1
クラスが騒がしい。
このクラスから英雄が出たからだ。
第二地上急襲部隊。
幼馴染みのマチルが軍学校に居ながらにしての抜擢だった。
子どもたちからヒーローとしての視線を集める部隊だ。
この部隊に入ることを許されると昇進することも出来る。
しかしそんな人はいない。
臆病者と罵られるからだ。
もしくは、周りに労働者がほとんどだから手足となって動く方に情が湧くのか、昇進はしない。
その栄光の部隊にして、死ぬことを約束された部隊の一員にマチルは選ばれた。
2
マチルは一人で戦闘機の操作のおさらいをしている。
もう学校に生徒はいない。夕方、西日が射す教室に二人だけだ。
「嬉しい?」
「当たり前だ。国のために誠意を尽くせるんだからな。カマルも早く軍人になれるといいな。」
「人を一生懸命殺す人間にはなりたくない。」
「それは我が身を滅ぼすぞ。この国を守るためには仕方ない犠牲だ。俺にはルーダもいるしな。」
ルーダはマチルの婚約者だ。
この時代、軍学校に通っている者は成人同様に扱われ、結婚する者も少なくない。
「だからだよ。ルーダはどうする?」
「ルーダを守るためにもやらなきゃいけないんだ。」
しばらく沈黙した後マチルは立ち上がった。
練習を終えたようだ。
「ジニアがさぁ、なんで軍人の墓に植えられるか知ってる?」
「ここら辺にたくさんあるからだろ?」
「ジニアには花言葉があるんだよ。」
「女々しいな。そんなこと覚えないでカマルは銃を覚えろ!」
3
戦闘機で戦場に向かう前夜。
マチルの家ではパーティーが開かれていた。
両親は喜んでいる。
婚約者のルーダも凛とした姿で座っている。
これがマチルの最後になるのに皆はマチルを誉れに思い、笑顔で宴をする。
友人に死んで欲しいわけない。それは敵軍も同じはずだ。
今日、別の国で同じことが起こっているのだろうか。
明日失う友人を、家族を、婚約者を…。
4
突撃する前マチルは挨拶に来た。
マチルはポピーを渡してきた。
軍人は出発の日、口を開かない。
情けない言葉を吐かないために。
自らの意志で死んだ後と同じ状態になることによって不意にくる敵軍の攻撃によって死んだわけではないとアピールするためだ。
ポピーを渡したのは最後の言葉だ。
花言葉は「楽しき思い出」「幼馴染み」
花言葉を女々しい、と言っていたマチルは、何よりも伝えることを大事にしていた。
少し枯れているところを見ると、何日か前から用意していたのだろう。
花言葉を女々しいと言っていたあの日より前に。
5
訃報は当然のようにきた。
つけることのない勲章とともに。
6
訃報が届いた1ヶ月後、俺も呼ばれた。
エリートクラスの一員だからだ。
当然といえば当然。
選ばれると生徒の前で挨拶がある。
俺はその時に昇進すると言った。
第二地上急襲部隊ではなく、戦略部隊に。
怒号も聞こえた。罵声も聞こえた。
でもそんなことはどうでもいい。もう世界の誰にも悲しい思いをして欲しくない。
挨拶を終えると罵声を背に校舎を離れ、すぐにマチルの墓に向かう。
ジニアで囲まれた墓。
その花言葉通り
「別れた友への思い」を馳せる。
7
ルーダは一人で白いドレスを着る。
死んだ軍人の婚約者は一人で式を挙げるのだ。
朝日に照らされたその姿はとても綺麗である。
その隣にマチルはいない。
もういない。
ルーダは最後の夜と同じように凛とした姿だ。
その手に紫色のスカビオサの花束を持っている。
しかし、その姿はやはり悲しい。
スカビオサの花言葉は
「朝の花嫁」
そして
「不運な愛」
だからだ。
この紫色の花が、白く美しいミカンの花になるだろうか。
近い未来、「花嫁の喜び」という意味を持ったミカンの花の花束を花嫁が持つ日が来るだろうか。
花婿のいないこんな式を、やることのない未来を。
上に立たなければ変えることは出来ない。
罵声を背にして
一人で歩く白い花嫁の背を見て
「別れた友への思い」を実現するためにイバラの道を歩いていく。
「やっとあがり」
そう書かれたノートの切れ端。
靴の下で飛ばないように挟まっていた。
もう、あがり?
そう、あがり。
俺はあがれなかった。
手首にある傷がその証だ。
なんでそうなるんだろ。
屋上に呼び出したのは何で?
ドアを開けると落ちるようにしたのは?
支え、支えられてる関係だと思ってたのに。
彼女はノートの切れ端だけを遺したわけではなかった。
遺書。
というにはあまりに悲しいものだった。
恨みも書かれているそれは、読む者の心を蝕んだ。
でも一つ
俺に対しては謝罪が書かれていた。
何度も何度も謝られた。あなたは悪くない、と。
それでも溢れだす闇を止められなかった、と。
彼女が遺したのは遺書だけでもなかった。
彼女は花を飲み込んでいた。
その花はアマという。
背の高く。小さい青い花をたくさんつける。
花言葉を二人で調べた事があった。
冬。図書館で調べた。
室内にも関わらず暖房がついてない。
マフラーまでして調べた。
ダッフルコートまで着てた。
あの時。
ねぇあの時。
死にたいって思ってた?
あんな笑ってて闇を隠してた?
俺では支えられなかった?
あの時。
あの時調べたアマの花言葉
「あなたの親切が身に染みる」
お前はそれを飲み込んだ。
どんな気持ちだったか分かる気がする。
いや、分からなくてもいい。
信じたい。
俺は彼女にスギノハを手向ける。
手首の傷はなくならない。
俺があがる時は最後の最後。
その一歩先でずっと待ってて欲しい。
誓うためのスギノハ。
次に顔を合わせる時に恥ずかしくないように。約束をちゃんと守れるように。
その為のスギノハ。
花言葉は「あなたのために生きる」
そう書かれたノートの切れ端。
靴の下で飛ばないように挟まっていた。
もう、あがり?
そう、あがり。
俺はあがれなかった。
手首にある傷がその証だ。
なんでそうなるんだろ。
屋上に呼び出したのは何で?
ドアを開けると落ちるようにしたのは?
支え、支えられてる関係だと思ってたのに。
彼女はノートの切れ端だけを遺したわけではなかった。
遺書。
というにはあまりに悲しいものだった。
恨みも書かれているそれは、読む者の心を蝕んだ。
でも一つ
俺に対しては謝罪が書かれていた。
何度も何度も謝られた。あなたは悪くない、と。
それでも溢れだす闇を止められなかった、と。
彼女が遺したのは遺書だけでもなかった。
彼女は花を飲み込んでいた。
その花はアマという。
背の高く。小さい青い花をたくさんつける。
花言葉を二人で調べた事があった。
冬。図書館で調べた。
室内にも関わらず暖房がついてない。
マフラーまでして調べた。
ダッフルコートまで着てた。
あの時。
ねぇあの時。
死にたいって思ってた?
あんな笑ってて闇を隠してた?
俺では支えられなかった?
あの時。
あの時調べたアマの花言葉
「あなたの親切が身に染みる」
お前はそれを飲み込んだ。
どんな気持ちだったか分かる気がする。
いや、分からなくてもいい。
信じたい。
俺は彼女にスギノハを手向ける。
手首の傷はなくならない。
俺があがる時は最後の最後。
その一歩先でずっと待ってて欲しい。
誓うためのスギノハ。
次に顔を合わせる時に恥ずかしくないように。約束をちゃんと守れるように。
その為のスギノハ。
花言葉は「あなたのために生きる」
カマルは一人、畑で働いてました。
カマルのお母さんは、病気にかかっていて、ずっと寝たきりでした。
お父さんは、カマルが生まれた後すぐに死んでしまったので、カマルが働かなければいけませんでした。
カマルは学校に行っていましたが畑仕事が忙しくていつも寝てばかりでした。
なのでカマルは勉強が出来ませんでした。
勉強が出来ないので、村の子供達には、バカだバカだ、といじめられていましたが、お父さんの代わりにお母さんを守っていればいつも神様が見ていてくれる、と思っていました。
頑張っていればきっと神様はカマルにごほうびをくれる、とお母さんも言っていたので毎日、畑仕事を頑張りました。
ある日、村の子供がカマルに種をくれました。
「山にある、滝の水をこの種にまくと、どんな願いもかなえてくれんだ。」といってカマルは種をもらいました。
その種をカマルに渡すと、村の子供達は、「カマルは信じてるぞ。バカだバカだ。」と言いました。
本当はそんな種はありません。
村の子供達は嘘をついていたのです。
しかし、カマルは、嬉しくなって種を畑の横にある庭に埋めてから早速山に行きました。
山は村から離れていて、歩いていくと、大人でも疲れてしまうくらいでした。
長い時間をかけてカマルは山に行き、滝の水を汲んで帰りました。
水を持っているのでとても重く、帰りはとても大変でした。
とても疲れましたが、庭に埋めた種に水をまくと、不思議と疲れがなくなりました。
少しずつ願い事が叶う瞬間に近づいているからでした。
カマルは毎日、毎日、畑仕事をして、学校に行って、山に行って、ということを繰り返していました。
やがて、お母さんの病気が悪くなってきました。
だけど、カマルにはお医者さんが呼べません。
お医者さんに診てもらうにはお金がたくさんいるからです。
カマルは、種に水をあげ、花を咲かせて願い事を叶えるために、また山に行きました。
その日は山に走って行きました。
山に登ると、そこには虹が大きく出ていました。
しかも、虹の上にもう一個、さらに大きな虹がかかっているのです。
カマルはどうしてもその虹をお母さんに見せてあげたいと思い、カバンを開けました。
そして紙にクレヨンで大きな虹を二つ書きました。
そして水を汲んで帰り、すぐにお母さんのところへ行って虹の絵を見せてあげました。
カマルは、お母さんの笑顔が、涙で滲んでよく見えませんでしたが、ちゃんとお母さんは笑っていました。
でも、カマルが涙を拭って絵をカバンにしまうと、お母さんは、目をつむって動かなくなりました。
お母さんは死んでしまったのです。
カマルはとても悲しくなりましたが、種に水をあげにとぼとぼと歩いて行きました。
カマルはその種が芽を出さないことを知っていました。
でもカマルは、頑張りました。
頑張ると神様がごほうびをくれるからでした。
神様はごほうびをくれました。
お母さんの笑顔でした。
カマルはお母さんに笑って欲しかったのです。
それが願い事でした。
庭に出てふと、辺りを見ると種が埋まっていた近くに白い花が一面に咲いていました。
そしてその上には大きな虹が一つだけありました。
しかしカマルには涙で二つに見えました。
カマルのお母さんは、病気にかかっていて、ずっと寝たきりでした。
お父さんは、カマルが生まれた後すぐに死んでしまったので、カマルが働かなければいけませんでした。
カマルは学校に行っていましたが畑仕事が忙しくていつも寝てばかりでした。
なのでカマルは勉強が出来ませんでした。
勉強が出来ないので、村の子供達には、バカだバカだ、といじめられていましたが、お父さんの代わりにお母さんを守っていればいつも神様が見ていてくれる、と思っていました。
頑張っていればきっと神様はカマルにごほうびをくれる、とお母さんも言っていたので毎日、畑仕事を頑張りました。
ある日、村の子供がカマルに種をくれました。
「山にある、滝の水をこの種にまくと、どんな願いもかなえてくれんだ。」といってカマルは種をもらいました。
その種をカマルに渡すと、村の子供達は、「カマルは信じてるぞ。バカだバカだ。」と言いました。
本当はそんな種はありません。
村の子供達は嘘をついていたのです。
しかし、カマルは、嬉しくなって種を畑の横にある庭に埋めてから早速山に行きました。
山は村から離れていて、歩いていくと、大人でも疲れてしまうくらいでした。
長い時間をかけてカマルは山に行き、滝の水を汲んで帰りました。
水を持っているのでとても重く、帰りはとても大変でした。
とても疲れましたが、庭に埋めた種に水をまくと、不思議と疲れがなくなりました。
少しずつ願い事が叶う瞬間に近づいているからでした。
カマルは毎日、毎日、畑仕事をして、学校に行って、山に行って、ということを繰り返していました。
やがて、お母さんの病気が悪くなってきました。
だけど、カマルにはお医者さんが呼べません。
お医者さんに診てもらうにはお金がたくさんいるからです。
カマルは、種に水をあげ、花を咲かせて願い事を叶えるために、また山に行きました。
その日は山に走って行きました。
山に登ると、そこには虹が大きく出ていました。
しかも、虹の上にもう一個、さらに大きな虹がかかっているのです。
カマルはどうしてもその虹をお母さんに見せてあげたいと思い、カバンを開けました。
そして紙にクレヨンで大きな虹を二つ書きました。
そして水を汲んで帰り、すぐにお母さんのところへ行って虹の絵を見せてあげました。
カマルは、お母さんの笑顔が、涙で滲んでよく見えませんでしたが、ちゃんとお母さんは笑っていました。
でも、カマルが涙を拭って絵をカバンにしまうと、お母さんは、目をつむって動かなくなりました。
お母さんは死んでしまったのです。
カマルはとても悲しくなりましたが、種に水をあげにとぼとぼと歩いて行きました。
カマルはその種が芽を出さないことを知っていました。
でもカマルは、頑張りました。
頑張ると神様がごほうびをくれるからでした。
神様はごほうびをくれました。
お母さんの笑顔でした。
カマルはお母さんに笑って欲しかったのです。
それが願い事でした。
庭に出てふと、辺りを見ると種が埋まっていた近くに白い花が一面に咲いていました。
そしてその上には大きな虹が一つだけありました。
しかしカマルには涙で二つに見えました。
