アルトゥール・ルービンシュタイン

Arthur Rubinstein(1887~1982年)

 

時代を超えた音楽界のキング

 

 

20世紀の作曲家や演奏家達に「歴史上最も偉大なピアニストは誰か?」と聞いたら、やはりルービンシュタインと答える人が一番多いのではないだろうか。実際、時代が重なった様々な音楽家達とのエピソードも数多く残されていて、彼らの憧れの存在であったルービンシュタインは、尊敬する王であり、誰よりもカッコいいスーパースターだったことが伺えます。

 

音楽は本来(特殊な例を除き)複数の人、複数の楽器で奏でることを前提としているわけですが、ピアノという楽器だけは唯一、

たった一人で弾くために完成された楽器です。音楽を、ピアノという楽器に一人座り、一人で弾く。このロマンおねがい

 

私は思います。そのピアノを誰よりもカッコよく弾ける人こそ、この世で最もカッコいい人なのではないかとグッ

 

私の感触だと、日本では(プロの音楽家は除き)ルービンシュタインの人気は意外にもそれほど高くないような気がします。たしかに、今となっては録音したものしか聴けないため、そうなるとホロヴィッツやリヒテルのような圧倒的なインパクトや独特のサウンドを奏でるピアニストと比べると、たしかに本来の良さは分かりづらいかもしれません。録音も古いものが多いですし。

 

ルービンシュタインがどんなピアニストだったのか。それは言い伝えにも残されていますし、演奏を聴いても感じることができますが、楽譜を見れば、音楽を弾けば、何でもすぐに弾けてしまうというズバ抜けた音楽基礎能力を持っていたと言われています。ただ、この能力はレベルの違いはあっても、現代にもそのようなピアニストはたくさんいますので、それはルービンシュタインの凄さの全体のごくごくわずかなものでしかありません。どんな作品であっても、楽譜を見ればすぐに何でも弾けてしまう、しかもそれで超一級に仕上げてしまうという異次元の音楽性を持っていました。

 

ポーランドの出身ということもあり、やはり「ショパン」が一番有名ではありますが、どんな作曲家、どんな録音を聴いても、ルービンシュタインで微妙な演奏や苦手な分野といったのは皆無です。ソロはもちろん室内楽であっても同じく。


演奏スタイルは正にキングそのもの。時に雑だなと感じることもありますが、絶対的な基礎能力を武器に、構成や展開はド真ん中を堂々と行き、分かりやすさと絶対的な説得力を持って進んでいきます。また天性のビート感によって生まれたグルーヴ(ノリ)はルービンシュタインの最も大きな特徴で、ここぞという時の絶妙なテンポ変化、音楽を動かす上手さはルービンシュタインでしか聴くことはできません。そこから生まれる旋律の歌い回しのセンスもやはり別格。歌い回しも無理に主張することも過剰に表現する事もありませんので(なんといっても王ですから)、音楽はきわめて自然で、懐の深いカッコよさが生まれます。

 

寛大さ、柔らかさ、優しさ、温かさ、誰からも好かれる人間性からか、ピアノの椅子を降りてもスーパースターであったルービンシュタインは、世界中で若い音楽家を見出したり、面倒を見たりという逸話も数多く残っています(プーランク、ヒナステラ、ピアソラ、小澤征爾など)。

 

録音はかなり多く残されていたはずなのですが、CDやレコードだと既に廃盤となっているものが多いようです。とはいえ、それなりに残ってはいますので心配には及ばず。録音の音質を考えると1950年代(60才台)を中心に聴くのがおすすめです。ちなみに、私の場合、音楽を色々聴きすぎて迷ったら、一度ルービンシュタインに戻るようにしています。ここには「そうだった!」と、原点に戻させてくれる何かがあります。

 

それではランキングキラキラ

 

 

★★★★★(5/5)

 

リズム・ビート・グルーブ感 ★★★★★+

構成・展開力 ★★★★★+

ダイナミクス・インパクト ★★★★

美しさ・歌・センス ★★★★★+

緻密・繊細さ ★★★★

ヴィルトゥオーゾ的要素・技巧 ★★★★

魔力・音色 ★★★★★

カリスマ性 ★★★★★+

万能さ ★★★★★+

人気・ユーモア ★★★★★

 

 

ショパン「ピアノ協奏曲 第2番」。第1楽章のラスト前のヤバさ、、、あまりの凄さに思わず拍手が笑爆  笑

 

 

 

ピアノ協奏曲はスーパースターが強いという傾向があります。なぜなら、オーケストラの団員も指揮者も、みなルービンシュタインと一緒に演奏ができるのを楽しみにしているので(つまりは多くの場合はそうはならないということ)、全員が最高の音楽を作ることに本気の全力でやってくれるというわけです。昔であればルービンシュタインがNo.1、次の時代のスーパースターはアルゲリッチですグッ

 

 

ブラームス「ピアノ協奏曲 第1番」。この曲は何といっても冒頭からピアノが入ってくるまでの素晴らしさ! さすがブラームス。ピアノ協奏曲でここまでのオーケストラ部分を付けてしまうとは。。それを受けてのルービンシュタインの入り、、異次元のレベルです爆  笑

 

 

 

この映像も素晴らしいですがメータの指揮する超名盤もあり。ルービンシュタインのピアノ協奏曲はいい感じで映像でいくつも残っているは本当に感謝です。

 

 

サン=サーンス「ピアノ協奏曲 第2番」。冒頭のふてぶてしさは何なんでしょう笑 ここまで聴くと、ルービンシュタインを超えるピアニストはもう永遠に出ることはないのだろうと確信します。

 

 

 

シューマンのアラベスク(音のみ)