名曲聴き比べランキング第二弾キラキラ

 

この世で最も美しいオーケストラ曲「マーラーのアダージェット」

(交響曲 第5番 第4楽章)

 

 

オーケストラで一番美しいといえばこの曲でしょう映画「ベニスに死す」(1971年)で一躍有名になった名曲。私も20年前に深夜映画で見ましたグッ昔の映画は音楽が重要な役割を担っているものが多いですが、この映画はストーリー、映像、音楽が見事に融合した名作です。

 

オーケストラといっても、この曲は弦楽器のみ、ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバス,ハープという編成。よって個々の団員(人数の少ない管楽器群)の力量に左右されにくく、指揮者の音楽性と技量がモロに反映されてしまう曲ともいえるでしょう。

 

マーラーはそもそもベートーヴェンやブラームスと違って録音数が多くないのと、第5番は名曲(人気)の割に意外と録音が少なくて、今回は23の音源(のべ21人の指揮者、アバドとショルティは2つの音源)で聴き比べます。マーラーはスペシャリストでないと踏み入れない傾向があり、全体的に素晴らしい演奏が多く、選んでいく作業が正直難しかったえーん

 

この世で最も美しい名曲を、どの指揮者が最も美しく奏でるのでしょうか?

 

1回目の試聴で選外だったのはたった4つのみ。

 


▲クラウディオ・アバド

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 

▲ズービン・メータ

ニューヨーク・フィルハーモニック

 

▲エリアフ・インバル

フランクフルト放送交響楽団

 

▲ベルナルト・ハイティンク

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団



意外にもハイティンク、アバド&ベルリンフィルが入ってしまいました。2回目の試聴で選外にしたのは以下の7つ。


 

●サイモン・ラトル

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 

●チャールズ・マッケラス

ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

 

●ヘルマン・シェルヘン

ウィーン国立歌劇場管弦楽団

 

●ジョン・バルビローリ

ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

 

●ラファエル・クーベリック

バイエルン放送交響楽団

 

●佐渡裕

トーンキュンストラー管弦楽団

 

●ダニエル・バレンボイム

シカゴ交響楽団

 


素晴らしい演奏ではあるものの、独創性と感動量を基準に選外としました。後で気付きますが、シカゴ交響楽団は優秀だなと。

 

残ったのは12人ですが、ショルティは2つとも残ったため上位の方を優先とし、いよいよ



11位からランキング発表!!

 

 

第11位 ブルーノ・ワルター

ニューヨーク・フィルハーモニック

 

 

この録音状態だとブラインドで聴いたとしても指揮者が誰かはすぐ分かってしまいますが。。古の三大巨匠の一人、ワルター。テンポは他と比べるとかなり速め。この手の曲は音質の問題で判定が難しいところがあり、ひとまず11位としました。

 

 

第10位 アダム・フィッシャー

デュッセルドルフ交響楽団

 

 

ハンガリーの指揮者。悲しみレベルは行き過ぎず、自然で素朴な美しさが印象的。細部まで心を配り、かなり丁寧に作られています。

 

 

第9位 リッカルド・シャイー

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

 

 

現代を代表する最高クラスの指揮者。シャイーはトータル能力がきわめて高く、無駄な音や表現は削ぎ落し、必要なものをしっかりと構築するタイプの指揮者。全体的に確実性が高く、この曲も同じく。テンポは遅すぎず、冒頭は一人で静かにつぶやくように演奏していくのが印象的。どちらかというとモノクロのイメージ。

 

 

第8位 ヘルベルト・フォン・カラヤン

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 

 

波がなるべく立たないよう、静かに描くように進んでいく印象派のような演奏。こういう系統でいくとカラヤンは強いです。さすがのサウンド作りと、色彩感がある演奏で、とても美しい世界が描かれています。

 

 

第7位 ゲオルク・ショルティ

シカゴ交響楽団
(チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団)

 

 

歴史上最高クラスの指揮者の一人であるショルティ。同クラスのバーンスタインやクレンペラーと違い、好みが大きく分かれないのもひとつの特徴。となるとクセや特異な面が少ないタイプということになるわけですが、にも関わらず物足りなさは一切無いという凄さ。さらに何を指揮しても(しかも何でも弾く)確実にトップにいるという凄さ。いざ音楽が始まると、雰囲気や風格だけで只者ではないなと感じることが出来ます。縦横の動きはやや多め、構築性の高さと展開の上手さはさすが。

 

 

第6位 小澤征爾

ボストン交響楽団

 

 

今年2月に亡くなった小澤征爾。日本人として本当の意味で世界のクラシック音楽界のトップで活躍した数少ない音楽家の一人。冒頭はきわめて静かに、限りなく抑えられ、ゆっくりと始まる。色彩感もあえて抑えられているかのように、優しさを湛えて、永遠に続くのではと錯覚するほど美しい旋律が繋げられていく。中間部の苦しみの表情など、特別な感情があるように思えてならない。

 

 

第5位 フランソワ=グザヴィエ・ロト

ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

 

 

こういうのがあるからブラインドでの聴き比べは面白い! 唯一名前も全く知らなかった指揮者が何と5位にランクイン!! 1971年生まれのフランスの指揮者。新しい感覚がピリピリと入った、きわめて高い能力を持った指揮者だということが伝わります。間違いなくこれからの注目の指揮者なのではないでしょうか(私が知らないだけかもしれないけど笑)。旋律の運びや構成のセンスも秀逸で、透明感のあるモノクロの世界はきわめて美しい。

 

 

第4位 チョン・ミョンフン

ソウル・フィルハーモニー管弦楽団

 

 

ここからの4位以上はさらに上の領域に入る。(ブラインドで)最初に聴いた時「これはあまり聴いたことない独特な音色だな」という第一印象。指揮者が全く予想もできず、どの指揮者なのかふたを開けてるのを一番楽しみにしていたのがこの演奏。チョン・ミュンフンは今まであまり聴いていなかったし、ソウル・フィルも初めて聴きました。旋律の運びがとても上手く、感情がたっぷりと込められたサウンドは独特の魅力を放ち、その美しさは涙を誘う。

 

 

第3位 クラウディオ・アバド

シカゴ交響楽団
 

 

アバドはベルリン・フィルとのは微妙だったものの、一転、シカゴ交響楽団との演奏は第3位という驚き。アバドはオーケストラによって変わるタイプなのか? このあたりの事情はさておき、どちらにしてもアバドが名指揮者であることに変わりありません。色彩感のあるサウンド、旋律の運び方の上手さ、哀しみの中にもアバドらしい優しさとあたたかみのある音楽は印象的です。中間部を含めた全体の展開も素晴らしい。

 

 

第2位 クラウス・テンシュテット

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

 

 

マーラーのスペシャリストとしてまず第一に名前が挙がる大指揮者、そして今回聴いた全てのアダージェットで最も「静」な演奏だったのがテンシュテット。モノクロでもカラーでもない、限りなく透明に近い青き世界。冒頭はまるで水面の上を伝って歩いているかのような限りなく静かな演奏。一つずつ紡がれた美しい旋律は、儚ささを伴った哀しみの中に、あきらめのような思い、そして優しさがある。上手さだけでなく、それをゆうに超越した美しさ。これ以上に涙を誘う音楽があるだろうか? 

 

 

第1位 レナード・バーンスタイン

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 

 

歴史上の最高クラスの指揮者の中でも「美しく旋律を奏でる」ということにおいてバーンスタインの右に出るものはいないのではないだろうか。今なお最も人気の高い指揮者でありながら、あまり好まない層も一定数いるのはたしかですが、音楽的能力でいえば問答無用で別格。ズバ抜けた音楽センスと泉から湧き出るような圧倒的な音楽量はまさにトップ・オブ・ザ・トップ。この手の曲はバーンスタインの独壇場で、旋律の運びの上手さはもちろん、音量バランスや音色も多種多彩。まるで短編映画を見ているかのように展開していきます。これ以上の演奏はもう永遠に現れることはないだろうと思ってしまうグー ちなみに、私の小学生の息子(指揮者の名前は一人も知らない)も始まって20秒で「この演奏が一番凄い」と言っていたのも興味深い。

 

 

今回は名演が多かったので判別が本当に難しかったアセアセ その分、聴く回数は多かったので結果はより正確だったなと思っていますウインク