はじめに
 みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回はO.R.メリングの「ドルイドの歌」という作品についてです。ジミーとローズマリーと共に、アイルランドの伝説の世界へ、出発することにいたしましょう。

「ドルイドの歌」O.R.メリング(講談社)
 休暇にアイルランドの親戚の家にやってきたローズマリーとジミーの姉弟。そこで遭遇した妙な青年、ピーターに導かれ、2人はアイルランドの伝説の世界に旅立つことになる。攻めるコノサイ軍からアルスターを守ろうとする英雄、クーフーリンに出会った2人。ケルトの神秘の世界で、冒険が今、始まる。

 古代に生きた人々が、隣にいるかのような臨場感が立ち上がってくる作品だった。人間離れした強さを誇るクーフーリンも、この作品では1人の少年として、悩み、苦しみながら自らの道を進んでいく。遠い世界で実在したのかもよく分からない幻の人物から、確固たる存在感を持った少年として、彼の姿が見えてきた。

 きっとそれは、現代の子どもたちが主人公になっているからだと思う。そうすることで、単に伝説を舞台にするよりもずっと身近に迫ってくるのではないか。

 昔はそのような設定も無批判で受け取れたのに、年を取るにつれて細かいどうでもいいことが気になってきてしまうのは、大人になる弊害だろうか。

 というのも、どうしても現代の人々がいわゆる異世界に飛んだところで、上手くやっていけるのかが不思議なのである。古代の人々に比べて、現代人は体力的な面で劣ると思う。それにも関わらず、古代人が数年かけて身につける戦車の操り方、剣術を、急に古代に飛ばされたジミーのような現代人が、一朝一夕に身に付けられるものなのだろうか。一切やったことがないので、感覚がよく分からないのだが、少し疑問ではあった。

 だが、古代の習慣などを理解するには、私たちと同じような視点を持った現代人の主人公をクッションとして置くことが効果を発揮するのは確かだろう。実際、それはこの作品でも大きな役割を果たしている。だから、あまり気にしても仕方がない。

 この本を読んで、一層ケルトについて興味が湧いた。同じ著者の他の作品も読んでみたい。

おわりに
 ということで、「ドルイドの歌」についてでした。次回はサトクリフの「アーサー王最後の戦い」についてです。どうぞお楽しみに。最後までご覧くださり、ありがとうございました!