シンギュラリティはもう来ているのか😱

ChatGPTが驚きの能力を発揮しているが、登場してたった2年ほど。自分たちが生きる世界にどういった影響を与えるのか、ICTに疎い自分には想像できない点が多い。すでに教育では、AI搭載ソフトが教師となるシステムが稼働。対岸の出来事では済まない時代になった…

著者は超○○法シリーズで知られる野口悠紀雄。常に時代の先端を意識したパフォーマンスで、日本の知を切り拓いてきた第一人者だ。定評が高い著者の指南書を目にして、思わず飛びついた。久々の野口節を懐かしく感じつつ、予想以上の未来像に戦慄が走る場面が多かった。

詳細な仕組みやシステムについては、正直分からない部分も少なくなかったが、ChatGPTで何ができるのかという概観は理解できた。ディープラーニングを繰り返し、指数関数的な発展を遂げるAI。これまでの革命と異なり、知的労働の代替により社会は劇的に変わる。

開発をリードする米中の狭間で漂流を続ける日本。見知らぬ社会に巻き込まれる不安と、急速に変わる世界から取り残される恐怖。ややもするとディストピアしか浮かばないが、富の再配分に留意すれば成長の果実を享受できるユートピアになる可能性もあるらしい。

将来を見据えた適切な政策と制度改革が必須だと説く見解には、旧大蔵官僚で経済学者だからこそ説得力に満ちる。ベーシックインカムより既存制度の拡充で、より平等な社会を実現しようという現実的な提言には納得。不可逆な流れを幸せに繋げる第一歩となる一冊だと思う。