哲学の故郷が歩んだ歴史を知りたくて🤔


ローマ人の歴史を綴り続けて1つのジャンルを築いた塩野七生。途中で挫折してからそれきりだったのに、ギリシア人の歴史が改めて気になった。民主制や哲学を生んだ独自の文化の背景に何があったのか。全4巻の長い旅路の最初からグイグイ引き込まれた。

2度のペルシア戦役に直面したギリシアは、アテネとスパルタを軸とした都市国家連合軍で大国の侵攻に対峙する。圧倒的な数の差を前に、柔軟で先見性ある戦略と士気高い市民兵の勇猛さで、見事に平和を守り抜く。中でもテミストクレスの活躍は図抜けていた。

イノベーション志向の塊であるアテネと、軍人魂で頑固一徹のスパルタ。海軍力を一気に高めたアテネの頭脳と史上最強陸軍のスパルタのタッグが、10倍以上の大軍も蹴散らした現実に驚きつつ、改めてリーダの資質や参加意識の重要性を痛感させられた。

一方で陶片追放などの手段で政敵を追い込むなど、未だに続く人間の愚かさが。歴史の叙述や哲学が生まれた背景を知れば、一見無味乾燥な学問にも生き生きした姿が浮かび上がる。古代を現代に絆ぐ意義ある試みの次の展開がどうなるのか、今から楽しみだ。