夜は昼と一変して学生感あふれる生活だ。
美紀さんのおいしい夕食を食べ終わると、今度は宿題に追われる。
私の学校は、先生が1週間くらい前から宿題の内容を教えてくれるので、もちろん夏休みが始まる前から手を付けている。
それでも、宿題が多いことで有名だから簡単には済ますことはできない。
直樹や優作さんはまだ帰っていないので寂しいと言う美紀さんのリクエストで、居間で英語の宿題をしている。
美紀さんはお茶を飲んだり雑誌を読みながら、2人の帰りを待っている。
美紀さんが私が解いているテキストを覗き込んで言った。
「しかし、今ドキの中学生は大変ね。宿題もたくさんあるし、塾とかにも行ってくる子もいるんだよね。
裕歌ちゃんも塾とか行ってるの?」
私は近くに置いてあるホワイトボードに書いた。
一応行ってます 今は休ませてもらってるんですけど
友だちに進んだ内容とか宿題とかメールしてもらってるんですけど 正直大変です
「裕歌ちゃんは賢いから大丈夫だよ。」
そう言われて、首を2、3回横に振った。
美紀さんはお茶をすすってまた言った。
「裕歌ちゃん、シャツ羽織ってて暑くない?もしかして、冷房効きすぎてる?」
私はまた首を横に振った。
大丈夫です
すると、玄関の鍵が開く音がした。
ただいまと言う声から優作さんだと分かって、美紀さんは嬉しそうに玄関のほうへ向かった。
優作さんと美紀さんは本当に仲の良い夫婦だなって思う。
私とは180度反対のところにいる2人が私にはまぶしかった。
このシャツの下には、誰にも言えない秘密がある。
その秘密、その奥にある見えない傷は誰にも見られないと思った。
せめてこの夏休みの間は隠し通すつもりだったし、隠せる自信があった。
しかし、その傷は結局暴かれることになるが、それはもう少し先の話だ。