セルジュ・チェリビダッケ

Sergiu Celibidache1912-1996

 

徹底して音楽を細部まで聴かせる、世紀の大指揮者

 

 

ルーマニア生まれ、ドイツで活躍した指揮者。第二次世界大戦後、フルトヴェングラー本人と周囲から後継者と目された1人で、直接教えも受けた。一時はベルリンフィルの暫定的な首席指揮者に就任するも、最終的にはフルトヴェングラーの死後はカラヤンが後継となり、チェリビダッケは南ドイツ放送交響楽団やミュンヘンフィルなどドイツ国内を中心に欧州で活躍した。ベルリンフィルは最晩年の1992年まで振ることは無かった。

 

チェリビダッケの演奏は、毎度演奏が異なるというタイプではなく、年代によって少しずつ変わっていったタイプで、活動初期の1940年中頃から1960年頃までの若い時代、晩年の1980年代以降ではかなりの違いがある。若い時代は、時代やフルトヴェングラーなどの影響も見られ、何を聴いても上手く、器用で万能、程よい情熱と、繊細かつ丁寧なきわめて優れた指揮者という印象を受ける。後年はミュンヘンフィルとの録音に代表されるように、テンポ設定が異様に遅い等、独自の世界を開いている。

 

例えばブルックナー「交響曲 8番」は1976年録音は83分に対し、1993年録音は104分と演奏時間が全く違う。音楽家は晩年は演奏が遅くなる傾向があるが、チェリビダッケはその度合いがかなり強い。晩年の個性的な解釈や遅さゆえのモッサリとしたサウンドやビートは受け入れられる人が限られるだろうし、(ブルックナーは遅すぎて聴けないが、チャイコフスキーはOKといった風に)ほぼ好み次第ということになってしまうかもしれない。

 

年代問わず一貫しているのは音楽をあらゆる細部まで徹底してよく聴かせるというところ。サウンドや和声感からは哲学的、精神的という言葉が思い浮かび、丁寧な音楽作りが特徴。

 

私のおすすめだが、ワーグナーはテンポの遅さが違和感ないタイプなのでいいのではないだろうか。モーツァルトやハイドンはテンポがノーマルの範囲なのでかなりいい感じだ。チャイコフスキーの「交響曲 第5番と第6番」は、他には無いチェリビダッケの独特の深みと世界観がありおすすめしたいグッ

 

チェリビダッケは日本ではかなり人気のある指揮者だが、それは本来「モノ作り大国」であった日本人特有の性質や哲学とうまく合うからではないだろうか。来日もかなり多く、晩年は仏教に改宗したことでも知られる。

 

ランキングは、年代によって変わっていったタイプなので難しいが、あくまで基本能力を想像したものとしている。

 

 

★★★★4/5

 

リズム・ビート・グルーブ感 ★★★

構成・展開力 ★★★★

ダイナミクス・インパクト ★★★★

美しさ・歌・センス ★★★

緻密・繊細さ ★★★★★

サウンド・音色・色彩感 ★★★★

カリスマ性 ★★★★

魔力 ★★★★

万能さ ★★★

人気・ユーモア ★★★★

 

 

超名演炎 チャイコフスキー「交響曲 第5番」。ティンパニ最高グッ