ジョルジュ・シフラ
Georges Cziffra(1921-1994)

 

ロマの血が流れる、無敵の超絶技巧

 

 

今や聞きなれた「超絶技巧」という言葉も、元はこの人のためにあったのではないだろうか。ロマの家系に生まれたハンガリーのピアニスト、ジョルジュ・シフラ。「超絶技巧??」この人の演奏を聴いたら他は霞んでしまう。

 

シフラは幼少より才能を見込まれ演奏活動を始め、リスト音楽院に入学。しかし第二次世界大戦でハンガリー軍へ徴兵され、戦地で兵士として戦う。1946年にブタペストに帰還後、ソ連軍支配下の祖国から脱出を試みるも失敗。1950年から1953年まで投獄され、収監された息子が獄中で死にかける等、壮絶な人生を送った。20代から30代前半の長い期間、音楽やピアノとは離れた生活をしたということになるのだろうか、それでいてあのようにピアノが弾けるという異常さ。さらに1981年には自宅火災により息子を亡くしている。

 

上の写真にも見えていますが、ピアノを弾くときは決まって右手に革の腕輪はめて、囚人時代の屈辱を忘れないようにしたと伝えられている。

 

技巧的な作品が多いフランツ・リストというと、リヒテル、ホロヴィッツ、アルゲリッチなど最強クラスのヤバい演奏が残っていますが、あくまで一部分の曲に限られるし、やはりトータルでいうとリストを聴く第一選択は未だシフラということになるのでないでしょうか。

 

ショパンもかなり録音が残っていて、それ以外の作曲家の録音もある程度ありますが、クセがあったりと全体的に良し悪しは分かれてしまう印象。しかし、ショパンでは意外にもノクターンなどのメロディックな曲が良かったりします。

 

どうしても超絶技巧に目がいきがちなため、当時は音楽の深みが無いとか、その類のことを評論家系の人に言われていた記録もあるそうですが、今やそんなこと言う人は皆無。シフラの演奏を聴けば何も知らない子供であってもその凄さはすぐ分かります。

 

 

 

もはや超人です。。今の時代でいう(よくある)超絶技巧のピアニストが弾いても、これほどまでに「凄い!」とはならないし、カッコよくはならない。やはりシフラのような圧倒的なセンス、そして音楽的基礎能力があってこそ。音楽とは結局のところ、指ではなく、何よりもリズムや音感、センスが全てのベースになるのですから。

 

「ラ・カンパネラ」

 

 

 

少し踏み込みますが、超絶技巧どうこう、指が動くどうこうはさほど重要ではなく、まずシフラのようにきちんとインテンポで弾けるかどうか、ビートと連動しノリを生み出しているか、ここが大事です。世の中の超絶技巧の95%は怪しくなります。現代のピアニストは自己都合の表現や安易な演出がごく当たり前ですから。まあカッコよくはないですね。。

 

シフラは『巡礼の年』の「ジュネーヴの鐘」や「エステ荘の噴水」のように、技巧的ではない美しい曲も素晴らしいです。

 

ではランキングキラキラ

 

 

★★★★(4/5)

 

リズム・ビート・グルーブ感 ★★★★★

構成・展開力 ★★★

ダイナミクス・インパクト ★★★★★

美しさ・歌・センス ★★★★

緻密・繊細さ ★★★

ヴィルトゥオーゾ的要素・技巧 ★★★★★+

魔力・音色 ★★★

カリスマ性 ★★★

万能さ ★★★

人気・ユーモア ★★★★

 

 

リスト「ハンガリアン・ラプソディー 第6番」