続きです。前回ひとりのキャラについて掘り下げましたが、しばらくはそういう話が続きます。



もはや定型文。

新規読者様がいらっしゃいましたら、まとめページで1話から読んでいただけると嬉しいです。

パソコンからをお勧めしますよ。ケータイだと、いろいろ面倒ですから。






18


「ふああ~…」



琉也は《コロニー》へ向かいながら、大きな欠伸をした。



なかなか寝付けなかったせいで、眠気が残っている。



幽霊なのに、寝不足。



「ん~~」



背伸びをして、早朝の涼やかな空気を全身で感じていると、



「おっ」



いつものたまり場である岩場の頂上に、ある人物を見つけた。




***



ちょうど朝の座禅を終えたところに、琉也がやってきた。



「おはよう、嶋じい。」



「おお、少年か。お早う」

白いひげを蓄えた老人の霊、嶋澤弘隆が応える。



琉也、ハルカ、フミオ、綾、弘隆

このグループ内では一番年配であり、貫禄と柔和さを兼ね備えていることから、弘隆は全員に「嶋じい」と呼ばれ、慕われていた。



「渾名【あだな】で呼ぶのはかまわんのじゃが、何故姓から取ったのかのう。『嶋澤』は死後の維新時に、流行りに乗じて名乗っただけなんじゃがのう。」



「へぇ~……え?」




名字(苗字)【みょうじ】:その家の名。かばね。江戸時代までは貴族や武家の特権であったが、1869年の版籍奉還後、旧農民・町民階級である平民にも許可されたもの。




「ええ!?」

琉也はあからさまに、驚きの声をあげる。



「ちょ、ちょっと待って、ということは、も、もしかして…嶋じいって、江戸時代の人!?」



「何時【いつ】から何時までが『江戸時代』なのかわからんがの、徳川が将軍の時代、『天明』の生まれじゃよ。飢饉のさ中に授かった命じゃ、大事にせぇと童【わらべ】の頃から言われとったよ。」



「そ、そうなんだ…」

スケールがでかすぎて実感がわかないが、すごい話をしている気がする。



「でも嶋じい、霊になったってことは、寿命で死んだんじゃないんだ?」



「嗚呼、大老様が、城の門外で斬られた後じゃの、火事で死んだわい。……おお、そうじゃ」



そう言って嶋じいは羽織っていた半纏を脱いで、内側を見せる。

外は地味な色だが、内には歌舞伎役者が鮮やかに描かれていた。



「隠れたところを凝るのが仲間内で流行ってのぉ。」


「仲間…?」


「嗚呼、わしはの、町火消しをしておったんじゃよ」


「まじで!?」

琉也の脳裏に、時代劇に出てくるいろは組が浮かぶ。



「火消しの象徴、この刺し子半纏は皆の憧れじゃったよ。若い頃はよく娘にモテたもんじゃよ、ふぉっふぉっふぉ。」


「だけど、火消しが火に飲まれて死んじゃったって…かっこつかないでしょ」


「そうじゃの。この歳で無理はするもんじゃないのぉ」


「え?自分ちが火事になったんじゃないの?」


「いんや、燃えたのは六兵衛のうちじゃ。若いモンに劣りはせんと飛び込んだはいいが、煙を吸って倒れてしまったらしいの。死んじまったよ。生涯現役という誇りをもって火中に死したのは、本望じゃがの。ふぉっふぉっふぉ」

重い話にもかかわらず、軽快に笑う嶋じい。




(かっこつかない、なんてことはないな。むしろ、すごい…)


この老人は、見事な生き様を見せた立派な人物だった。





――数日後。



「嶋じい、ああ見えて熱い漢だったんだな。すごいや……」



嶋じいから聞いた様々な話の興奮が冷めない琉也はひとり、山中を散歩していた。



「あの時代っていうのは、ほんとうに……ん?」

その最中に、ふと視線を感じた。



「誰……?」

その方向へと進んでみる。



「ここか!」



ほぼ勘で茂みに腕を伸ばすと、



「やん」


「あっ」



そこには、綾がいた。




TO BE CONTINUED