Glenn Herbert Gould(1932-1982)
ピアノでバッハを弾く先駆者
カナダ生まれのピアニスト。バッハとピアノと聴くと、真っ先に思い浮かぶのがグレン・グールド。
日本で有名な演奏家は、コンクールでの優勝、来日公演での宣伝によるもの、テレビでのドキュメンタリー、有名な人や権威のある人が媒体で紹介したなどのきっかけであることがほとんどで、それは時にブームという大きな流れを生むことがあります。どの分野でもそうですが、日本人は自分の考えや意見よりも、周りの意見に大きく左右されたり、雰囲気を気にし過ぎる傾向があります。あくまで日本全体の話ではありますが、音楽や芸術というものを前提とすると、この気質は決して向いているとは思えません。
グールドは世界でも日本国内で特に人気の高いピアニストであり、私も持っているソニーレーベルでの白いジャケットのCDはきっと多くの人が持っていると思います(これは今でもサブスクでは聴けない)。それほどまでグールドは日本国内で細く長くブームを巻き起こしました。
日本で人気のピアニストは(日本人、外国人問わず)正直に言ってしまうとミーハー系なファンが多いですが、グールドは全くそうではなく、いわゆるゴリゴリのクラシック通に高く評価され、さらにはグールドをきっかけに熱烈なファンとなりクラシック好きになった人も数知れず。
グールドといえばバッハですが、若い時代はロマン派なども含めて幅広く色々と弾き、優れたピアニストとして認知されていたそうです。1955年に発表した「ゴルドベルグ変奏曲」によってアメリカを中心に有名になりますが、1965年頃以降はコンサートをせずレコーディングのみでの活動となったという、きわめて異質なピアニストです。
強烈な個性を放ち、鬼才や異才のように分類されがちなグールドですが、好みの要素はさておき、純粋にピアニストとしての能力はどうなのでしょうか?
あらためて聴いてみると、タッチや音色、解釈や雰囲気、演奏法など、多くの部分で他のピアニストとは著しく違う点があり、それこそ最初の一音で「グールドだな」と判別できる独自のサウンドを持っています。しかし、例えばリズム感、構成、和声感、旋律やフレーズのつなぎ等、音楽の重要な部分において、音楽的な能力はきわめて高く、他のあらゆるピアニストのバッハ演奏と比べても、勝る部分はあっても、劣る部分は全く無いように感じます。グールドの表現や個性によって、あまり好きではないというのは聴く人の自由ですが、ピアニストとして、音楽家としての能力の高さは知っておくべき要素です。
グールドのもう一つの大きな特徴、音楽通に好まれる理由はグールド特有のグルーブ感 これによって音楽に官能的な要素を生み出しているというわけです。そしてあの天才的な閃き。「そんなカッコいい弾き方あったんだ!!」と思ってしまう回数は他のピアニストの比ではありません。
それでは、ランキングです
★★★★(4/5)
リズム・ビート・グルーブ感 ★★★★★
構成・展開力 ★★★★
ダイナミクス・インパクト ★★
美しさ・歌・センス ★★★★
緻密・繊細さ ★★★★
ヴィルトゥオーゾ的要素・技巧 ★★★
魔力・音色 ★★★★★
カリスマ性 ★★★
万能さ ★★
人気・ユーモア ★★★★★
死ぬ前の年、1981年のゴルドベルグ変奏曲。この時代になるとバッハをピアノで弾いたものは世の中にたくさんある状況。そしてそれを余裕で裏切る、1955年をさらに上回る個性を放っている
これは貴重!! 若き時代のグールドとバーンスタインとの協演