高速教習から無事帰還したりぶらんですヽ(´▽`)/



「私このまま死ぬのかしら」の記事で行った小説に関する投票、みなさんありがとうございました!

なんや18票入れてる人がいたけどひとり1票で計算しますねw


ブログで記事として公開・・・5票

PDFでホームページに添付・・・1票

不明票・・・1票


ということで・・・多数決と言っていたので、記事にします!というかこの記事ですww



PDFを希望された八雲さん、ごめんなさい。なんかそもそも、自分のホームページに添付できませんでした・・・^^; どうしてもPDFがご希望のようでしたら、ホームページ「りぶらんの根城」のリンクからメールをお送りください。送信したらメールアドレスなどのデータは消去いたしますので、お気軽にどうぞ。



これはりぶらんが大学の「小説を書く」講義で提出した課題の短編小説です。短編と言ってもブログに載せるには長かったので2分割しました。


課題なので、やけに描写が細かいところがあったりします。あと「ここ適当すぎね?」って思うところがございましたら、それは提出前夜、てっぺん越えてから書いた部分ですwww


では。



*****以下本編*****



鼓膜を揺るがす。アラームと、どこかで小鳥がさえずる声。


「ん……んんー……」

狭く、薄暗いワンルームに窓から光が差し込んでいる。朝だ。清々しい朝、とは決して言うもんか、八月中旬夏真っ盛り。湿気が不快で仕方が無い。


「んー……」

手を伸ばして枕元に置いてある携帯電話のアラームを止め、再び枕にしがみつく。眠い。あと五秒待ってくれ。
……四……三…………二…………いーち…………。……ぜろ。…………起きよう。うん、わかってる。起きなきゃいけないのはわかってるんだ。今日は寝坊は許されない。


大学で知り合った仲間たち、俺含め四人で旅行に行くことを計画していた。その出発が、今日の始発電車。行き先は京都・奈良というなんともベタな旅であり、二泊三日の予定だ。三日で古都を散策だなんて中学生の修学旅行レベルだ。仮にも文学部歴史学科に所属する俺たちにはなんとも味気ないものになってしまうが、仕方が無い、財産に余裕が無いのだから。


緩い動きで上半身を起こすと、けたたましく鳴いている枕元の携帯電話を手にとって開き、電源ボタンをプッシュして黙らせる。


「……あれ?」


アラームはさっき止めなかったっけ?

そう思っていたら、再び携帯が歌いだした。どうやら、着信がきていたのを誤って切ってしまったらしい。ディスプレイで発信元を確かめ、電話に出る。


「巧?おはよう。」


『……おはよう、悟くん。』


あれ、なんだかご機嫌斜めな応答だ。さてはさっきの電話も巧たったんだな、とあたりをつける。


「悪かったよ、アラームだと思って切っちゃってさ。それで、何の用?」


『アラーム。』


はい?


『お前らが遅刻しないようにたたき起こすアラーム役を仰せつかったからかけたんだ。』



「ああ、なるほど。巧になったんだっけか。」



そういえば。遅刻は許されないから誰かが早起きして、全員を電話で起こす役回りというものを決めていた。ジャンケンで。巧はしっかりとその職務を全うしたが、もし朝に弱いやつが当たっていたら、どうなっていただろう。


『あとは尚樹と陽一か……じゃあ悟、遅れるなよ。』

「おう、また後でな。」
巧が電話を切るのを待ってから、耳から離して携帯を畳む。



「ん~……」
腕を伸ばし、軽く伸びをする。


「さて、と。」


準備をしなければ。身支度と、食事。朝食は欠かさず食べることにしている。健康とか気にしてますとかそういう問題ではなく、生活の中のリズムの一環として、〝儀式〟的に食事を食べるという行為を済まさなければ気持ち悪いというか、精神的な面で落ち着かない。


冷蔵庫の扉を開き、昨晩のあまりものである卵焼きともやし炒めを取り出して扉を閉める。卵焼きのほうだけを電子レンジに入れて弱めの加熱のボタンを押し、もやし炒めの皿はラップを取り外してそのまま卓袱台に置く。


個人的に、もやしは熱いよりも冷めてるほうが好きだった。それだけ済ませるとポットの「再沸騰」ボタンを押して、洗面所に向かう。お湯の沸騰ともやしが常温に戻るまでの時間に身支度を済ませる算段だ。


ふむ、我ながら時間を有効に活用していると思う。大学に入学して一人暮らしをするようになってから、無駄を省くというエコノミーでエコロジーな精神に基づく行動をする力が格段に上がったと自負している。



欠伸をしながら洗面所のドアを開ける。正面にあるのは、便器。その右手にはカーテン付きの狭いバスタブが鎮座し、左手に洗面台という間取り。洗面所とは言っても所詮は一人暮らしの学生の部屋、トイレも風呂も一緒になった、いわゆるユニットバスというやつだ。


実家は一軒屋で風呂が広々としていたために、この部屋に引っ越してきた当初はあまりの使いづらさにストレスがたまりまくったが、四ヶ月たった今では慣れてそれほど苦とは思わなくなった。人間っていうのはすごいな、どんな環境にも順応してしまう。毎年の暑さ寒さには一向に耐性ができる気がしないのだが。


汗で湿って体に張り付き、快指数の上昇に拍車をかけているTシャツを脱いで、洗濯籠に投げ入れる。髪をぼさぼさと掻いて蛇口をひねる。迸る水が程よい勢いになったところで蛇口から手を離し、水に触れる。冷たく、気持ちがいい。夏の猛暑の中にいると、ときどきこのくらいの温度の水に全身を投げ入れたい気分になる。


コップを手に取り水を注ぎ、口に含んでうがいをする。寝起きの口内のねばねば感が気持ち悪いので、朝起きたら洗面ついでにうがいを欠かさない。起きてすぐ歯磨きをする人もいるが、わけがわからない。朝食を食べたらまた歯を磨くことになるじゃないか。

コップを置くと両手で水を受け、そのまま顔をこする。爽快感。眠気が一気に飛んでいく。


「ぷはっ」


顔をあげて、若干斜めっている鏡の中の自分を見る。眠気は飛んだがそこに劇的なビフォー・アフターはなかった。俺は普段からどんだけやる気ない顔をしているんだろう。


タオル掛けのキティちゃんタオル(妹からのプレゼント。もうちょっと考えてくれ)を手に取り、顔を拭く。

と、キッチンの方からピーッという音が聞こえてきた。お湯が沸いたらしい。


「ナイスタイミング。」


キティちゃんを元の場所に戻して、俺は洗面所を出た。



ご飯は三合炊いておいた。別に俺が体重百キロオーバーの大食漢だとかそういうことではなく、余った分を冷凍しておくと後々楽だからだ。実際は一食当たり茶碗一杯分しか食べない。


それから沸かしたお湯でインスタントのみそ汁を作り、おかずを並べて、「いただきます。」


食べながら、今日からの三日間に思いを馳せる。実のところ、かなりわくわくしていた。いや、現在進行形。なにしろ保護者が同伴しない、まったくの友達同士での宿泊旅行なんてこれが初めてなのだから。


たしかに宿泊施設の確保にはそれなりに苦労したし、実際不安も多少はあるが、もう俺たちだって二十手前だ、もう自分たちで決めて、行動できる。中学時代にのぼせ上っていた「大人になった」感、張りぼての自由とはもう違う。逃げようのない責任を伴う、本当の自由。だからこそ、心の底からわくわくする。


修学旅行ではあまりに時間が足りなすぎて行けなかった場所にも行ってみたい。リアル舞妓さんに声をかけて、あわよくばご一緒にパシャリ、というミッション。金閣、銀閣、清水寺。有名どころで教科書とまったく同じ構図で写真を撮ってみようという試み。これこそ子どものような発想だが、結局楽しめれば何だっていいのだ。


「ごちそうさまでした。」


食材に感謝をし、食器をシンクに運ぶ。そろそろ出発予定の時間だが、そのまま放置という無様はさらさない。夏場だから不衛生ということもあるが、ここから徒歩二分の場所にある、個人経営の洋食屋でアルバイトを始めて三ヶ月。皿洗いの極意を叩き込まれた俺にしてみれば、食器を三つ洗うことなど造作も無いことだった。


すぐに洗い終えて水を切り、余ったご飯をラップで包んだものを冷凍庫に入れると、歯磨きのために洗面所へ向かった。



「窓の鍵はしめた、ガス切った、コンセントは抜いた……OKかな。」


三日間家を空けるため、戸締りと火の元の確認を念入りに行う。すべてを確認し終えたところで、キャスターバッグを引っ張って玄関口へ向かう。


「じゃあ、いってきまーす」


誰にとも無く呟き、部屋を出た。


ちょうどそのとき隣の部屋の住人、小石川美穂さんと遭遇した。やや身長は低く、頭頂部が俺の鼻ぐらいの高さ。露出を抑えながらも、夏らしい爽やかな服装をしている。肩甲骨くらいまでの栗毛色の髪の毛を、今日は団子ヘアに括っていた。

こんな早朝だというのに、この人は出かけではなく、今帰ってきたようだった。


「あっ。」

と、向こうが俺に気づいて笑顔を向けた。この人は誰にでもこういう笑顔を自然に向けられるんだろうな、と思った。


「おはよう、ツッキー。」
苗字が〝月森〟だから、ツッキー。


「おはようございます。」
美穂さんは歳も学年も俺よりふたつ上なので、敬語。

「朝帰りですか。」


「確かにそうだけど、そういう言い方はしてほしくないな、あたしが遊び人かヤらしい女みたいじゃない。」


「違うんですか?」


「ばか。」

と言いつつ、あははと笑う。この辺が美穂さんのいいところだと思う。付き合いやすい人となりだった。


「ちょっといろいろあって深夜バイトが入っちゃってさ。その帰り。そういうツッキーは何、どこか遠出するの?早朝からそんな大荷物なんて持っちゃって、まさかコンビニ行くわけじゃないでしょ?」


俺のキャリーバッグを指差して言う。


「ちょっと友達と旅行に。」


「へ~、どこまで行くの?」


「京都と奈良です。」


「えー、いいなあ」
美穂さんは本当に羨ましそうな声を出した。


「二泊三日ですけどね。歴史学科で京都を三日で探索するなんて無理がありますよ。しかも奈良も行くのに。」


「奈良がメインなんじゃないの?今やってるよね、遷都千三百年記念イベントがなんちゃらとか。」
美穂さんは顎に指を当てて空を見上げ、思い出してるポーズをとった。


「二晩とも泊まるのは京都ですから、実際奈良は急ぎ足になっちゃうと思います。」


「ふーん……あ、足止めしてごめん、もう出発の時間でしょ?」


「ああ、ちょっと早めに出てるので大丈夫ですよ。」


「それならよかった。じゃあ、お土産よろしくね、あはは」


「はい、もちろん。何か買ってきますよ。」


「いってらっしゃい。」

そういって美穂さんは手を振ってくれた。


「いってきます。」

同じように手を振って返して、歩き始める。後ろで美穂さんがドアの鍵を開けている音がする。


「あ、そうだツッキー。」

と、そこで美穂さんが思い出したように呼んできたので、振り向く。


「また今度、飲み会行こう。」


「……よろこんで。」



本心から、そう返事をした。




TO BE CONTINUED 《後編に続く》