始まりは15年ほど前の冬の事。
仕事中に突然眩暈に襲われた。
息が苦しく鼓動が激しい…
初めて襲われる感覚に自分の身体に
何が起きているのかわからなかった。
脂汗が全身を冷たく流れている。
当時銀行の窓口を担当していたので
店頭で倒れては大騒ぎになる…と
デスクにしがみついて身体を支えた。
意識を保つのが精一杯だった。
その日から動悸・息切れ・目眩と
こめかみを締め付ける頭痛が
一向に収まらなる事はなく
仕事の合間に幾つもの病院を回った。
内科、脳外科、脳神経外科など
時間をかけて様々な検査を受けたが
どの科でも機能的な問題はなく
『過労もしくは自律神経の不調』
と言う診断が下された。
内科ではビタミン点滴、血行改善薬
脳神経外科では緊張を和らげる為に
筋弛緩作用のある薬を処方された。
しかし症状は少しも良くならないまま
もどかしく多忙な毎日が過ぎていった。
季節は春を迎えようとしていた。
通院の帰りにフラッと立ち寄った書店で
一冊の本を手に取った。
『お薬大辞典』
さっき脳神経外科で処方された
ビニール袋一杯の薬の名前を辿った。
薬の作用・副作用、服用方法、服用上限
そして治療に使われる科が
いくつか書かれていたその中で
『精神科・心療内科』
が、目に留まった。
私がかかるのはこの科ではないか。
検査では機能的な異常は
見当たらなかった。
「だとしたら…」
直感と言うより、確信があった。
すぐに病院辞典を手に取り
最寄りの心療内科・精神科を調べた。
「今すぐにでも診てもらいたい」
と、書店を出てすぐに電話で問合せた。
心療内科は当時からとても混んでいて
初診は1ヶ月待たなければならなかった。
それでも良かった。
訳のわからない不調の毎日に
不安を抱えて過ごすより
1ヶ月後の診察に願いをかけた。
「今度こそ何かがわかるかもしれない」
藁にもすがるような気持ちだった。
今思えば、私の脱出劇のきっかけは
この瞬間だったのかもしれません。
なぎ
