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原発事故で揺らぐ温室効果ガス25%削減目標 ~ 産経新聞
2013年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを議論する国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)に向けた作業部会がバンコクで4月3日から6日間の日程で開かれた。交渉自体は、先進国と途上国との溝が深く議題を詰めるだけにとどまったが会議期間中、「日本の2020(平成32)年までに1990年比25%削減目標の見直しも」というニュースが駆けめぐった。発端は、地震で放射能漏れを起こしている福島第1原発の影響を踏まえた日本代表団の発言だった。日本の温暖化政策の行方は-。
■震災ショック
作業部会の全体会合はまず、東日本大震災の犠牲者らに哀悼の意を表明、各国代表団らが1分間の黙祷(もくとう)を捧げることから始まった。
今回の会議は、昨年12月、メキシコで開かれたCOP16のカンクン合意の中身を詰めるだけで大きなニュースになりにくいと予測されていたが、4月4日付の各新聞に「25%削減目標見直しも」という見出しが大きく踊ることになった。
発端は、日本代表団の1人としてバンコクを訪れた南川秀樹環境事務次官の邦人記者向けブリーフでの発言だった。
「25%の日本の目標について見直しの対象ということか」という記者の質問に「当然、議論の対象になるだろう」と答えた。
翌日、枝野幸男・官房長官も記者会見で「一般論として、東日本大震災の前と後でわが国の取り巻く状況が大きく変化した。今回の震災の課題を踏まえて検討、対応しなければならない」と述べ、見直しの可能性を示した。
■発言の真意
「オープンの場で議論するべきだ。密室の中で決めるといったことは逆に無責任にといえないか…」
南川事務次官に発言のその真意を聞くと、こんな答えが返ってきた。
国会には、25%削減目標を柱にする政府与党の温暖化対策基本法案が継続審議になっており、自民、公明もそれぞれ法案を提出している。国会審議の中で、原発や震災の影響をふまえた目標を考えていくべきだというのだ。
有識者や専門家からなる委員会の中で、再び削減目標やコストなどをを計算しなおすといったことは行わない方針だという。
日本の温室効果ガス削減目標は原子力発電を前提にしている。昨年のエネルギー基本計画で、(1)発電時に温室効果ガスを出さない原発を2020年までに9基新設(2)定期検査期間を短縮するなどして原発の稼働率を約65%(09年度)から85%に引き上げることで、25%削減目標は到達できるとしていた。
しかし、福島原発の事故で、原発10基が稼働を停止し、原発全体の2割弱にあたる計860万キロワットの出力が一気に失われてしまった。
原発への不信感が広がっており、各電力会社は経営計画の発表先送りを表明している。「原発の新増設や運転再開の議論がまったくできない状態」(経済産業省幹部)であり、石油や石炭、液化天然ガス(LNG)の代替を急いでいる。 電力不足を補うという観点で、東京電力がガスタービンなどの火力発電施設を新増設する場合、環境アセスメントを省略できるとした。
管直人首相はエネルギー基本計画の見直しを指示しており、原発を前提にした温暖化、エネルギー政策は大きく疑問符がついてしまった。
■原発のない社会?
原発を前提にしない25%削減目標の到達ははありえないのか。
市民団体や再生可能エネルギーを推進する研究所は再生可能エネルギーの割合を増やし、古くなっていく原子炉を順次廃止するなど25%削減目標を達成する方法はあると訴える。
代替エネルギー研究で知られる環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、現在10%程度である太陽光や水力、地熱といった自然エネルギーの割合を、ドイツと同様のペースで増やすことで2020年までに30%、50年には100%に上げ、エネルギーをシフトさせれば、目標は達成できると主張する。
民主党の中でも、国際社会に25%削減目標を宣言した鳩山由起夫前首相はじめ、25%削減目標を見直すことに慎重な意見がある。
■「原子力ルネサンス」にひび?
福島原発事故は日本国内だけではなく、海外のエネルギー政策にも大きく影響を与えている。
発電時に温室効果ガスを出さない原子力発電所は““クリーンで低コスト”であることから経済成長が著しい中国やインド、ベトナム、カンボジアはなどは原子力発電の推進を進めている。その気運は「原子力ルネサンス」とたとえられていた。
しかし、そうは問屋がおろさなくなっている。米国や欧州も今回の福島原発事故を受け、国内で高まる原発反対の動きを抑えるのに苦慮している。
「2国間クレジット」として、日本が温室効果ガス削減技術として売り込もうとしていたのはまさしく、原発技術だった。
福島原発事故の発生から数日の間に、ある原発メーカーの技術責任者に影響を聞いてみると、「この地震を乗り切ることができれば、日本の原発技術は未曾有の震災で起きた事故も制御できたとして逆に強みになる」と楽観的な見方を示していた。今となってはそんな見方は木っ端みじんに砕け散ってしまっているが…。
■ダーバンに暗雲?
バンコクでの作業部会に話は戻る。
条約作業部会議長が会合に先立って示していた議題案をもとに交渉が進められたが、COP16で採択されたカンクン合意の実施に集中したい先進国と、カンクン合意で積み残されていたテーマの交渉を再開し、全体の枠組みを決めた2007年のバリ行動計画に戻りたい途上国がぎりぎりまで対立した。特に、強硬だったのはブラジルとツバルだったという。
カンクン合意で積み残されていたテーマとしては、技術の知的所有権や気候変動による賠償メカニズムなどだ。
このため、採択された議題には「issues that are still be concluded(まだ結論のでていない問題)」という言葉が付け加えられたり、「Additional matters(その他)」という項目が加わるなどした。
「議題はさっさと決まって審議を一巡ぐらいはできると思っていたが誤算だった…」(日本の交渉官)とため息をつく。
最初の交渉であるため、先進国途上国とも強気にでているとはいえ、厳しい現実を見せつけた。
■弱まる日本の発言力
次期枠組みにおいて、「京都議定書の枠組みを維持したままの第2約束期間延長(2013年以降)には断固反対」という日本の立場は変わっていないというが、日本の交渉での発言力が弱まっていることは否定できない。
作業部会に先立って開かれた先進国、途上国の削減目標、行動に関するワークショップでは、各国がパワーポイントを使って具体的な細かい数字を出して発表したという。しかし、日本は震災、原発事故を受けてこうした発表を行うことができなかった。
「未曾有の震災に見舞われた日本をすぐに批判する声は国際社会にないが、このままではすまされない。早く国会審議を進め、日本の目標について決めてもらわなければ、日本抜きで国際交渉が進む恐れがある」(環境省幹部)と危惧(きぐ)する。
夏の電力消費のピークを前に日本全国で節電が進められている。震災復旧に期待する声もあるが、実質国内総生産(GDP)が3・9兆円、年率0・84%押し下げるという試算もある。
原発の稼働がストップしたことで温室効果ガス排出量がどれだけ増えることになるかは不透明だ。
明日香寿川・東北大教授は「今の時点で2020年の削減目標を議論するのは不確定要素が大きいが、安易な石炭火力は避けるべきだ。化石燃料の価格が高騰することが見込まれる中、政府は再生可能エネルギー・低炭素社会にむけた、『低炭素復興債』を発行するべきだ」と提案する。
今回の震災、事故でこれまで温室効果ガス削減が難しかった民生部門も“節電マインド”に転換している。
日本はどういった未来に進むのか、これからの日本のあり方を決める正念場にきている。
