はじめに
みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、「ホーキング、宇宙と人間を語る」。歴史観の話から、時空の話に興味が湧いたので、読んでみました。非日常のように見えて、実は起こっている数々の不思議な現象。数学や量子力学など、普段だったら思わず眉をひそめて眺めるような、小難しい話ですが、今回ばかりはちょっとのぞいてみませんか。
「ホーキング、宇宙と人間を語る」スティーヴン・ホーキング/レナード・ムロディナウ(エクスナレッジ)
この世界は、たった一つの理論で成り立っているのではない。数々の理論を重ね合わせて、ようやく説明がつくのだ。筆者は、その理論の集合体がM理論であるとし、それに含まれるいくつかの理論について、解説してくれる。
小さいころ、こんなことを思っていた。
「内側が鏡になった箱を作ったら、その中はどんな様子なんだろう?」
「私の見ている“色”は、本当に他の人が見ている色と同じなのかなあ」
検証しようにも、一つ目はのぞき込んだ時点で私の目が映ってしまうし、それを見ようとして光を入れたら、見えるのはその光に決まっている。二つ目も、検証しようのないことだ。たとえ、私の目が、鳥と同じだったとしても、それを確かめる術はない。
こんなことを延々と考えていると、ついには一つの問いにたどり着く。それは、
「この世界は、本当に存在しているのか」
ということだ。実は、生まれてすぐに眠ってしまって、その寝ている間の夢がこの世界かもしれない、とか、あるいは私という存在はそもそもなくて、これは誰かに操られた私の思考に過ぎないのかもしれない、とか。それを考えていると、なんだか恐怖を覚えてしまって、全てが不確かな存在に思えてくるのだ。
今まで私は、哲学という言葉につきまとう小難しさを信じていたが、結局哲学というものは、幼い私が考えていたような純粋な疑問に出発しているのである、ということが、この本を読んで分かった。
とはいえ、難しそうな漢字やカタカナが並ぶ紙面には、やはりおかたい雰囲気が立ち上ってくる気がしたものだ。しかし、その中でひょいと飛び込んでくるのが、筆者の豊かなユーモアである。思わずくすりと笑ってしまい、また読み進める、その繰り返しで、気づいたら読み終わっていた。章の最初に挿入されている、いくつかの神話も読者の肩の力を抜くのに一役買っていることは疑いない。
普段の忙しない日常の中で、私たちは実に多くのものを取りこぼしている。そもそもこの世界がなかったら、私たちの努力は何だったのだ、となるのに、それを考慮に入れはしないのだ。みんな、本当は薄々そのことに気づいているのではないだろうか。少なくとも一度は考えたことがあるだろう、本当にこの世界は実在するのか。
改めてその疑問に立ち返り、科学と哲学をかみ合わせることで、現代に適した、世界を説明する理論を生み出す。そのことの大切さが、わずかなりとも分かった気がした。
おわりに
というわけで、「ホーキング、宇宙と人間を語る」でした。そろそろ専門用語が所狭しと並ぶ本に疲れてきたので(面白くないとは言っていませんよ!!)次回はちょっと息抜きに、上橋さんの作品でも読もうかな、と思います。「狐笛のかなた」とかの短いものにするつもりですが、だいたい気づいたら守り人シリーズとかも読みたくなっているんですよね……。というわけで、次回もお楽しみに。最後までご覧くださり、ありがとうございました!