし」
「「「え?」」」
「ありがとう」
嬉しそうに梅酒に頬ずりをする美沙都。
そう。彼女のあだ名は『梅酒童子』。
梅酒をこよなく愛し、酔うと机の下に潜るという奇行をする女なのであった。
梅酒買っといてよかった、と三人は胸をなでおろしたのだった。



その後は、梅酒も料理もきれいに平らげ、『梅酒童子』美沙都は「おいしいです」と連呼しながら机の下に潜っていましたとさ(笑)


おしまい。