はじめに
みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、「神招きの庭」という作品の感想です。和の香りのする古代の宮廷を、ちらりとのぞいてみませんか。
「神招きの庭」奥乃桜子(集英社オレンジ文庫)
兜坂国の辺境に位置する、朱野の邦の綾芽は、采女として神を招く斎庭に召し上げられた親友、那緒が、人を殺して命を絶ったと知り、真相を突き止めるために自らも采女として斎庭にやって来た。風変わりな官僚、二藍と共に、那緒の死の謎を探ることとなる。溌剌とした彼女が、自ら命を絶ったのは、なぜだったのか。
話運びも軽快で、世界観も私の好きな部類である。宮廷に似合わぬはっきりした物言いをする綾芽が、その中を変革していく様子が見ていて心地よい。続きも気になり、一気読みしてしまった。
ただ、荻原規子さんの「空色勾玉」を読んでいなければ、もっと楽しめたと思う。というのは、物語の最初の時点で、「空色勾玉」から離れようとしている、という感覚になってしまったからだ。単なる憶測に過ぎず、全くの見当違いということもあり得るので、断言はできないが、一度そのような思いを抱くとなかなか拭えないものである。
まず、構図からして似たものを感じる。兜坂国が、闇の一族とみると、玉央国というまた別の神を祀る国が、輝の一族、ととれる。また、二藍は稚羽矢に思えるし、そう考えると綾芽は狭也だ。一度被って見えてしまうと、物語が進んでいっても、それが頭から離れなくなる。物語の運びによっては、それを忘れることもできるのだが、あいにくそれはできなかった。話が面白かっただけに、残念である。
この類いの本を読むと、面白い、という感想しか抱けない自分に気づく。ライトノベルやキャラクター小説に多いのだが、そのジャンルに含まれる本全てがそう、というわけでもないし、そのジャンルに明らかに入らない本でも、そのように感じることは多々ある。
もちろん、それ以上の何かを得ようとして読書しているわけではない。だが、一つ次元を超えた作品というのは、面白い、という以上に、何か優れたものを提供してくれるのだ。それが何か、と上手く言語化できず、申し訳ないのだが、あえて言うなら骨太、という感覚である。確固たる世界観、生き生きとした登場人物。それこそ、作者の頭の中だけでなく、読者の頭の中でも自在に動き回るような人々だ。そういったものから、面白い、以上の読後感が生まれる。「空色勾玉」は、そのような作品だった。だから、それと比較してしまって、より「面白かっただけ」という感覚に陥るのかもしれない。
話は面白かったので、ぜひ続編を期待したいところである。「空色勾玉」からの脱却を求めたい。
おわりに
というわけで、「神招きの庭」についてでした。
次回は、「世界史の誕生」です。お楽しみに。最後までご覧くださり、ありがとうございました。