神は人を作ろうとした時、完璧にしようとした


だけどやめた


彼らの願いを聞き入れたからだ


自分のことも相手のことも分からないようにした

それでは可哀想だと神は人に言葉を与えた
それを使うのに大切な知能を与えた


この宇宙で唯一の不完全を作ったのだ



他の生き物はすれ違うことはない
人だけが不完全故にすれ違う


その人間に他の動物を治めるようにさせたのは
自分達の不完全を分かってほしいから


それを教えるために
神は宇宙を作った


太陽の光を雲で遮らせたのは
永遠に完全にはなれない事を示すためだった


水が天を目指してもある高さで止まる
それが光を遮る


それはつまり『自分』と『他人』に壁が出来る瞬間だ

壁が出来ると

光が少なくなる
それによって温もりが失われる
さらに完全を目指して水が天へ上ると雲が増えて雨が降る

雨が降ると温もりがさらに失われる


自分と他人での関係において完全を求めるとこうなってしまう



人間はどうなるのか

気付く人が多ければいい




神と人が暮らす頃の話


神には時間というものがない

そして

人は時間を持っていた





1、最初の日



最近人は苛々している

他人が分からないからだ


そして自分も分からないからだ


完璧などそこになく

常に何か欠けている状態だった


僕もそうだ

他人が分からない
他人が怖い

僕と違うからだ



それを知った神が言った

全部教えてやるって

だから僕ら言ったんだ

そうしてって



すると僕らは全部が分かった


リンゴがなんであの形なのか
空の色がなんであの色なのか


その人が何を考えてるのか



そしたら会話がなくなった


今まで興味があって仕方がなかった虫のことにも興味がなくなった


分かるでしょ

全部知ったからさ




何にもなくなった

全てを知ったら全てがなくなった



まさに永遠



永遠は退屈で


当たり前の連続で


未来とか過去とか


そんなのなくなった




だから神に言ったんだ

戻してって


全部知ったのに戻し方が分からない
戻すとどうなるのかも分からない


神にしか出来ないことがあるらしい




神が言った


戻したら僕ら死ぬらしい

時間って回転なんだって



回転させたらその勢いで全部壊れるって



でも僕ら耐えられなかったんだ


退屈に

永遠に



だから僕ら神に言った


いいよって


でも条件をつけた


全部壊れて直す時
時間を作ってくれって



人が完璧になれなくてもいいから退屈しないようにしてって

他人が分からなくてもいい

頑張ってもホントのことに追い付けないことがあってもいい



きっと分からなくて苛々することも分かってる

永遠を欲しがっても手に入らなくて悲しむのも分かってる



でも完璧になんてなれないからこそ楽しいってことに気付いて欲しい




もしかしたら時間を作った時点で

退屈から解き放たれて
永遠の好奇心が湧くかも



だったらそれもまた永遠だ


いい永遠だ



全部知るんじゃなくて

全部知ろうとすることの方が楽しい



それを分かって欲しい

気付いて欲しい



そう思いながら

僕らは僕らに時間を与えた


未来を作った




(1)



田舎特有なのか、学校は綺麗で大きい。

校舎は厳格な教会のような風情で、螺旋階段やイス、机等が並ぶ談話スペースには大きなガラス張りの壁がある。


冬はかなり寒くなるので暖房設備はしっかりしている。

屋上で暖かい空気を作り、校内の至るところにあるパイプがそれを校舎内に運ぶ。



正門を通り、下駄箱まで校舎に沿ってぐるっと回る。

その道の途中、桜が両側に多く植わっている。

今日は風が強く花吹雪が美しく舞う。


その奥にある駐輪場に自転車を停め、下駄箱まで歩いて鞄から出した上履きを履く。


下駄箱があるスペースから少し歩くと壁一面に掲示板があり、生徒が騒ぎながら群れている。


今日は入学初めてのクラス替えがある日だ。




(2)



教室に入るともう既に数人が話していたり、出席番号と照らし合わせて机を数え、自分の席を探していたりする。


俺は2番だから探す手間がない。


「おう。」

「おはよう。」

後ろの席の直也に声をかける。


上野直也は小学校からの幼なじみだ。

髪はこだわりがないのか、ただ切って伸ばしただけの特徴のない髪型で、制服も学ランの第1ボタンを外している以外はきちんと着ている。


身長は170センチ程度で、背の高いイメージではない。


陸上をやっていたのに日焼けはしておらず、若干不健康そうな風体だ。


顔はいつも微笑んでいるような優しい顔で、第一印象を悪く言う人はいないだろう。


「同じクラスになれてよかった~。こうちゃんがいないと話す相手いないからさ。同じクラスになれないかな~って1年の時から思ってたんだから。」


俺をこの呼び方で呼ぶのは直也しかいない。

そして俺の知る限りこんなに嬉しいという感情をあっけらかんと話す無邪気さを持つのも直也しかいない。


「そう?直也結構話しかけられたりするじゃん。女子にも話しかけられたりするし。」


直也は物腰が柔らかく、仕草や考え方が面白いので自然と人を引き寄せる。


「話すっていってもその人と話してるんじゃなくてその人の脳ミソと話してるみたいだからさ。つまんないよ。」


相づちを打とうとしたら肩をポンと叩かれた。

真人だ。


「おお。真人。」


「おはよう。」

真人は俺ではなく直也に挨拶する。


「おはよう。こうちゃんの親友だ。」


「そうそう。」


真人は俺の肩を力強い手でぐっと寄せ、反対の手の親指を立て、グーのジェスチャーをして直也に突き出した。


「また使ったな。」


俺は直也にわざとらしく怒った口調で言う。



「僕には隠せないよ。」


両手で人差し指と親指で丸をつくり、眼鏡のように目に当てながら言う。