ゲオルグ・ショルティ
Georg Solti(1912-1997)
 

全知全能の大指揮者

 

 

ハンガリー出身。20世紀を代表する指揮者であり、私はクレンペラーやベームと並ぶ20世紀で最も偉大な「五大巨匠」の一人としている。

 

ショルティを一言でいうなら歴史上もっとも万能」な指揮者ではないだろうか。録音数の多さだけでなく、私がもし誰かに「どんなCDを聴けばいいの?」と聴かれたら、「とりあえずショルティを聴けておけば間違いない」と答える。

 

ただ何でも弾けるだけでなく、何を弾かせても最高レベルに仕上げてしまう圧倒的な能力とセンスを持つ(ピアニストであればルービンシュタインのよう)。子供の頃から指揮者を目指していたにも関わらず、「ジュネーヴ国際コンクール」をピアノで優勝するくらいなのだから、そのお話だけでも恐ろしいほどの基礎能力の持ち主だということが分かってしまう。

 

偉大な指揮者ほど個性は強くなるものだが、ショルティはその個性を上回る「トータル能力が超一級」という個性を持ち、他の最強クラスの指揮者と比べても「好き嫌い」があまり分かれないという傾向がある。クレンペラーはもちろん笑、バーンスタインも好まない人はけっこういるし、ベームも稀に好まない人もいる。

 

ショルティは楽器をよく鳴らすという特徴があるが、これはオーケストラに「音を出して」と指示して出来るかというとそう単純な話ではもちろんない。(彼らへの)絶対的な説得力と(彼らからの)強い信頼があり、かつ音量バランスの絶妙なセンスなど、あらゆる能力を持ってはじめて可能なものであり、それによって生まれたサウンドはとても解放的で生命力に満ちている。

 

ショルティは基本しっかりとしたインテンポぎみで進み、(ヴァントのような)あからさまなインテンポというよりは、ノリのあるビート感を重視した、ある程度の緩さを持った自然な範囲で進んでいくスタイルで、情熱的かつ、重厚なパワーと躍動感が大きな特徴。また展開はストレートに分かりやすく劇的に作る傾向があり、音楽の構成やセンスもこれ以上なく最高レベル。

 

ショルティの音楽は、たとえ激しさや哀しい表現があっても、本質的な優しさ、温かさ、そして楽しさを感じる、全身を預けて聴くことができる絶対的な安心感がある。音楽には人間性が現れるもの。

 
マーラー「交響曲 第5番」。
 
冒頭だけでも「こりゃ只者ではないぞ......」と分かってしまうという1969年からシカゴ交響楽団を率いてすぐに取り掛かった1970年の録音ショルティは邪悪的要素が少ないタイプだが、なのに「ヤバさ」満載の超絶演奏炎

 

 

 
おすすめの録音。マーラーはショルティの特徴であるドラマチックな展開と濃厚なパワーが生きるため特におすすめ。何を聴いても素晴らしいのだが、ワーグナーやブルックナーといった規模の大きな音楽はやはり良さが生きやすい。残された録音も多く、ショルティの凄さは今後さらに多くの人が理解して、さらに評価が高まっていくのではないかと思っています。
 
それではランキングキラキラ
 
 

★★★★★(5/5)

 

リズム・ビート・グルーブ感 ★★★★★

構成・展開力 ★★★★★+

ダイナミクス・インパクト ★★★★★

美しさ・歌・センス ★★★★

緻密・繊細さ ★★★★

サウンド・音色・色彩感 ★★★★

カリスマ性 ★★★★+

魔力 ★★★★

万能さ ★★★★★+

人気・ユーモア ★★★★+

 
 
チャイコフスキー「交響曲 第4番」
 
ベートーヴェン「交響曲 第5番 “運命”」。
ショルティはベートーヴェンやブラームスでは、引き締まったカッコいい系の演奏をする。