グレン・グールド

Glenn Herbert Gould1932-1982カナダ

 

ピアノでバッハを弾く先駆者

 

 

カナダ生まれのピアニストであり、バッハとピアノと聞くと真っ先に思い浮かぶのがグレン・グールド。

 

グールドは日本でも特に人気の高いピアニストですが、ここを入口にクラシックに目覚めたという人はきっと多いと思います。

 

グールドといえばJ.S.バッハのイメージですが、若い時代は(特に)ロマン派なども含めて幅広く色々と弾く、きわめて優れたピアニストでした。1955年に録音した「J.S.バッハ:ゴルドベルク変奏曲」が大きな話題を呼び、アメリカを中心に一躍有名になり、ここから徐々にバッハ=グールドのイメージになっていきます。しかし、1965年以降、彼はコンサート活動を完全にやめ、レコーディングに専念するという選択をします。これは当然前例のない決断であり、彼の個性と音楽哲学を象徴するスタイルの一つです。

 

強烈な個性を放ち、「鬼才」や「異才」と分類されがちなグールドですが、そういったスタイル的要素はさておき、純粋にピアニストとしての能力はどうなのでしょうか。

 

グールドの演奏をあらためて聴いてみると、タッチや音色、解釈など、多くの部分で他のピアニストとは著しく違う、一音聴いただけで「これはグールドだ」と分かるほどの独自のサウンドを持っています。しかし、グールドは単なる個性的解釈のピアニストではありません。例えば、リズム感,構成力,和声感,旋律やフレーズの歌い方やつなげかた等、音楽家にとって本来必須な基礎能力においても、最高水準を示していることがわかります。個性的な解釈への好き嫌いはあるとしても、その個性の根底にある、音楽家としてのきわめて高い能力は認識しておくべき事ではないでしょうか。

 

グールドのもうひとつの大きな特徴であり、人を惹きつける最大の秘密は、特有のグルーブ感です。この感覚は音楽に「官能的」な要素を与えており、それに加えて、天才的な閃き。「こんなカッコいい弾き方あったんだ!!」と思ってしまう瞬間は他のピアニストの比ではありません。

 

 

【グールドの特徴】

上矢印

独自のタッチや音色

個性的な解釈

基本能力の平均値の高さ

独特なグルーヴ感

無限のアイディアと天才的閃き

 

 

それでは、ランキングですキラキラ

 

 

★★★★+(4/5)

 

リズム・ビート・グルーブ感 ★★★★★

構成・展開力 ★★★★+

ダイナミクス・インパクト ★★

美しさ・歌・センス ★★★★+

緻密・繊細さ ★★★★+

ヴィルトゥオーゾ的要素・技巧 ★★★

魔力・音色 ★★★★★

カリスマ性 ★★★★+

万能さ ★★

人気・ユーモア ★★★★★

 

 

亡くなる前年、1981年のゴルドベルグ変奏曲。この時代になるとバッハをピアノで弾いたものは世の中にあふれている状況。それをさらに上回るというか、ゆうに裏切る、1955年をさらに上回る個性を放つ伝説的名演(名盤)

 

 

 

貴重!! 若き時代のグールドとバーンスタインとの協演おねがい 

 

 

 

エフゲニー・ムラヴィンスキー

Evgeny Aleksandrovich Mravinsky(1903-1988)

 

裏世界のラスボス

 

 

旧ソ連(ロシア)最大の指揮者であり、クラシック音楽界における「裏世界のラスボス」的存在爆弾

 

20世紀の音楽において、ヨーロッパとアメリカが「表」の世界だとすれば、ソビエト文化は「裏」の世界。ムラヴィンスキーの音楽は、ソビエトの象徴であり、どこか秘密めいたダークさと孤高のエネルギーに満ちています。

 

クラシック音楽における旧ソ連の巨匠と言えば、ピアニストのリヒテルとギレリス、キエフ生まれでソ連で学んだ後に欧米を主に活動したホロヴィッツ、その他にもヴァイオリニストのオイストラフやチェリストのロストロポーヴィチ、作曲家ならハチャトゥリアンやプロコフィエフ等、最強クラスがずらりと並びますガーン

 

しかし、「ソビエトらしさ」を体現しているのは、やはり20世紀を代表する旧ソ連時代の大作曲家であるショスタコーヴィチ、そしてムラヴィンスキーのコンビをおいて他にありません。ショスタコーヴィチの交響曲は数多くの指揮者によって演奏されてはいるものの、ムラヴィンスキー(とレニングラードフィル)との組み合わせによる演奏は「本家本流」というべき特別な空気が漂っています。特有の田舎くささ、垢抜けなさ、時代と土地が生んだとも言うべき、技術的な優劣や個性とは全くの別次元のまさに「歴史そのもの」。それはある意味、絵画や彫刻や建築のような(音楽らしくない)「芸術」なのかもしれません。

 

1903年生まれのムラヴィンスキーと、1906年生まれのショスタコーヴィチは、同じ時代に生きた同世代であり、激動の時代に共に生きた二人。ここにはよくある作曲家と指揮者という関係よりも、主義や思想を共にした同胞のような価値観が感じられます。

 

 


 

一般的に、一流の指揮者は常任と客演で欧米を中心とした様々なオーケストラを率いて活動しますが、ムラヴィンスキーはほぼレニングラードフィルのみとの共演となり、このあたりも他の指揮者とは少し違う事情があることも事前に知っておくといいかもしれません。

 

ムラヴィンスキーの演奏の特徴としては、旧ソ連特有の匂いがある、硬質で,暗く,厳しく,規律があり繊細なサウンドがまず第一に挙げられます。それは「ムラヴィンスキーの音= 旧ソ連の音」(その音はムラヴィンスキーが作ったというのが重要)ともいえるほどの、聴く人に強い印象を与えます。

 

そして、ムラヴィンスキーの最大の魅力は、やはり爆発的なエネルギーが放射されるシーン。エネルギーの解放量を絶妙にコントロールし音楽を構成していく。静寂に始まり、ためて,ためて,ためて,!?,ドーン!!!炎 エネルギーが最大に解放された時は圧巻。。。

 

ショスタコーヴィチ「交響曲 第5番」(1973年の東京ライブ録音)。ラストは凄さは何だ...ガーン

 

 

 

ショスタコーヴィッチは15の交響曲を中心に、弦楽四重奏など数多くの作品を残した20世紀最大の作曲家ですが、交響曲となると、やはりムラヴィンスキーは別格というか別次元というべきか、私はムラヴィンスキーと他の指揮者を全く別モノとして区別しています。

 

例えば、トスカニーニの「第7番」、カラヤンの「第10番」といった個別の名演もあるけれど、ムラヴィンスキー以外でトータルで十分に聴けるとなると、もはや五大指揮者,ショルティくらいしか思い浮かびません。それほどまでに、ムラヴィンスキーとショスタコーヴィチのコンビは唯一無二のものなのです。

 

しかし、ムラヴィンスキーの音楽はやはり特殊な部類に入るのもまた事実。まぎれもなく歴史上最高の指揮者の一人であることは疑いようがないものの、ベートーヴェンやブラームスなどのドイツものの演奏に関しては、他の大指揮者と比較するとトップ10には入れるのは難しく、(ロシアの作曲家である)チャイコフスキーであったとしてもトップ5に入れるかどうか微妙なところかもしれません。

 

その理由として、ムラヴィンスキーの音楽には西欧的な洗練された垢抜けた雰囲気が無いこと、そしてリズムやビートの部分においては最強クラスと比べるとやや劣っている(重要視されていない)という点が要因として挙げられます。

 

 

【ムラヴィンスキーの特徴】

上矢印

特有の旧ソ連的なダークサウンド

厳しさ

繊細さ、規律

爆発的エネルギーと放射

静寂とのコントラスト

ショスタコーヴィチに関しては歴史上最強

右矢印

ショスタコーヴィチ以外の演奏についてはトップ10ではない

 

 

特殊性の高い指揮者のため評価は難しいところではありますが、ランキングですキラキラ

 

★★★★★(5/5)

 

リズム・ビート・グルーブ感 ★★★

構成・展開力 ★★★★+

ダイナミズム・インパクト ★★★★★+

美しさ・歌・センス ★★★+

緻密・繊細さ ★★★★+

サウンド・音色・色彩感 ★★★★

カリスマ性 ★★★★★+

魔力 ★★★★★

万能さ  ★★★

人気・ユーモア ★★★★+

 

 

ショスタコーヴィチの交響曲をあまり聴いたことないという人は、まず第5番、次に第7番、そして第10番と聴くのが王道ですが、そこまで来たら、いよいよ聴くべきは「第8番」です。私は(あくまで個人的に)ショスタコーヴィチの最高傑作と呼んでいますが、この曲にはショスタコーヴィチの全てが詰まっている、いや、彼本人そのもののような作品ではないだろうか、と私は感じています。

 

この「イカれた」感じ、まさにラスボス曲。実はこの曲、ムラヴィンスキーに捧げられている(1943年に初演)。この録音映像は、ショスタコーヴィチの最高傑作を、ムラヴィンスキーの最高の名演として残したものであり、クラシック音楽史上最も観るべき映像記録だと私は位置付けています。ショスタコーヴィチは生前、ムラヴィンスキーの演奏する第8番を、1度も欠かさず全てコンサート会場へ聴きに来たそうです。

 

 
 

アルトゥール・ルービンシュタイン

Arthur Rubinstein(1887~1982年)

 

音楽界のキング

 

 

「歴史上最も偉大なピアニストは誰か?」

 

と世界中の人に聞いたら、多くの人がルービンシュタインの名を挙げるでしょう。聴衆だけでなく、音楽家たちにとっても憧れの的であり、音楽家としての理想そのもの。時代が重なった多くの音楽家たちとのエピソードからも分かるように、その存在は音楽家たちにとってもスーパースターでした。

 

ルービンシュタインのいったい何が凄いのか?

 

プロの音楽家だったら(ジャンルに関わらず)誰でも分かるはずですが、一言でいうなら「音楽の基礎能力の異常なほどの高さ」。「音楽は個人の好みでしょ!」という声も聞こえそうですが、もちろんそれには同意しますが、「能力」そのものは疑いようのないものとして存在します。

 

「音楽」とは本来、複数の人、複数の楽器で奏でるのがノーマルです。太古の昔からもそうですし、ジャズでもロックでもバンドが基本、クラシックも基本は室内楽であって、長い歴史によってオーケストラ等の編成に発展していきました。しかし、「ピアノ」という楽器だけは唯一、たった一人で音楽を弾くために、進化し、完成された楽器です。ピアノの前に一人で座り、全ての音楽を一人で生み出す。。この圧倒的なロマンこそ、ピアニストを特別な存在にしているのです。

 

そんなピアノを、誰よりも「カッコよく」弾けたのがルービンシュタイン。

 

ルービンシュタインは、楽譜を見ただけでほぼどんな曲でも即座に弾けました(これは残された録音でも分かります)。ただ、この能力はレベルの違いはあっても、現代においてもそのようなピアニストはたくさんいますので、ルービンシュタインの能力の高さのごく一部分の要素でしかありません。本当の真価は、すぐに何でも弾けてしまう事だけでなく、音楽を瞬時に超一級に仕上げてしまう異次元の音楽性を持っていたということです。

 

ポーランド出身のルービンシュタインにとって、ショパンは特別な存在でした。残された録音は、エチュードは全曲ではありませんが、それ以外の主要作品はほぼ揃っています。他どんな作曲家であっても最高レベルの演奏を聴くことができますが、あえて言うなら「別格」感が際立つのは、シューマン、ベートーヴェン、それとピアノ協奏曲全般でしょう。またソロに限らず、室内楽において最高峰の演奏を聴かせてくれます。

 

ルービンシュタインの音楽は、「王」の名にふさわしい堂々としたスタイルでありながらも、押し付けがましさや過剰な表現はありません。その特徴はエミール・ギレリスにも共通しますが、音楽は水が流れるかの如く自然であり、旋律を歌わせる別格ともいえるセンスの高さ、そして懐の深さと絶対的な安心感があります。

 

時にある種の「雑さ」を感じることもありますが、ド真ん中を堂々と進む、圧倒的な説得力と構成力。そして、天性のビート感から生まれたグルーヴ(ノリ)は、ルービンシュタインの最大の魅力。ここぞ!という時の絶妙なテンポ変化、音楽を動かす上手さは、唯一無二のもので、その領域に辿り着いている演奏家は、他にフルトヴェングラーくらいしか思い浮かびません。

 

また、人間性と音楽の両面で愛されたスーパースターだったルービンシュタイン。寛大さ、柔らかさ、温かさを持ち、多くの若い音楽家たちを支援したエピソードは数え切れず(例えば、プーランク、ヒナステラ、ピアソラ、小澤征爾など)。

 

 

【ルービンシュタインの特徴】

上矢印

基礎能力の高さ

王の風格

天性のリズム感とグルーヴ感

旋律を歌わせる上手さとセンス

構成力

絶対的な安心感

人間らしい温かさ、優しさ、深さ

 

 

録音はたくさん残されていますが、CDやレコードだと既に廃盤となっているものも多いようです。聴く場合は、録音の質と、年代のバランスを考えると、1950年代を中心に聴くのがおすすめ。

 

私の感触だと、日本ではルービンシュタインの人気は意外にもそれほど高くなく、その凄さをあまり知らない人が多いような気がしています。録音が古いものが多いですし、ホロヴィッツやリヒテルのような圧倒的なインパクトや独特のサウンドを奏でるタイプのピアニストと比べると、やや分かりづらい部分はたしかにあると思います。ですが、ルービンシュタインの凄さを理解することは、音楽そのものを理解することでもあるため、そこに気が付いた人は、音楽センスの高い人の証明でもあり、音楽を聴く(奏でる)レベルの高さが一定以上に達した証明であると思います。

 

ではランキングキラキラ

 

★★★★★(5/5)

 

リズム・ビート・グルーヴ感 ★★★★★+

構成・展開力 ★★★★★+

ダイナミズム・インパクト ★★★★

歌・センス・美しさ ★★★★★+

緻密・繊細さ ★★★★

ヴィルトゥオーゾ的要素・技巧 ★★★★

魔力・音色 ★★★★★

カリスマ性 ★★★★★+

万能さ ★★★★★+

人気・ユーモア ★★★★★

 

 

ショパン「ピアノ協奏曲 第2番」。第1楽章はあまりに凄すぎて思わず拍手が笑爆  笑

 

 

 

ソリストとオーケストラが一体となって作り上げる協奏曲。その中心にいるピアニストがスーパースターであれば、その音楽は特別なものになります。オーケストラの団員も、指揮者も、ルービンシュタインと一緒に音楽を作ることは、これ以上ない特別な瞬間。本能的にそこにいる全員が最大限の力を発揮し、文字通り全員が「本気」で挑む空間が生まれるのです。偉大な大ピアニストは何人かいても、その視点で見ると、ルービンシュタインは中でも突出した存在であり、彼と共演することは、オーケストラにとっても指揮者にとっても、名誉であり挑戦でした。

 

協奏曲を聴けば、どれだけのスーパースターなのかが分かる、、逆を言うと、多くの協奏曲でのソリストとの共演は、そうでない場合が多いということにもなりますが...

 

ルービンシュタインのピアノ協奏曲は、まさに異次元の領域。その演奏には王者の風格があり、聴衆だけでなく、共演者たちをも圧倒し、引きつける力がありました。ちなみに、次の世代でそれに似た「スーパースター性」を受け継いだピアニストといえばアルゲリッチです。
 

ブラームス「ピアノ協奏曲 第1番」。ショパンの2つの協奏曲と同じく、前奏に長いオーケストラが入っているタイプ。このオーケストラの前奏はあらゆるピアノ協奏曲における最高のもの。それを受けてのルービンシュタインのピアノの入りは...ガーン もはや全てを知り尽くしたかのような、まさに神懸かったような空気感が漂います(参考:スービン・メータとの録音はこれよりもさらに凄い)。

 

 

 

サン=サーンス「ピアノ協奏曲 第2番」。この曲はラフマニノフの第2番と同じく、冒頭がピアノソロで、オケが合流するタイプ。なんだ!この冒頭のラスボス感はガーン 映像からはただ弾いているかのようにも見えるが、一音一音の深みと重みがとてつもない。

 

 

 

ジョルジュ・シフラ
Georges Cziffra(1921-1994)

 

ロマの血が流れる、無敵の超絶技巧

 

 

今や聞きなれた「超絶技巧」という言葉も、元はこの人のためにあったのではないだろうか。ロマの家系に生まれた(母はドイツ人)20世紀中期を代表するピアニストであり、フランツ・リストのスペシャリスト、ジョルジュ・シフラ。この人の演奏を聴いてしまったら、他の「超絶技巧」はきっと霞んでしまうだろう。

 

偉大な音楽家を数多く輩出しているハンガリーに生まれ、幼少よりピアニストとしての才能を示し、5才で演奏活動を始める。9才の頃にリスト音楽院に入学、ドホナーニに師事。

 

しかし、第二次世界大戦でハンガリー軍へ徴兵され、戦地で兵士として戦うことになる。1946年にブタペストに帰還後、ソ連軍支配下の祖国から脱出を試みるも失敗。1950年から1953年まで投獄された(収監された息子が獄中で死にかける等、以後も壮絶な人生を送った)。捕虜生活中はピアノを弾くことで、ソ連の将校に気に入られて食料や衣類を手に入れていたという。そんな青年期を過ごしていたにも関わらず、きっとピアノをまともに弾けない時期もあっただろうと想像するが、それでいてあのようなピアノが弾けるという異常さガーン

 

シフラはピアノを弾く時、決まって右手に革の腕輪はめているが、これは囚人時代の屈辱を忘れないようにしていたと伝えられている。

 

シフラというと、どうしても圧倒的な超絶技巧に目がいきがちになるため、「音楽の深みが無い」といった類のことを当日の評論家達に言われていたそうですが、時代が進み、今となってはそのようなこと言う人は皆無です。シフラの超絶技巧には、不屈の精神で這い上がってきたハングリーさ、それでいて多くの人々を楽しませようとするエンターテイメント性を兼ね備え、聴く人の心が躍るような情熱的かつワクワクするリズム感、そしてロマンチシズムが合わさり、、シフラ独自の音楽が展開されていきます。

 

 

【シフラの特徴】

上矢印

圧倒的な超絶技巧

エンターテイメント性

リズミカル、楽しさ

不屈の精神

リストのスペシャリスト

メロディックな作品、美しい作品も得意

右矢印

リスト以外はやや好みが分かれる

 

 

リストの録音というと、リヒテル,ホロヴィッツ,アルゲリッチといった最強クラスのヤバい演奏が残っていますが、これらはあくまで一部分の曲に限られます。やはりトータルでいうなら、リストの第一選択は未だシフラということになるでしょう。

 

 

 

まさに超人的、これこそ本物の超絶技巧。今の時代の(超絶技巧と言われる)ピアニストが弾いても、ここまで「凄っ!」とか「カッコいい!」とはなりません。やはりシフラのような圧倒的なセンスと音楽的な基礎能力があってこそ、ということでしょう。

 

不思議なのは、ショパンについては技巧的な作品よりも、ノクターンなどのメロディックな曲が素晴らしいという意外さ。フランスものや、繊細な美しい曲も見事。

 

ラヴェル「水の戯れ」,ショパン「ノクターン」,リスト「ラ・カンパネラ」

 

 

 

リストの「ジュネーヴの鐘」や「エステ荘の噴水」のような、技巧的ではない美しい曲も素晴らしいです。

 

 

 

 

ではランキングキラキラ

 

 

★★★★+(4/5)

 

リズム・ビート・グルーブ感 ★★★★★

構成・展開力 ★★★★

ダイナミズム・インパクト ★★★★★

歌・センス・美しさ ★★★★

緻密・繊細さ ★★★

ヴィルトゥオーゾ的要素・技巧 ★★★★★+

魔力・音色 ★★★+

カリスマ性 ★★★+

万能さ ★★★

人気・ユーモア ★★★★

 

 

リスト「ハンガリアン・ラプソディー 第6番」

 

 

 

アルトゥーロ・トスカニーニ

Arturo Toscanini(1867-1957)イタリア

 

指揮者の中の王

 

 

クレンペラーが「指揮者の中の王」と評した、フルトヴェングラーとワルターと共に「歴史上の三大指揮者」に数えられるイタリア出身の大指揮者、トスカニーニ。録音が一定以上のクオリティで聴ける範囲での最も古い指揮者であり、現代の指揮者像を形成した始祖のような存在と言えるでしょう。

 

トスカニーニの音楽を聴いた人がまず最初に感じるのは、速く,鋭く,厳しく,...... そして恐ろしいほどの緊張感。私はそうでしたアセアセ

 

トスカニーニのスタイルを「楽譜に忠実」と言う人がいますが、これは適切な表現ではありません。トスカニーニを語る上で、この要素はさほど重要ではありませんし、そもそも、楽譜には音楽に必要な全てが音符や文字で書かれているわけではなく、楽譜をどう読み解き、どう表すかが重要です。

 

楽譜には当たり前過ぎることは書いていない。「楽譜に忠実」というのは「音楽に忠実」であるとは限らない。トスカニーニは音楽に忠実なのであり、楽譜に書いてあることを元に、純粋に真っすぐ丁寧に音楽を構築し、誰でも楽しめる音楽を生み出していく、そんな指揮者ではないでしょうか。

 

「即興か計画か?」よく比較されるのが、同時代を生きたフルトヴェングラーとのスタイルの違いです。フルトヴェングラーは「その瞬間に音楽を創造する」タイプであり、ざっくり言うなら毎回の演奏が異なります。一方、トスカニーニは事前に綿密に計画を立て、それを完璧に実行するタイプです(毎回の演奏の違いは少ない)。

 

トスカニーニは、最初の一音のみで「トスカニーニだ!」と分かるほどの特徴があります。まず感じるのは、鋭利なリズムと精密なテンポ感。リズム,ビート,テンポといった縦と時間の感覚は、最強クラスの指揮者と比較してもズバ抜けており、快楽を伴うほど正確。一糸乱れぬ超インテンポで進み、必要であればブロック(場面)ごとに絶妙にテンポを設置、横にも縦にも正確無比なコントロールで自在に音楽を動かしていく。構成力や展開の上手さも言うまでもなく、緻密に計算し、事前の計画どおりに確実に実行していきます。

 

ここまで文字で書くと、「計算ずく」の冷たい音楽ではないだろうか?と想像してしまいそうですが、トスカニーニの音楽は、ドスッ!とブッ刺してくるような強烈な音質に加え、情熱みなぎる、血の通った躍動感に溢れています。

 

また、細部までかなり気の行き届いているのもトスカニーニの特徴であり、厳しさや偉大さの影に隠れてはいますが、かなり神経質で、さまざまな心配りが出来る人だったのだろうと想像できます。

 

トスカニーニの音楽は、指揮者や演奏家、音楽に関わる人にとって今でも模範であり続けています。特に「リズムやテンポ」は音楽を演奏する上で最も重要な要素であり、それはトスカニーニを聴くことにより、誰よりも深く理解することが可能です。

 

ヴェルディの「運命の力」序曲。まさにトスカニーニの特徴を凝縮したもの。クライマックスのテンポの動き方は神業、爆発的なラストの作りはまさに「計算された爆発」爆弾 かっこよすぎる...

 

 

 

【トスカニーニの特徴】

上矢印

鋭利なリズムと正確無比のテンポ感

計算された緻密な構成感と展開力

厳しさ、怖さ

妥協は皆無

情熱的

 

 

おすすめの録音を挙げるなら、ヴェルディやレスピーギなどのイタリアものは、他の指揮者ではまず聴くことができない別次元の領域。オペラなど長いものは序曲だけでも十分楽しめる。ベートーヴェンやブラームスなどのドイツものに関しても当然、素晴らしいのは間違いないものの、フルトヴェングラー,クレンペラー,ヨッフムといったドイツ系大指揮者と比較すると、録音クオリティの問題もあり、選択肢の最上位にはならないかもしれない。

 

それではランキングキラキラ

 

★★★★★(5/5)

 

リズム・ビート・グルーブ感 ★★★★★+

構成・展開力 ★★★★★

ダイナミクス・インパクト ★★★★★+

美しさ・歌・センス ★★★

緻密・繊細さ ★★★★★+

サウンド・音色・色彩感 ★★★+

カリスマ性 ★★★★★

魔力 ★★★★★

万能さ ★★★+

人気・ユーモア ★★★★★

 

 

ロッシーニの「ウィリアムテル」序曲