さあ、親愛なるシャフリヤール王、今宵もシンドバッドの冒険のお話をいたしましょう。

シェヘラザードは、黄金の髪飾りに手をやりながら、語り始めました。



シンドバッドは、お姫様の16歳のお誕生日会に招かれました。

国の内外から光り輝く宝石や織物がお祝いの品として献上され、

大きな広間を埋め尽くしました。


国一番の賢者と尊敬される聖者も招かれ、お姫様にお祝いのお言葉をお伝えることになりました。


「お姫様、貴女様は20歳までに

諸国の王子様から求愛され、ついには真実の愛で結ばれた結婚をなさいますでしょう。

しかし、そのためには、いくつかの試練をご自身で乗り越えなければなりません。

こればかりは、知恵者の家臣も忠実な侍女たちも、お助けすることができません。」

それを聞いて、お姫様は不安になってしまいました。

「誰も助けてくれないのですか。私の力だけで真実の愛を見つけなければならないのですか。」


「お姫様は、誰からも愛され大切に育てられておられます。

それを常にものさしとして、

大切に愛してくれる男性であるかをしっかりと見極めるのです。」


「聖者よ、ものさしさえあれば、真実の愛の人は一目で見極められるのでしょうか」

「いいえ、お姫様。ご自身で時間をかけて一つ一つ確かめていかねばならないのです。

傷つくこともおありでしょう。」


お姫様はすっかり怯えて、表情が固まってしまいました。

「私から一つ知恵をお授けいたしましょう。

どんな素晴らしい王子様が現れてお姫様に求愛をなさろうとも、

それに対して決断をなさるのはお姫様のほうでございます。

つまり、求愛の申請書を出すのは王子様、

そして許可書を出すのはお姫様でございます。

その逆はございません。」

「聖者よ、許可書の発行に迷ったときは、どうすれば宜しいのでしょう」

「お姫様、そのときは、

確かにお預かりしておきますと、お答えなさるのが宜しいでしょう。

待たされて諦めるようでは本物ではございませn。」


お姫様は、聖者の知恵を心に刻み、

真実の愛を手に入れた素晴らしい人生を歩もうと希望を新たになさいました。


お二方のやり取りを聞いてたシンドバッドは、

どんな宝石よりもお姫様に相応しい贈り物だと感心しておりました。




まあ、まあ、すっかり夜も更けて、星が輝いてまいりました。

今宵のお話はこれにておしまい。

この続きは、また明日。