こんにちは、リブラです。
今回は「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンスを育てる>」の第9章の解説です。
*母親が無意識にかけた直接暗示で息子のイボが消えた事例
この事例はエリクソン心理療法の研究家であり、この本の3人の著者のひとりのダン・ショートが知り合いのソーシャルワーカーの女性から聞いた話です。
そのソーシャルワーカーは、「もうちょっとで、催眠療法に立ち会えるところだったのに、予約をキャンセルしたことがあるんですよ」と言いました。
彼女の8歳の息子は、手のイボを何度も治療しているのですが、除去するとすぐ出てきてしまうのです。
しかも、新たに出てくるイボは次第に大きくなっていきました。
そこでショートが最終手段としてヒプノセラピストのところへ行くことを提案すると、早速彼女は予約を入れました。
その日から予約日の前日まで、毎晩、彼女は息子の緊張緩和のため、ベッドに入る前、「優しい人が土曜日(予約日)にあなたとお話をして、イボを消してくれるからね」と話し、一緒にその日を指折り数えて待ちました。
ところが、予約日当日の朝、息子を起こすとイボは跡形もなく消えていたのです。
それ以降、彼女の息子のイボは再発しませんでした。
数年後、何かの拍子にそのことが話題に上り、彼女が未だに不思議でたまらないといったので、ショートはその理由を解説しました。
「あなたはご自身で催眠暗示を息子さんに毎晩かけていたのです。
そして、言い忘れていたのですよ。
土曜日にその優しい人に会ってイボを取ってもらうまで待ちなさいね、って」
「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」より
わたしたちは病気になると、つい、症状を取り去ることに意識を向けがちですが、「病は気から」という諺もあるように病気の症状は心のサインを身体で表現していることが多いのです。
今回の事例は、母親が無意識にかけた暗示の効果のことが書かれていましたが、8歳の息子にイボが繰り返し発生していたことに焦点を当てると、この子の潜在意識が母親の関心を惹きつけるためにイボを作り出していたように思います。
おそらく、この母親は、息子にイボが出現する直前は、ソーシャルワーカーの仕事の方に夢中だったのではないかと推測されます。
まだ8歳の息子は、仕事に母親を取られてそれが寂しかった。
だから、彼の潜在意識は確実に母親が彼に注目をするように手にイボを作り出した。
身体は顕在意識の言葉よりも、潜在意識が送るイメージに従います。
彼の潜在意識のイメージにより、本人の意志(顕在意識)はイボを望んでなくとも、繰り返しイボを作り出し、母親の関心が息子にいくように仕向けたのです。
母親と子どもの心は、イボの治療を目的にひとつになり、絆が深まりました。
母親は、イボの治療で味わう息子の恐怖感も想像できるようになりました。
新しい治療法に対する期待も、息子と共に感じられるようになっていました。
クライエントとの共感・信頼構築は、ソーシャルワーカーにとって欠かせません。
この母親にとっても、息子の恐怖や希望が自分のことのように理解できる共感能力は、プロとして研鑽する価値のある能力だったのです。
ここで、この母子の顕在意識と潜在意識のニーズが一致しました。
顕在意識と潜在意識の目的の一致が起こると、その目的の具現化は必ず成就します。
子どもの潜在意識は、新しい治療に対する怖れと期待を母親が共感してくれることで、もう、イボを発生させる必要がないと思ったのでしょう。
そして、毎晩聞かされる「優しい人が土曜日(予約日)にあなたとお話をして、イボを消してくれるからね」を彼の潜在意識はダイレクトに受けとめて、「母が優しくお話してくれる金曜の夜までにイボを消さないと、他の優しい人と交代されてしまう」と思ったに違いありません。
イボが嘘のように一晩で消えた土曜日の朝に母と息子は共に喜び、その子の潜在意識は、もう、イボを発生させなくても母とは信頼の絆でつながったと安心したはずです。
暗示とか、願望とか、祈りとかは、「悪魔を出し抜け!」でも出てきましたが、1人よりも2人以上の方が「マスターマインド」が働き、潜在意識~集合意識に届きやすいので、具現化が促進されます。
そして、最初はイボがなくなることが母子の共通の目的だったのでしょうが、毎晩暗示のような「お話」を繰り返すうちに、目的がイボを消すことから、催眠療法への興味へ取って代わっていったことも効いた可能性があります。
目的の成就にフォーカスしすぎると、かえって具現化が遠ざかる仕組みがあります。
「引き寄せの法則」でも、具現化までのタイムラグは忘れて待つのがちょうどいいと言われています。
目的の成就に執着すると、偏りすぎたエネルギーを平らにする平衡力が働き、目的の具現化の妨げになる(望みと反対の結果になる)のです。
また、目的の成就に執着することは、目に見える結果にこだわる顕在意識が、目に見えない領域で働く潜在意識の力を信じない現れと受けとられて、顕在意識と潜在意識の信頼構築にひびを入れることにもなります。
今回の事例でわかるとおり、わたしたちの潜在意識は一晩で症状を消し去るほどの力があります。
暗示が潜在意識に届いただけで、長年苦しんできた症状が消えるのは、それが潜在意識に作られた思い込みによって作られているからです。
良い思い込みならば、このケースのような治癒を招き、
悪い思い込みならば、ネガティブな観念に心を縛られるようになります。
今回の母親が無意識にかけた暗示は、良い思い込みを作り治癒に役立ちましたが、悪い暗示を無意識に刷り込んでしまうこともあります。
自分に向ける否定的な言葉は、くり返すと暗示になって潜在意識に刷り込まれるので注意が必要です。
どうせ刷り込むのだったら、自分にとって気分が良くなる言葉を暗示にした方が良いセルフイメージの構築に役立ちます。
潜在意識に良いセルフイメージを構築すると、それだけで良い人生のタイムラインを引き寄せる強力な磁石になります。
次回は「エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」の解説を予定しています。
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