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図書館利用促進プロジェクト横浜・鎌倉版

永遠に残していかなければならない人類の知的所産「図書」。
さまざまな図書が集積する「図書館」のあり方が
近年、著しく変貌を遂げています。
図書館の魅力を再発見!
それが「図書館利用促進プロジェクト」の狙いです。

(この取り組みに関わった港北区役所、(公財)大倉精神文化研究所、紙芝居たまてばこ、港北図書館の皆さん)

11月8日(火)~10日(木)、第18回を迎えた図書館総合展が例年通り今年もパシフィコ横浜で開催。今年は横浜市港北図書館が地方創生レファレンス大賞最終審査に残り、11月9日(水)フォーラム会場にてプレゼンテーションを行った結果、地方創生レファレンス大賞審査員会特別賞を受賞しました。

 

 

●第18回図書館総合展と地方創生レファレンス大賞

 

 

 図書館総合展とは、全国に3300以上ある公立図書館運営者や関連業界の集まる日本最大のイベント。 様々なフォーラムやブース展示、ポスターセッションのほか、近年は行政関係者、教育関係者、出版をはじめとするメディア・情報関連業も参加し、全国から3万人以上が集まるイベントとなっています。

 

 その年に注目を集めた図書館や図書に関連する施設や取り組みが対象となるLibrary of the Year、図書館の活性化に貢献したキャラクターを選ぶを図書館キャラクター・グランプリといった各方面の意欲的な試みに対する賞に、昨年2015年から新たに加わったのが地方創生レファレンス大賞です。

 

 地方創生レファレンス大賞とは、図書館の重要なサービスの一つでありながら利用が少なく、司書の持つ専門性を活かしきれていないレファレンスの現状を変えるべく、地域活性化や地域課題の解決に図書館のレファレンス力が活用された事例に贈られるものです。

今年最終選考に残ったのは港北図書館含め以下の3事例でした。                    

    

                      

(左から鳥取県立図書館事例代表2名、岡山県立図書館代表たまてばこ代表田中佐知子氏、港北図書館木下豊館長)

 

「横浜港北の昔ばなし紙芝居で地域の元気づくり・地域文化の継承」 

横浜市港北図書館

 

「中山間地域の産業を応援~岡山県小田郡矢掛町干し柿の里の活性化~」

岡山県立図書館

 

「ひまわりオイルが地域を潤す!(2016)」

鳥取県立図書館

 

●突出していた港北図書館のレファレンス力でつなぐ地域住民と地域機関の連携力

 

 それぞれ10分間のプレゼンテーションのあと、審査員との質疑応答を経て、文部科学大臣賞、公益財団法人図書館振興財団賞、審査員会特別賞が決定。横浜市港北図書館はこの中で審査員会特別賞を受賞しました。

  (木下港北図書館長に紹介され舞台そでにズラリと並んだ港北昔ばなし紙芝居に関わったみなさん)

          

 港北図書館のプレゼンテーション冒頭、この活動に関わった人たちの紹介が木下館長からありました。図書館のレファレンスはそれを必要としかつ課題解決に活かす利用者がいてこそ。行政、地域にある専門機関、地域住民が一体となって図書館のレファレンスを活かした活動ならではの、そして図書館総合展開催地である横浜市の図書館というメリットも最大限に活かされた、あたたかみのある演出でした。

 

●港北昔ばなし紙芝居とは

 

 2014年から継続する昔ばなし紙芝居の取り組みは、港北区役所生涯学級事業の連続講座がきっかけです。地域内の専門機関である大倉精神文化研究所平井誠二部長による昔ばなしの講義に始まり、港北区出身の絵本作家ときわひろみ氏による作成指導を経て、実際に参加者が紙芝居を制作し、上演するという講座です。

 この活動において参加者が地域に眠る様々な昔ばなしを掘り起こし研究し、作成、上映する…その過程に司書のレファレンス力が生かされました。

 出来上がった紙芝居は様々な施設や機会に上演されるようになり(2年間で30回以上、上映場所は12カ所)、2015年に上演グループ「たまてばこ」(会員15名)が発足、紙芝居の作成も続いており現在では40作品となっています。

              

受賞を受け、「たまてばこ」代表田中佐知子氏は

「今回、港北図書館はじめ多くの機関の協力、支援をいただきながら一緒に取り組んできた紙芝居の取り組みがこのような形で評価され、また、図書館関係者の一番の大きな大会で表彰の場に参加できてたいへん嬉しいです。これまでも別の活動の賞などで注目されたことがありましたが、行政の継続性が無く、今日のような晴れ舞台に立つことはなかったのでなおさらです。会員みんなにとって今後の励みになります」と喜びのコメントを述べていました。             

 

 

●地域活性化につながるムーブメントの背景

 

 昔ばなし紙芝居の制作において港北図書館のレファレンスは、資料の相談はもちろんのこと、その制作場所、発表の場の提供やSNSでのPRのほか、区役所とも連携しながら上演先の確保や区内の各施設や団体などへの積極的な働きなど…昔ばなし紙芝居の輪を地域活性化につながる力となったと言えます。

 

●港北図書館の利用UP効果にも

 

 横浜市港北図書館といえば、先の記事でもご紹介したとおり昨年度においては利用率UPを果たしており、その背景には、昔ばなし紙芝居のような継続的な関わりを地域全体も巻き込んでなされるよう協力体制を自ら作ってきた結果かもしれません。

 いずれにしても、今回の図書館総合展地方創生レファレンス大賞において全国の県立図書館に並んで最終審査に残った横浜市港北図書館の活躍は、市町村立図書館としては快挙といえるのではないでしょうか。審査委員猪谷千香氏からは「公立図書館は誰でもどこからでもアクセスできることが大切。その中で港北図書館のHPアクセス数UPは目を引かれました」とのコメントがあったのは、印象的でした。

 

●表彰を終えて

 

 これまでも当ブログでご紹介した様々な指標UPへの関心と共に、今回の表彰を受けて、全国の図書館からアドバイスのオファーもきているそうです。

「特に、昔ばなし紙芝居作成の手順や図書館利用促進にぎわいづくりのアドバイスが欲しいといった具体的なノウハウ伝授の依頼を市内外からいただいています。」と木下館長。

 すでに、来年3月下旬に複合館としてオープンする福岡県福智町立図書館・歴史館「ふくちのち」からも図書館総合展2017フォーラムin福智町での協力依頼、街の賑わいづくり等のアドバイス求められているとのこと、図書館の未来の在り方を探る実践例として注目を受けているようです。

 

メモEDITORIAL NOTE

 

 図書館総合展 地方創生レファレンス大賞表彰式後の講評の中で、審査委員長大串夏身氏(元昭和女子大学特任教授)は

「最終審査に残った3館は甲乙つけがたい。どこも日頃のサービスやレファレンス面での地域への働きがなされていた。この3館はいわば全国のトップランナー。一方で後方集団の実態も把握し、レファレンスの活用を進めていくことが課題」と話されました。

 図書館が本を貸し借りするだけでなく、自身の暮らしの中で様々な場面で相談に乗ってくれる場所となることも、今後の公立図書館の存在意義の重要な側面である、と改めて思う機会となりました。

 

 取材_安木由美子