猫神くん主催のリレー小説です。
令嬢様に踏みつけられる少年の姿があった。
アスファルトにうつ伏した土御坂の背中に、あと少し力をこめればそのままめり込むんじゃないかと想像してしまう大胆さをもって皆川玲奈がローファーを押し付けていた。
「…………。」
声がでない。隣に目をやると、篠谷がいつもの3倍アホみたいな顔して口をあけていた。
「まったく、なんでこんなことになったのかしら……」
皆川はそう言ってため息をつきながら、助けに入った少年を踏みつけている脚のニーハイをなおした。
えっと……なんだろうこれは。
土御坂が倒す予定だった黒服2人は、直立したままマネキンみたいに動かない。
「皆川……?」
おそるおそる呼びかけるボク。ちらっとこちらに目を向けた皆川は、初めてボクたちの存在に気づいたかのような反応をした。
「ああ、柳瀬くん。こんなところで何をしているのかしら?」
お前がだ。
「い、いや、声が聞こえたから来てみたら、怪しい連中に囲まれてたから……」
「ああ、彼らは皆川家のSP」
はい?
「え?いやでも『放しなさいよ』って」
「ああ、それで勘違いして助けようだなんて思ったのね?こいつも。昼休みにこの私の机に張り付いてた変態だから、放課後になってまた襲撃しに来たのかと思ったわ」
そこでようやく土御坂の背中から足をどけた。怒からか悲しみからか、土御坂はプルプル震えていた。まったく、ついてないやつだ。
「ただ荷物を持つとか言い出したから、断っただけよ。迷惑かけたみたいね、ごめんなさい。この私は帰るとするわ」
「お車をご用意します、お嬢様」
黒服のひとりがはじめて口を開いた。ゴツい見た目に反して清涼感のある声だ。
「必要ないって言ってるでしょ!?この私はひとりで帰れるのよ!特別扱いしないで!」
ボクは(そしてたぶん篠谷も)驚いた。“令嬢様”と呼ばれるあの皆川玲奈が、こんなに語気を荒げて反発する姿を見るのははじめてだった。普段から口は悪いけど。
そんな呆然としたボクたちの視線に気づいたのか、皆川は自嘲的な笑みを浮かべた。
「驚いたでしょ?この私の本性はこっち。普段は大変なのよ、理事長の娘だからって周りからは特別な目で見られて、勝手な『お嬢様』像をつくられる。『お嬢様はチキンカツバーガーなんて食べないだろう』?なによそれ。『金持ちだから高級食材ばかり食べる』?マックもロッテもモスも常連よ。『優雅にパスタ』?ペヤング大好きですが何か問題ある!?」
健康的に問題があると思う。ていうか、なんで食べ物のことばかりなのだろう。令嬢様はひょっとして食いしん坊ちゃんなのか?
「それでもこの私はあなたたちの抱く“イメージ”通りにふるまってやってるだけ。『人の夢は儚い。―――夢を守る為に人は偽る。』……面倒事は嫌いなのよ。」
皆川の言葉に、聞き覚えがあった。なんだっけ?ああそうか、篠谷が話してた引用文だ。
「それじゃさようなら。みんなにばらしたらぶっ飛ばすから、なんて言わないわ、勝手にして」
そう言い残すと、呆然と立つボクと篠谷とSP2人(あと倒れてるのが約2名)を残して皆川は路地を進んで行った。
「みな……がわ……」
隣で篠谷が呟いた。意中の相手が豹変した瞬間って、どんな気分になるのだろう。
「なあ、柳瀬」
「なんだ、モブキャラ“男子ピー”」
「いろいろ混ざってるしかなりヒドいよ!?てかせめて名前一文字は織り交ぜて!?」
「で、なんだ。」
「あれ、“令嬢様”だよな?おれらのクラスの皆川玲奈だよな?」
「そうだぞ、“モブ谷”。お前の惚れた相手だ。」
するとこいつは顔を真っ赤にして押し黙ってしまった。ふむ、ボケ濃厚なあだ名にツッコミを入れるのも忘れるほど動揺してるらしい。
「追わなくていいのか?最後に甘いセリフをはくんだろ?」
そんな状況ではないのだが、なんとなくそんなことを口にしてしまった。
「あ、ああ、そうだな、そうしなきゃ……」
お前も乗るな。
「じゃあ、ちょっと追ってくる!」
ほんとに行くな!
「ちょっ……!」
いまだアスファルトとハグしてる土御坂とどうすればいいのかわからず立ち尽くすSPの脇を素通りし、篠谷は令嬢様に呼びかけた。
「おーい、皆川!」
令嬢様が振り向く。
「あの、えっと……」
さすがモブ谷。呼び止めといて台詞を考えてない。
「……なに?」
皆川は足を止め、体ごと篠谷のほうを向いた。
「えっと、おれ……!」
そうだ、いけ、篠谷!勢いで行くんだ!
お前は“モブキャラ”なんかじゃない!お前は――
「おれも踏んでください!」
変態だった。
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あとがき
まずひとこと、5章までのみなさんごめんなさいm(_ _)m
しゅうとんさんのキラーパスを、りぶらんはだいぶ屈折した形で受け取ったようですヽ(゚◇゚ )ノ
猫神くんはリア友なんですけど、リレー小説のわりには案外壊れないことを嘆いておられました。
だからオレはぞんぶんに崩壊させていいぞと許可をうけていたわけですが・・・
ストーリーじゃなくてキャラクターを崩壊させちゃったね。
キャラに愛着をもってたみなさまごめんなさい。そして後続の非魔神さん、この処理はよろしくお願いしますwwww