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どのくらい時間が経過したのだろうか、二人は必死になって何冊も何冊も入れ替わり立ち代り階段に登り棚の本を読んだ。何冊目を読んでいたのだろうか棚の下には読み終えた本が無雑作に置いて散らかっていた。
「クーモあった?」
当然見当たらないのを承知で敬子はクーモに話しかけた。
「まだ・・」
「ねえ、本当にこの棚のここら辺なの?」
クーモも最初から自信がないので敬子の言葉に対して苛立ちを覚えた。
「俺だってこれだけの本を読んで一つの単語をハイ、ここの棚のこの本ですよ、何て言えないよ。それにケイコが言っているモデルや女優って言う職業は女なんだろう、俺は次の世界では男と決めているから女の人生らしき本はパラパラと読んで止めてしまうんだ、だからはっきりとした記憶なんてないよ」
そう言うとクーモは読みかけの本を床に置きその場でゴロンと仰向けになって天井を見つめてだまってしまった。
さすがに敬子もこれはクーモに悪かったなと思った。
「ごめん」
「良いよ、ケイコが別に謝ることなんてないよ!だって全て俺の為にやってくれているのだから」
二人とも無言のまま少しだけ時が止まった。
仰向けになり上を見つめていたクーモが敬子に話しかけてきた。
「ねえ、ケイコ。君の家族ってどんな人たちだったの?」
そのクーモの問いかけに敬子は目を閉じ、家族一人一人の顔を思い出すかのようにゆっくりと話し始めた。
「そうか、良い家族だったんだ」
「そうね、だけど家族だなんて言える程、長い時間は私達にはなかったの」
「どうして?」
今まで仰向けになっていたクーモが起き上がりケイコに向かって顔をむけた。
「それはね、私が病気になってしまったからよ・・」
「病気?」
「そう、血液の病気。白血病って言うのよ」
「白血病?」
不思議そうにクーモがケイコの顔を見つめているとケイコが話を続けた。
「白血病と診断されてから入院まではアッという間だったわ、入院前にどうしても子供達の七五三だけは終わらせたかったんだけど、それも叶わなかった。病院のベッドの横で私の顔を覗き込んでいる辛そうな夫の顔と二人の子供達の顔が私の最後の記憶になってしまったの」
そう言うと敬子は話を止め大きなため息を一つだけ付きクーモの方に顔を向けた。そのクーモの瞳からは涙が溢れていた。
「クーモ・・」
その顔を見たら敬子の押さえ込んでいた感情が一気に噴き出してしまった。二人は大きな声でそれは図書館中に響き渡るくらい大きな声で泣き始めた。
どれくらい泣いたのだろう、それはまるで子供の頃のように悲しい感情は涙し、うれしい感情は喜びとして表していたあの頃の様に・・
「ありがとう、クーモ」
涙の後、敬子の表情にはクーモに対する感謝と安堵の気持ちでいっぱいだった。
「さあ、始めますか」
笑顔でクーモが敬子に言うと敬子はさっき手にしていた本を開きクーモにむかって笑いかけた。二人はその後何時間も無言で本を読み漁った。
