こんな27歳が昭和の日本にいたなんて😅


本作のテーマはズバリ疎外。豊かになって一度は見えなくなったはずの事象も、失われた30年を経て貧困化した日本でまたリアルな姿を見せている。経済的困難だけでなく、様々な理由で社会から幸せなコミットを拒まれていると感じている人々が増えていると感じて久しい。

戦後間もない頃は、今以上に社会から疎外された人たちが多くいた。皆が貧しく、疎外感は経済的側面よりも別の理由で強く感じられたのでは。各々が抱える壁の存在や感覚を独特の思考で描いた本作は、それまでの日本文学にはない世界観と天才性を強烈に輝かせる。

理解のハードルは正直高く、内容の要約も簡単ではない。想像性の飛躍を楽しみつつ、いつの時代でも残り続ける深いテーマに向き合う安部公房の文学。ここからどういう世界を見せてくれるか、新潮文庫のシリーズを少しずつ渉猟したい。胸高鳴るも長い旅路になりそうだ…