はじめに
みなさんこんにちは、未だにヴェネツィア共和国が滅亡したショックから抜けられない本野鳥子です。今回は、村山早紀さんの「コンビニたそがれ堂」シリーズの最新刊である、「コンビニたそがれ堂 花時計」についてです。発行されたのは先月の24日ということですから、本当に最近ですね。村山さん、最近はたくさん本を出されていて、ちゃんと読みたいところですが、本屋さんが閉まってるのは痛いですね。ともかく、風早の町に、寄港することといたしましょう!
「コンビニたそがれ堂 花時計」村山早紀(ポプラ文庫ピュアフル)
普段、特に意識することのない幸せ。忙しい日常生活の中で、その日々を続けられていることの幸福を、私たちはいとも簡単に忘れてしまう。だが、村山早紀さんのこのシリーズを読むと、それがしみじみと感じられる。
この本では、影の薄い幽霊と、随筆家の悟郎さん、そして、親友の菜々と星子が、それぞれ、胸に過去の後悔を抱えて、欲しいものが何でも揃っているコンビニ、「コンビニたそがれ堂」を訪れる。出迎えるのは、今回も店主の風早三郎ではなく、化け猫のねここ。彼女の言葉は、少しひんやりした雰囲気をまとっていても、優しさにあふれている。
村山早紀さんの作品の根底に流れる、誰もを受け止めてくれる暖かさは、この本でも健在だ。
ところで、この本には、村山さんの本を読んできた方なら、見慣れた顔が登場する。一貫して村山さんの物語の舞台となっている、風早の町の顔ぶれが、どんどん増えて、でも彼らはどこかでつながっている。そんな実感も与えてくれた。
私はよく、疲れているとき、癒やされたいときに、村山さんの本に手を伸ばす。村山さんの本は、私のように、自分の弱さを責める、どこにでもいる人々が、主人公だ。けれど、結局その人々たちは、あるときはコンビニたそがれ堂、あるときは桜風堂書店、その他にも、様々な機会を通して、自分をありのままに受け入れられるようになっていくのだ。その過程を追ううちに、私もまた、彼らのように、ちっぽけな自分を受け入れられるようになっている。村山さんは、自分がほしい言葉をくれるのだ。ほしい言葉が、なんでもある本。それなら、私にとって、コンビニたそがれ堂は、村山さんの作品なのかもしれないと思った。
おわりに
少し短くなってしまいましたが、「コンビニたそがれ堂 花時計」の感想でした。本当に暖かい味わいを持った物語ですよね。ヴェネツィア共和国の滅亡を読んできた私には、ちょうどよい癒やしでした笑
さて、次回は上橋菜穂子さんの「鹿の王」の再読にいきたいと思います。自分からハードなところに突っ込んでいってるという自覚はあります。またご覧いただければ幸いです。それではまたお目にかかりましょう!